Bookshelf ~今月の本

『生物と無生物のあいだ』

生物と無生物のあいだ_著:福岡伸一

著:福岡伸一
講談社現代新書

\740/286ページ
発売日:2007年5月18日

2012/9/27

生命とは何かについて考えさせられる良書


 新書大賞とサントリー学芸賞をダブル受賞した本書の著者は青山学院大学教授の福岡伸一氏。「人が生物と無生物を見分けるとき、何を見ているのか…」著者が大学のときに抱いた疑問を起点に、生物の様々な仕組みにせまっている。

 例えば、ウイルスは正12面体など幾何学的な美しさをもつ。しかし栄養を摂取することができず、呼吸もしない。このウイルスが幾何学的な物質のような“無生物”と一線を画すのは「自己複製能力をもつ」からだ。この自己複製は、DNAを他の細胞に注入して行われるが、著者はDNAの遺伝情報をもとに作りだされたタンパク質が、作られたそばから壊されていく点に注目。タンパク質が合成と分解を繰り返すことで、傷ついたタンパク質を取り除き、これらが蓄積されるのを防いでいるという。

 著者はこの生命の絶妙なバランスを「動的平衡」と呼び、「決して逆戻りすることができず自然の流れに身を任せる以外にない重要な営み」と紹介する。そして著者はこの営みが「いつの瞬間でも時間軸の上を一方向に進んでいくもので、われわれは生命のありようをただ記述することしかできない」と表現する。読者は、この「動的平衡」に代表されるような“生命のふるまい”を知ることで「生命とは何か」について改めて考えることができる。

 また、分子レベルまで視野を落とした世界でも、生命の動きを事細かに描写する記述から著者の生命に対する“あたたかい目”を感じることができる。著者の幼少期や駆け出しの研究員時代の記述があり、その過程でそれが醸成されたことを推測できる。そして我々は著者の視点を通して明らかにされる “生命のふるまい”に感嘆させられる。一読をおすすめしたい一冊だ。

(山下雄太郎)