Bookshelf ~今月の本

『われ敗れたり』

われ敗れたり_著:米長邦雄

著:米長邦雄
中央公論新社

\1365/189ページ
発売日:2012年2月10日

2013/2/14

究極の「コンピュータVS人間」対局


 2013年3月23日からスタートする第2回将棋電王戦5番勝負。現役プロ棋士5人と、これまた5本のソフトがそれぞれ対局する、人間とコンピュータの団体戦だ。

 この流れを作ったのが、永世棋聖にして日本将棋連盟会長という、将棋界における実力者である米長邦雄氏。2012年1月に行われた第1回電王戦、米長氏と「ボンクラーズ」の対局実現までの道のりと対局後の様子を書いたのが本書である。

 それまでプロ棋士がコンピュータと公式の場で対局することを嫌い、米長氏は「対局料1億円ならば歓迎」と触れ込んでいた。しかし、2007年の「渡辺明竜王VSボナンザ」、2010年の「清水市代6段VSあから2010」と、徐々にプロ棋士とコンピュータの対局が行われるようになる。

 そして、中央公論新社とドワンゴ社の共催によって、第1回電王戦が実現する。自宅にボンクラーズの入ったPCを入れ、「ぼんちゃん」の愛称で呼びながら、序盤戦をどのような展開にすればよいかを練りに練る…。

 対局開始直後の2手目に米長氏が指した「6二玉」は、コンピュータだからこそ有効とみた1手だった。結局、米長氏は敗北してしまうが、どのように読んで駒を進めたのか、将棋に詳しくない人でも対局の状況が分かりやすく解説してある。対局中の心境など、余計な装飾なく思いのたけをぶつけているので、読んでいても納得がいく。

 前立腺がんを患っていた米長氏は、ボンクラーズとの再戦を望みながら、対局した年の暮れにこの世を去ってしまった。投了することのないコンピュータ相手の頭脳戦は、まだ始まったばかりである。

(中西 啓)