Bookshelf ~今月の本

『快感回路 なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか』

著:デイヴィット・J・リンデン 訳:岩坂彰
河出書房新社

\1995/256ページ
発売日:2012年1月30日快感回路 なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか_著:デイヴィット・J・リンデン 訳:岩坂彰

2012/11/29

快楽のメカニズムを解析


 ――快感が人間社会を導いている。

 一般的に人間社会において「快感」を伴う行動は厳しく制限される。あるいは「悪徳」として倫理的に排除してきた。人類がこれまで築いてきた社会規範、教育、法律、宗教などは「快楽」のコントロールとともにあったとも言える。

 一方で人間は「快感」のために様々な労力を惜しまない。だから人類の存続は快感とともにあった。例えばもっとも原始的な快感を満たす手段である「食事」に対する欲求がなければ生命や子孫の存続は難しい。

 そんな人類と切っても切れない「快感」について「食」「性」「ギャンブル」などを与えられた際に起きる神経の動きから、分泌物質の働き、そして何故「依存症」になるのかなどを、科学的な切り口から丁寧に説明した一冊がこの『快感回路』。

 特に印象的なのは「快感を感じるのは、悪徳なことばかりではない」ということ。曰く高カロリーな食事をするのと、慈善活動をすることは、同じ神経回路を活性化することが最近の研究ではわかってきているらしい。「エクササイズ、瞑想的な祈り、慈善的な寄付行為といった社会的に認められた儀式や習慣でさえ(中略)快感回路を興奮させるものである」(本文10ページから引用)。

 快楽は人間社会を導いてきた。だからこそ、快楽の仕組みを分子レベルから紐解く本書は、社会的・宗教的なシステムそのものに対する見方を大きく変えてくれる。全体的に難しい解説が続く本ではあるが、読む価値は高い。

(井上宇紀)