連載 次の60年へ 躍動するテレビの変遷史

2014/11/27

第9回 地上デジタル放送の推進

衛星放送がデジタル化し、大きな転換期を迎えた日本のテレビ放送。テレビの軌跡を追う「躍動するテレビの変遷史」第9回は「国策」として進められた地上放送のデジタル化を追いかける。

地上デジタル放送の特長

 

 衛星放送のデジタル化が行われた日本の放送業界。次は地上波のデジタル化に目標が定められることとなる。


 地上波のアナログ放送をデジタル放送にする「地デジ化」。「電波の有効利用」を大きな目的とし、1953年に放送が開始された地上アナログ放送を、UHF帯(極超短波帯)のみをつかったデジタル方式に置き換える措置だ。そのため視聴には、地上デジタル放送に対応したデジタルチューナー搭載のテレビや受信施設が必要となる。


 地デジのメリットは、アナログ放送と比べて画質が向上することだ。また送受信可能なデータ量をもつ音声や映像が格段に増加。映像の解像度は地上アナログ放送の640×480に対し、地上デジタル放送は最大で1920×1080となる。また画面サイズも4:3から、ワイド画面と呼ばれた16:9の横長に変更された。

地デジ対応テレビにはEPGが表示され、
番組内容や出演者などがわかるようになっていた
地デジ対応テレビにはEPGが表示され、 番組内容や出演者などがわかるようになっていた

 さらに、地デジ化によって電子番組表が導入された。「EPG」(Electric Program Guide)と呼ばれるこの電子番組表は、新聞のテレビ欄のようなビジュアルのため、いつ、どんな番組があるのか一目瞭然。番組内容や出演者などもわかるようになっている。その他、受信機で設定した地域にあった情報を提供する「データ放送」も地デジの大きな特長となった。


海外の動きと日本の導入の流れ


 こうした「地デジ化」に対する動きは海外にも見られていた。草分けである英国では、デジタル放送化を2012年までに行うと1998年に発表。完全デジタル化へと移行する前に、一定区間を対象として、段階的にアナログ停波を実施する方針がとられた。またスウェーデンでも1999年に地上デジタル放送が公共放送のSVTなどで開始。以降、2000年にスペイン、2001年にフィンランドと地デジ化が進んでいく。


 日本も1997年、総務省(当時は郵政省)は、地上デジタル放送の円滑な導入のあり方に関する検討する「地上デジタル放送懇親会」を設置。さらに1998年10月にまとめられた最終報告書には地上デジタル放送の方向性が打ち出された。


 また総務省は、地上アナログ放送を2011年7月24日までに終了することを発表した。電波法が2001年7月25日に改正された際、地上デジタル放送の周波数の試用期間を、「施行から10年を超えない期間」と定めたためだ。


 D-pa(ディーパ)も「地デジ」の普及に関して大きな役割を担った。D-paは The Association for Promotion of Digital Broadcastingの略。地上デジタル放送開始前の、2002年8月に、総務省が設立を許可したもの。設立時は正会員が38社、賛助会員が114社、特別会員が1社からのスタートだった。D-paはHPで、地上デジタル放送の基本的な解説を行ない、放送エリアの告知などを行った。


地デジ放送開始と視聴者への対応


 そして2003年12月、東京・大阪・名古屋の3大都市圏で地上デジタル放送がいよいよスタートする。2006年には県庁所在地を中心とした全都道府県に視聴エリアが拡大される。


 その際、従来の地上アナログ放送で番組を視聴し続ける視聴者に対しても配慮がなされた。2011年7月24日に予定される地上アナログ放送の停波までの移行期間に、アナログ放送・デジタル放送の両方で同じ番組を放送する措置「サイマル放送」が行われた。


 またケーブルテレビをつかった視聴者へのフォローも総務省の指導のもとでなされた。アナログ放送終了後も、地上デジタル放送をアナログ放送に変換するサービス「デジアナ変換」の実施も行われていた(2015年3月に終了予定)。


 しかし普及には予測不能な事態もあった。2011年3月11日に、東日本大震災が発生。2011年7月24日には東北被災3県(岩手・宮城・福島)以外の地域における地上放送の完全デジタル化を余儀なくされる。その後、東北被災3県も、ようやく2012年3月31日にアナログテレビ放送が終了。地上デジタル放送の完全移行が完了する運びとなる。

国内の地上デジタル放送に関する主な動き
東北3県のデジタル化も終え、デジアナ変換終了が今後行われる予定だ

 一方、地上デジタル放送により、電機各社の発売するテレビの売り上げは好調だった。地デジによるテレビの買い替え需要が押し寄せたためだ。このときのテレビはプラズマテレビ、液晶テレビなどの「薄型テレビ」が主流となっていた。次回はこの「薄型テレビ」を追いかける。

(山下雄太郎)

>>次回は現在のテレビの主流・薄型テレビに迫る(12月下旬掲載予定)


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