Bookshelf ~今月の本

『編集者の仕事 本の魂は細部に宿る』

編集者の仕事 本の魂は細部に宿る_著:柴田光滋

著:柴田光滋
新潮新書

\735/206ページ
発売日:2010年6月17日

2013/3/14

今だからこそ、「紙の本」の雑学を


 20年以上前に我が家へやってきた『ロシアの昔話』愛蔵版(1989年、内田莉莎子編・訳、タチヤーナ・A・マブリナ絵、福音館書店)の手ごたえは、今でも覚えている。

 A4サイズに近い大きさで、函から取り出すと深緑の布表紙が現れる。布の手触りと重さで、文字通り軽々しく扱えない。しかしその重みが「これを開いたらロシアに行くんだ!」という高揚感となり、異世界の物語に気持ち良く入っていけた。布の表紙も珍しかったので、汚さないようにとは思いつつ、何度も手触りを確かめていた…。

 本書は「編集者の~」とあるが、見城徹氏の『編集者という病い』(2007年、太田出版)のような、人間同士の泥臭い関係の中でどのように仕事をしていくか、といった人づきあいを軸にしたものではなく、「モノ」としての本づくりを丁寧に解説したものだ。

 本好きな人ならばどこかで耳にしたであろう「四六判」という本のサイズの単位。この名前の由来から、表紙の素材、本文で使われる紙、ページ数と余白の関係など、「普通に手に取って読むことのできる本」にするための工夫が余すところなく記されている。

 著者も加わった新潮新書立ち上げ時のエピソードも興味深い。本文の1行に収める文字の数もきらりと光るこだわりがある。「通勤時間に片手で読む」ことを想定し、当初の予定だった40字から1文字減らした39字に。1文字分の余白で、指を引っ掛けても比較的読みやすい体裁になったという。

 電子書籍の場合、PCからKindleシリーズやkoboシリーズのタブレット、果てはiPhoneを始めとするスマートフォンなど、「モノ」と「コンテンツ」の作り手が別物になっている。「どの紙を使うか」というところからスタートする本づくりに馴染んだ編集者からすれば、「モノ」に手を出せない状況は歯がゆく感じるところもあるだろう。

 様々なうんちくが出てくる「『紙の本』推し」の本書は、読み手によっては様々な意見が出てくるだろう。が、“電子”を含めて「本とは何ぞや」といった「書籍考」ができる面白さがある。

(中西 啓)