『ITが医療を変える』

著:Team医療3.0 編:杉本真樹
アスキーメディアワークス
\2520/272ページ
発売日:2012年2月29日
IT医療に詳しい医師たちの奮闘記
電子カルテ、iPhone、iPadを利用した医療行為によって、患者に関する情報の共有を病院間や、医師と薬剤師の情報共有がスムーズに行われる。著者となっている「Team医療3.0」は、こうした取り組みを通じて、医療が抱えていた課題を解決しようと活動している、医師や薬剤師、看護師たちが集まったものだ。本書では彼らが実現したシステムの紹介や、現場での実践報告、これからの課題解決案などが記されている。
時間との勝負となる脳卒中治療をきっかけに作られたシステム「i-Stroke」は、急患が来たときに複数のスマートフォンへ同時に知らせる機能や、病院の外にいてもクオリティの高いMRIなどの画像を見ることのできる機能などを備えている。
在宅医療の現場では、iPhoneを使い、既に販売されているアプリなどを利用した情報共有を試した。患者がけがをした時などは、患部の写真を撮って共有することができるなどの利便性があったという。
こうしたiPhone、iPadのようなスマートデバイスと呼ばれる端末を利用する素地はどこにあるのだろうか? 本書執筆陣の1人である狭間研至氏に言わせると、「患者の医療情報」が入ったカルテデータなどは、スマートフォンなどのデバイスを活用できる「キラーコンテンツ」そのものであるという。
ただ、ITの導入によって全てがバラ色になるわけではない。診療報酬体系とは関係のないIT医療は、コスト面で病院関係者の腰が重くなりがちだ。ほかにも、患者の病歴という情報をどう扱っていくか、iPhoneでの入力と手書きの報告書の2重作業で残業が増えてしまった、などの問題もある。
スマートフォン・iPadという、私たちにも身近なデバイスを使うことの多いIT医療の課題と展望が描かれた本書は、いうなれば現代版『家庭の医学』でもあるだろう。「将来の患者」足りうる私たちも本書で知っておいて損はないはずだ。
