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隠れた名作ライトノベル特集(3)

隠れた名作ライトノベル特集

 
 

 
 

2013/5/30

「スーパー」探偵小説


探偵小説と思ってはいけない…
探偵小説と思ってはいけない…

 『コズミック』『ジョーカー』は、講談社のミステリ賞であるメフィスト賞の第2回受賞作品。講談社文庫から出ており、ライトノベルには見えない。現在、ライトノベルかどうかはレーベルで見分けることが多く、本稿で紹介をしてよいか難しいラインではある。しかし、著者の清涼院流水がライトノベルレーベルで作品を出しており、またライトノベル愛好家の中でも彼の作品のファンは多いため、今回ここであえて紹介したい。


 1200人の密室殺人が「密室卿」から予告され、直後から次々と不可解な密室殺人が行われていく。その事件に立ち向かう日本探偵倶楽部、通称・JDCに所属する探偵が放つ、強烈な個性とインパクト抜群の推理が物語の主軸になっている。


 10年以上前の小説(著者は小ではなく『大』説と言っているが…)ではあるが、いまだこれを越えたインパクトを持つ探偵ものに出会ったことがない。いや、探偵ものと思うと大やけどをする「怪作」という表現が的確か。読み終えた人の評価が賛否両論、極端に分かれる作品だ。


 この作品が何よりインパクトを放つのが、各探偵が「必殺技」(?)を持っていること。「リバース推理」=現在の状況から、将来起こりうる犯罪を推理して事前に犯罪を防ぐ。「神通理気」=推理するために必要な条件がそろうと自動的に真理に辿りつく。「集中考疑」「不眠閃光」「理路乱歩」など。アリバイ、動機、犯行時間、凶器といった要素を、細かくパズルを組み立てるように紡いでいくはずの探偵小説らしからぬ豪快さに、一周回ってかえって面白くなってしまう。


 この小説は『コズミック』と『ジョーカー』という2部で1つの作品。『コズミック』は「流」「水」の2冊、『ジョーカー』が「清」「涼」の2冊の計4冊で構成されている。しかし、これらの4冊はただ順番に読んでいけば良いわけではない。もちろん『ジョーカー』も『コズミック』も単体で物語として成り立っているが「流」「清」「涼」「水」(清涼in流水、清涼院流水)として読むと真実に辿りつくという、仕掛けが施されている。


 そして何より、多くの読者の間で物議をかもしだしているのが、現代ものらしからぬその「真犯人」だ。物語の最後の方で真犯人の名前が明かされた時に、あまりのことに思わず「ハァ!?」と声に出してしまった。その犯人のイニシャルとは…M? H? S? 気になる人は、ぜひ読んで自ら確かめて欲しい。

(井上宇紀)

今回取り上げた本

ニンジャスレイヤー 『ニンジャスレイヤー』
著:ブラッドレー・ボンド、フィリップ・N・モーゼス 訳:本兌有、杉ライカ エンターブレイン
\1260(1巻)/458ページ(1巻)
2012年9月29日(1巻)
恥知らずのパープルヘイズ 『恥知らずのパープルヘイズ』
著:上遠野浩平 原作:荒木飛呂彦 集英社
\1365/306ページ
2011年9月21日
コズミック 『コズミック』『ジョーカー』
著:清涼院流水 講談社文庫
\650(流)/379ページ(流)
2000年4月15日(流)