Bookshelf ~今月の本

『謎解きはディナーのあとで』

 

謎解きはディナーのあとで_著:東川篤哉

著:東川篤哉
小学館

\1575/256ページ
発売日:2010年9月2日

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2011/7/7

毒舌執事とお嬢様のやり取りに思わずハマる


 シャーロック・ホームズに始まり、明智小五郎、金田一耕助、最近ではコナンまで「名探偵」は、条件がそろえばたちまちに事件を解決に導いてしまう。2011年の本屋大賞を受賞し、100万部を突破した『謎解きはディナーのあとで』に登場する執事・影山もその名探偵の1人。しかも事件現場にすら行かず伝聞だけで謎を解いてしまう、いわゆる「安楽椅子探偵」だ。

 この作品を構造的に見ると、謎を解く「ホームズ役」執事・影山と、話を読者にもわかりやすく解説する「ワトソン役」お嬢様・宝生麗子の2役が主役を務め、ある意味ミステリの王道とも言える。その王道とも言える作品が、ひときわ注目を浴びているのは、目を引くキャラクターと軽妙な文体にほかならない。

 ホームズ役に相当する天才的探偵は、やぼったかったり、どこか抜けていたりと「能ある鷹は爪を隠す」的な人物が多い。ところがこの執事・影山は実にスマート。執事らしく感情の大きな起伏を見せない。事件を解決できないお嬢様から話を聞いたあと、推理を披露する前にも“平然”と「お嬢様はアホでいらっしゃいますか」とのたまう。そんな突き抜けたキャラクターながら、親しみが湧き、実在感のある造形は舌を巻かざるを得ない。

 ほかにも登場する“濃すぎる”面々が、殺人事件の現場を重くしない状況に一役買っている。かと言って事件を軽妙に扱う不謹慎さも感じさせず、サクサクと読み進められる。幅広い年齢層へ、気軽にお勧めできる良作だ。

(井上宇紀)