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隠れた名作ライトノベル特集(2)

隠れた名作ライトノベル特集

 
 

 
 

2013/5/30

独特の世界観を持つ作家と漫画家の奇跡的コラボ


知る人ぞ知る作家のコラボ
©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
知る人ぞ知る作家のコラボ ©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

 『恥知らずのパープルヘイズ』は、週刊漫画雑誌・少年ジャンプの人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』(作・荒木飛呂彦)に登場するキャラクターにスポットをあてたいわゆる「スピンオフ」作品だ。


 この作品を書いている上遠野浩平という作家は、ライトノベルの歴史を語る上では、はずせない人物。現在、出回っているライトノベルの舞台は大抵現代か近未来がほとんど。しかし、1990年代までは『指輪物語』の世界観に似たいわゆる「中世ファンタジー」と呼ばれる作品が中心だった。そのような作品があふれている市場に、上遠野氏は「現代もの」の小説『ブギーポップは笑わない』を投入し、見事人気を博したのだ。


 魔法やら剣やらが飛び交う世界で、主人公が徐々に強くなっていき最後の強敵を倒す…というこれまでの展開からは全くかけ離れた、緻密で計算された細かい伏線を綺麗に回収する完成度の高い物語構造に、当時のライトノベル読者は一気に魅了された。そして彼の作品に前後して、現代ものの作品が増えていく…。


 そんな緻密な物語を書く作家が、また独特な世界観を持つ名作『ジョジョの奇妙な冒険』の小説を書くのだから、気にならないわけがない。発売当初からコアなファンからは絶賛されていた。読んでみると、やはりかなり面白い。上遠野氏の作品が持つ独特の世界観を保ちながら、一方で『ジョジョの奇妙な冒険』でもある。どちらのファンであっても納得する完成度だ。


 もともと上遠野氏の出世作となった作品『ブギーポップは笑わない』には『ジョジョの奇妙な冒険』に、強く影響を受けただろう表現が多々見受けられる。つまり上遠野氏は、荒木氏の「フォロワー」とも言えるが、その作家が逆に『ジョジョの奇妙な冒険』を書く。もちろん作品としても完成度はかなり高いが、こうしたバックグラウンドを知っておくと、よりこの作品を楽しむことができるだろう。

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