Bookshelf ~今月の本

オリンピックと東京、新書で探訪(2)

隠れた名作ライトノベル特集

 
 

 
 

2013/8/1

東京オリンピックと首都高速


東京オリンピックに不可欠だった首都高速
東京オリンピックに不可欠だった首都高速

 かつて西武ライオンズに在籍していた外国人選手を、電車内で見かけたことがある。優先席にドカっと腰をかけて、携帯電話でひとしきりおしゃべりしながら国分寺で降り、西武球場方面の路線に乗り換えていった。


 もし、1964年の東京オリンピック開催時に首都高速がなかったら…。通勤電車にムキムキの選手やらトレーナーやらが、羽田から選手村のある代々木まで、部活帰りの高校生のように電車を乗り継いでいた可能性もあったのだ。選手としても、一般客にまぎれていたのでは、メンタルを保つどころではなかっただろう。


 『首都高速の謎』では、首都高速の歴史や機能をふんだんに紹介している。本書によれば、東京オリンピックの開催前夜、昭和30年代前半の道路事情は最悪で、羽田から代々木まで車を走らせれば2時間はかかったという。こうした交通事情を解消するために、1959年に首都高速1号線の羽田延伸計画が建設大臣に送られた。この審議の最中に東京オリンピック開催が決定し、予算措置と着工が急ピッチで進んでいく。


 突貫工事と羽田トンネルで使用した新工法で、1960年の着工から5年弱、1964年10月1日、羽田・代々木を含む31.3kmを完成させた。オリンピック開会式の、わずか9日前のことである。


 本書はオリンピックについて詳しく書かれているわけではない。しかし、首都高速の完成が、東京オリンピック成功とその後の首都圏交通の立役者となったのは間違いない。川沿いを走る首都高速の理由や渋滞の仕組み、新しい道路の開通式で行われる交通規制の裏側…。「オリンピック」という本筋から脇にそれてしまうかもしれないが、華やかな舞台を支えるインフラの物語も読んでおいて損はない。

>>舞台は整った。肝心の選手は…?