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幕末特集(3)

幕末特集

 
 

 
 

2013/5/30

『レンズが撮らえた幕末維新の志士たち』


当時の撮影代はかなり高価だった
当時の撮影代はかなり高価だった

 辻斬り、襲撃、暗殺…。開国をきっかけに壮絶な戦いが繰り広げられた幕末は、当時の様子が写真で収められ始めた時でもある。『レンズが撮らえた幕末維新の志士たち』は、1857(安政4)年に日本人が撮影した最古の写真「島津斉彬像」を始め、江戸のパノラマ写真など、幕末期に撮られた膨大な写真を集めたもの。

 屋外でポーズをとる写真もあるものの、基本的には背筋をピンと伸ばした無愛想な表情が並ぶ。昔の写真は感度が悪かったから、1枚撮影するのに数分かかる、ということはなんとなく知っていた。しかし、本書で「当時の写真感度はISOにして0.1~1程度」と具体的な数字を示されると、とたんに遠い写真が間近に迫ってくるようだ。


 新政府に対抗するため、箱館行きの船に乗る武士たち。名前もわからない武士たち。1枚2分(1両の半分、約18万円)というかなり高額な買い物であるにもかかわらず、戦災を経た今日に至っても、大名から一般の兵士まで、大量にその姿が残っている。

 「明日をも知れぬわが身を家や愛する者へ残そうと恐怖も顧みず写した作例とおぼしきものには、サムライとしての気概がより強く感じられる」(本書より)。

 まさに書いてある通りだろう。1枚の紙に自らの姿を残した彼らは、名前もわからない人物も多い。このうち、どれほどが幕末動乱で銃剣の露に消えたのか。どれほどが次の世を迎えたのか。写真のまなざしを記憶にとどめて、もう一度「八重の桜」を見てみたいものである。

(中西 啓)

今回取り上げた本

江戸の遺伝子 『江戸の遺伝子』
著:徳川恒孝 PHP研究所
\1575/253ページ
2007年2月19日
幕末入門 『幕末入門』
著:中村彰彦 中公文庫
¥760/295ページ
2007年7月25日
レンズが撮らえた幕末維新の志士たち 『レンズが撮らえた幕末維新の志士たち』
監修:小沢健志 山川出版社
\1680/207ページ
2012年4月25日