Bookshelf ~今月の本

夏の思い出、旅とともに(1)

夏の思い出、旅とともに

 
 

 
 

2013/9/5

夏の旅の思い出


 9月に入り、夏の旅の思い出も、グラデーションのように薄れかかっている方も多いだろう。今回は、また旅をしたくなるかもしれない3冊を紹介する。


『開高健とオーパ!を歩く』


 昭和の文豪・開高健氏。サントリーのコピーライターから1957年に『パニック』を発表して作家へ転身、『裸の王様』、ベトナム戦争の従軍経験を基にした『輝ける闇』など数々の著作を世に出した。


33年前と今のブラジルは…
33年前と今のブラジルは…

 『オーパ!』も開高氏の代表作の1つ。1977年、ブラジル在住の日本人からの誘いで始まった、カメラマン、フリーライター、編集者らがアマゾン川を60日間旅する、男所帯の釣り物語である。世界最大の淡水魚・ピラルクー、河の殺し屋・ピラニア、釣られはしまいと、猛烈な闘志をむき出しにするドラド。目もくらむような魚たちとアマゾンの自然を、写真とともに開高氏が筆を走らせた。


 それから33年。アマゾンの旅をした開高氏本人を始め、カメラマン、フリーライターが次々と鬼籍に入る。生き残りとなった編集者の菊池治男氏が記したのが『開高健とオーパ!を歩く』だ。


 集英社を退職した菊池氏は、再びアマゾンを訪れる。33年後の現地を見ながら、当時の開高氏とのやり取りを手繰り寄せる。すでに大家であった開高氏への原稿依頼から、開高氏の現場での様子と原稿のギャップ、写真のキャプション(コメント)付けの様子など、寝食を共にした編集者ならではの思い出が柔らかく描かれている。


 様々なエピソードに、当時の旅仲間はもういない、という寂しさがにじみ出て、やるせなくなる。若い時に体を張った旅が、開高健という中高年の大師匠付きであったという極上の幸せ。それを存分にかみしめた著者の思いが伝わってきた。

>>海外一人旅の金字塔、『深夜特急』