Bookshelf ~今月の本

『お江 戦国の姫から徳川の妻へ』

 

お江 戦国の姫から徳川の妻へ_著:小和田哲男

著:小和田哲男
角川学芸出版

\1300 /238ページ
発売日:2010年11月25日

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2011/4/7

資料を丁寧に紐解いた「江」関連本の“決定版”

 2011年のNHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」のヒロイン・江(ごう)の生涯を、夫の徳川幕府2代将軍の秀忠や豊臣秀吉、徳川家康との関わり、歴史背景を織り交ぜながら描いた一冊。

 本書を特徴づけるのは、「現在残されている資料は勝者の歴史」という観点からの考察だ。通説についても疑いのあるものには、複数の資料を踏まえた新説を提示している。

 例えば、共に江の子である3代将軍の家光と弟・忠長の争いについて、忠長失脚の原因を、家臣を手討ちにしたり神獣とされた猿を殺すなどの異常行動に求めるのが通説とされる。しかし、著者は忠長が将軍の権威を脅かす存在として警戒されていたことが原因とする説にも理解を示す。

 この他にも、江の母で織田信長の妹・市と浅井長政との結婚の時期と織田・浅井同盟の性質や、秀忠の兄で家康の嫡男・信康が切腹させられた一件についても、様々な資料を徹底して検討した上で通説に疑問を投げかけている。

 肝心の江については資料の乏しさからか、途中から言及が少なくなるのがやや残念な点か。だがそのことが逆に、根拠の乏しい仮説を大胆に立てるのではなく、資料を丁寧に紐解いて真実を見出そうとする著者の姿勢を示している。同ドラマの時代考証も担う著者が正面から取り組んだ、「江」関連本の“決定版”といえよう。

(薬師寺敏雄)