Bookshelf ~今月の本

『ビブリア古書堂の事件手帖』

ビブリア古書堂の事件手帖_著:三上延

著:三上延
メディアワークス文庫刊

\620(1巻)/322ページ(1巻)
発売日:2011年3月25日(1巻)

2013/3/25

話題沸騰。あの“美人”安楽椅子探偵ミステリー


 『古い本には中身だけではなく本そのものにも物語がある』(1巻91ページより抜粋)

 古都・鎌倉に店を構えている古書店「ビブリア古書堂」。そこに持ち込まれた古本とその本が抱えていた秘密を、美人店主・篠川栞子(しのかわしおりこ)が読み解いていく物語だ。タイトル、著者、発行年月日、版数だけではなく、傷、痛み具合、落書き、しみついた匂い、値札などわずかな情報から、古本の背景を読み解いていくと同時に、売主らが古本に関係して抱えていた“ほつれ”をも解きほぐしていく。

 ミステリーとしてはいわゆる「安楽椅子探偵」物。探偵役が事件現場に足を運んだりすることなく、わずかな情報から超人的な推理力だけを武器に事件を一気に解決する、という構造自体は決して珍しいものではない。しかし事件手帖という名前に反して、物語に殺伐さも軽妙さもないところが単なるミステリーとは一線を画す。

 古本の内容と絡めた売主の事情・悩みを解決へと導く際に描かれる、緻密な論理展開と繊細な感情表現は、一見矛盾しそうだが、毎話きれいに両立されており、どこか純文学めいた雰囲気さえ作り出している。また本を持ちこんだことが縁で、ビブリア古書堂で働くことになった五浦大輔と栞子の微妙な距離感も話のアクセントになっており、読者を飽きさせない展開になっている。

 物語全体に、こういった読者を引き込むための工夫が凝らされているミステリー作品は最近増えてきたように感じるが、特に本書は世界観の作り方が上手い。

 何より「栞子の推理」という形を通して、本編の随所で読むことができる“本に関するウンチク”は、実に興味深く、読むほど続きが気になってくる。執筆に際しては、相当な量の調査があっただろう描写には、著者の書籍に対する深い愛情が感じられる。

 この書籍は2013年3月現在4巻まで出ており、この作品を元にした漫画作品や25日に最終回が放送されるテレビドラマ(フジテレビ 月曜日21:00~ 剛力彩芽主演)もある人気作品。ミステリーに興味がなくても十分に楽しめるので、気になったら是非手にとって見てほしい。

(井上宇紀)