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イベントレポート
ヨコハマ国際映像祭2009が開催

 横浜の町並みを散策しながら、アートとしての映像の醍醐味を味わえる『ヨコハマ国際映像祭2009』が2009年10月31日から11月29日まで開催されている。主催は、横浜市や公共財団法人横浜市芸術文化振興財団で作られた「横浜国際映像祭実行委員会」だ。

 横浜市では文化芸術、経済の振興と横浜らしい魅力的な空間形成という新たな都市ビジョン「文化芸術創造都市―クリエイティブ横浜」を掲げており、今回の映像祭はその取り組みの一環として位置付けられている。

 テーマは、「CREAM(Creativity for Arts and Media)」。映像が重要なコミュニケーション・メディアとなる時代を迎えるにあたり、多くの人々が映像を使って社会に参加していくために、多様な個人のあり方が反映される表現と記録について考え、体験することを目的としている。総予算額は2億円で、メディアアート、インスタレーション 、映画など87組の作家が様々なジャンルで作品を出展している。
 10月30日に行われた記者会見で総合ディレクターの住友文彦氏は「私たちは映像によって世界とつながっていると言っても過言ではない。技術の発達によって一部の人だけではなく、多くの人にとって一般に生活する中で映像を見る、作るという機会は急速に増えている。映像を使った表現が様々な可能性を持つ今、映像と私たちがどう関わっていくかを考えてもらいたい」と述べた。
 会場は、「散策をしながら横浜の街を楽しんでもらいたい」という想いから、複数のエリアに分けられている。巨大な倉庫のような展示空間に新しい技術を使った作品が並ぶ新港ピア、旧日本郵船倉庫を利用したアートスペースであるBank ART Studio NYK、11月の土日祝限定で映像を上映する会場である東京藝術大学大学院映像研究科馬車道校舎など、趣のある場所が選ばれた。

 メイン会場である新港ピアでは、アート作品だけではなく、様々な研究や記録映画を見ることができ、ワークショップなどのイベントに参加することができる。
エコ・ヌグロホ氏『頭痛の種』
影絵にインドネシア現代史や作者の個人史を
重ね合わせている
エコ・ヌグロホ氏『頭痛の種』
影絵にインドネシア現代史や作者の個人史を
重ね合わせている
 代表的な展示物として、例えば、エコ・ヌグロホ氏(インドネシア)の『頭痛の種』は、影絵にインドネシア現代史や彼の個人史を重ね合わせることによって、異文化に現代的意識を認めさせて、現実の複合性を付与させている。
 一方、八谷和彦氏の『見ることは信じること』は、箱のような特殊な装置を使って見ることで、つぶやきを表現するWEBサービスである「Twitter」が拡大表示される。これによって個別性の強い言葉が公共の空間で現れることが一層強調されている。
 倉庫を使ったアートスペースであるBank ART Studio NYKでは、国内外の映画監督やアーティストの作品を鑑賞することができる。

 例えば、ルワンダ紛争とそれに対する国際社会の無関心に警鐘を鳴らす作品を発表してきたアルフレッド・ジャー氏(チリ)の『静寂の音』では、ピューリッツア賞を獲得したある写真をめぐる倫理性と資本の問題を、見る者に対して鋭く突きつけている。
 さらに、2006年に世界中の数多くの映画祭で受賞及び上映された長編映画『ベター・シングス』で知られるデュエン・ホプキンス氏(イギリス)の『サンデイ』は、イギリスの地方都市に住む思春期の若者が持つ独特の倦怠感を、美しい風景とともに描写。複数の画面に並列させることにより、新しい映画的な物語の実践を試みる作品となっている。

 サテライト会場である野毛山動物園では、本映像祭開催前の8月末より同動物園と若手アーティストがコラボレートした作品を展示する企画を実施。野毛山動物園は、動物と来園者との距離が近く、住民から身近な施設として親しまれている動物園。アートや映像作品に触れる機会の少ない人にも関心を持ってもらいたいということで、展示会場として選ばれた。
泉太郎/豆腐、抜け毛、ライム湖底、道の尾
Courtesy: The artist and hiromiyoshii
泉太郎/豆腐、抜け毛、ライム湖底、道の尾 
Courtesy: The artist and hiromiyoshii
 ここでは、3作家が展示を行っており、同動物園で人気者だった白クマが住んでいた『しろくまの家』を使って若手アーティストして新進気鋭のSHIMURABROS.氏と泉太郎氏がインスタレーションを展示している。
 また、動物園内に設置されている市電の中では、野村誠氏と野村幸弘氏が制作した『ズーラシアの音楽』が上映されている。作者自身が実際に動物に接し、動物の行動を音で表現するという作品で、大人から小さな子供まで楽しめるものになっている。
野村誠氏、野村幸弘氏が制作した『ズーラシアの音楽』
動物園にある市電の中に、両氏が実際に動物と触れ合って
撮影した映像を上映
野村誠氏、野村幸弘氏が制作した『ズーラシアの音楽』
動物園にある市電の中に、両氏が実際に動物と触れ合って 撮影した映像を上映
 このほか、同映画祭では新しい映像表現を模索する場として「CREAMコンペティション」を実施。広く一般から作品を募集し、世界42カ国から992件の応募があった。映画やドキュメンタリー、オンライン作品など、多種多様な作品がエントリーされたが、松島俊介氏による、『VOICE-PORTRAIT~self-introduction』が最優秀賞である「CREAM賞」を受賞した。

 この作品は、インターネット上に存在する他者の自己紹介映像の人物が話している表情や振幅を、作家本人が模倣したセルフポートレート映像集だ。一見、作家の自己紹介のように見えながら、声やそれが語る言葉は他者のものであり、一切関係のないように見えるといった内容となっている。
CREAM賞に輝いたのは松島俊介氏の
『VOICE-PORTRAIT~self-introduction』
作家の自己紹介のように見えながら、声やそれが語る言葉は他者のものという面白さを表現している
CREAM賞に輝いたのは松島俊介氏の
『VOICE-PORTRAIT~self-introduction』
作家の自己紹介のように見えながら、声やそれが語る言葉は他者のものという面白さを表現している
 松島氏は、受賞にあたり「1年以上もWEB上での映像表現を試行錯誤してきたこの作品は、自分なりに見つけた1つの着地点だと思っている。それでも、完成した当初は何だかよくわからないものができてしまった、という印象が今でも残っている。その点について今後も自問していくことで、次の制作につなげていきたい」と語っている。

 今回の映像祭は映像の持つ様々な可能性を体験するだけではなく、新港ピア、Bank ART Studio NYK、野毛山動物園といった会場に足を運ぶことによって、横浜の町並みの良さを実感することができるユニークな企画となっている。作品や展示スペースには随所に工夫が見られ、普段なかなか目にすることのできない国内外の様々な作品や、コラボレーション作品があり、見どころも多い。同映像祭に1人でも多く訪れ、映像の素晴らしさを目で見て、肌で感じることを切に願いたい。


※このイベントとセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。




注釈

*:インスタレーション
現代美術の表現方法の一つ。特定の空間や屋外に平面や立体、あるいは装置などを置いて、その空間全体を作品として体験させる手法。

【展覧会名】ヨコハマ国際映像祭2009
【会期】10月31日(土)~11月29日(日)
【会場】新港ピア、Bank ART
Studio NYK、野毛山動物園ほか




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