Bookshelf ~今月の本

『創造力なき日本―アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」』

創造力なき日本―アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」_著:村上隆

著:村上隆
角川oneテーマ21

\820/217ページ
発売日:2012年10月10日

2013/2/7

アートの世界で生き残るための方法論を解説


 「アーティストは社会のヒエラルキーの中で最下層に位置する存在である」。現代アートの旗手・村上隆氏の衝撃的な言葉から始まる本書は、アート業界で生きるための指標を示し、その方法論をビジネスと重ねて考えていこうといったものだ。

 「歴史に残る作品を作り出すことが、芸術家としての成功」と言ってはばからない著者。アーティストを社会の最下層と位置付けるなど、自虐的になってでもその成功に向けてひたすら努力するべきだという一貫した姿勢を示している。さらに芸術家は「アスリート」だと指摘。寝る時間を削ってでも、デッサンをして絵を描き続け「本当にこれを続けていくのか?」と自問自答することで、はじめて芸術を“生涯の生業(なりわい)”として考える資格があるとしている。

 また村上氏は「カイカイキキ」というアートの複合企業の代表を務めている。この団体は体育会の典型的な縦社会となっており、上の者が下の者の面倒を見ることに重きを置いている。ビジネスの世界と同様、アートの世界で上下関係・信頼関係・人間関係をいかに大切にできるかが、この世界で生き残るための秘訣であるとしている。

 著者はこのカイカイキキの一員になりたいというアーティスト志向の若手に対して「アーティストは特別な人なので、一般人より偉い」という考えを一切捨てさせ「組織の人間としての自覚」を持たせる。上の人間に敬意を払い、社内のルールに従わせ、要求されたことができるようにする。さらに「おはようございます」「失礼いたします」など“当たり前のコミュニケーション”を徹底させることで、自分たちが社会で生きていると自覚させる。

 絵が下手ならばとことん描き続け、下手ならば下手なりにどうすればよいかを考え、研究や分析を重ねて戦略的に進めれば「時代の寵児」になることも不可能ではないとする著者。成功するためには、己の技量よりも「続けていく」ことの方がいかに大切かを理解することができ、芸術の世界がビジネスの世界といかに変わらないかを実感できる。村上隆氏の「アーティスト」として生きる覚悟が伝わってくる気鋭の1冊だ。

(山下雄太郎)