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公認会計士松澤大之
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「ARG(代替現実ゲーム)シンポジウム2009」が開催

 「ユビキタスエンターテインメント手法による事業創造コンソーシアム」は2009年10月2日、慶應義塾大学三田キャンパスで「ARGシンポジウム2009」を開催した。
 ARG(Alternative Reality Games)は、日本では“代替現実ゲーム”と呼ばれているもので、米国ではすでに映画やドラマの新しいプロモーション手段として盛んに用いられている。
 インターネット上で得たヒントを元に、現実に存在する場所へ赴き、そこで謎の答えが書かれたメモ書きを手に入れる。ドラマのワンシーンで偶然挿入されていたアドレスを元にインターネットへアクセスする…など、メディアを横断したゲーム展開でストーリーを進める参加型ゲームの一種だ。
 2001年ごろから米国で製作され始めると、インターネットの発達により地理的要因をある程度無視して参加者が協力しあえることや、物語本編などで語られない世界観を説明するのに現実世界を巻き込む形式などが参加者に好評を得て、現在では1000万人以上を動員する作品も存在するようになった。

リュー氏は「ダークナイト」のプロモーションで代替現実ゲームという形態を最大限利用した宣伝を仕掛けた
リュー氏は「ダークナイト」のプロモーションで代替現実ゲームという形態を最大限利用した宣伝を仕掛けた
 シンポジウムでは代替現実ゲームや参加者の行動などについて、国内の産学関係者や、カンヌ国際広告祭のデジタル部門を2年連続受賞した米42entertainment社のアレックス=リュー(Alex=Lieu)氏が講演した。

 興業収入1億ドルを記録した映画「ダークナイト」に対し、その前作「バットマン ビギンズ」では、興業収入が3000千万ドルと1/3しかなかった。「ダークナイト」が前作を遥かに超えてヒットした理由は、その間に「代替現実ゲーム」によるプロモーションが行われたことが大きい。リュー氏は、この「ダークナイト」において「代替現実ゲーム」をプロデュースし成功に導いている。
 同氏はこの成功について「伝統的なメディアを利用せずに、代替現実ゲームを用いたことで参加者側からも周囲に情報を発信してもらえたから」と分析している。
 代替現実ゲームはインターネット空間で得た情報を元に現実空間でのアクションが行われる。そのため「熱狂的なファンがイベントなどに参加し現実空間でアクションを起こすことで、作品をまったく知らない人の目にも止まった」(リュー氏)ように“ファンを楽しませること”と、“宣伝効果”の双方を取ることができると、効果の高さを訴えた。
 またファンが周りを上手く巻き込むようにゲームを誘導することで、ファンを中心にさらに認知者が増えていくという好循環が出来上がるのも、“現実”を利用しているプロモーションならではの効果と言える。
武山氏は研究分野の「消費者行動」に絡めて代替現実ゲームを語った
武山氏は研究分野の「消費者行動」に絡めて代替現実ゲームを語った
 また代替現実ゲームがインターネットを中心に行われることについて、慶應義塾大学経済学部教授の武山政直氏は「人間は、ニュースなどを聞き、それを元に推測することで『世界全体』の状況を認識する。現在はインターネットも世界の状況を認識するソースの1つになっているため、WEBを経由して提供したフィクションの情報は、リアリティが高くなりやすい」と語る。

 ストーリーの核となるようなサイトがなくとも、フィクション上の人物のブログ・ホームページ・掲示板などを作成することでより現実味が高いフィクションの世界観が作られる。

 このようにインターネットなどのフィクションの利点と、リアルの利点を使った新しいゲームとして人気が出ている代替現実ゲームだが、リアル空間をも介して行われている以上、参加者の行動には制限がなく、想定外の行動に出ることもあるため、主催者側は高い運営能力を問われる。
 最後に行われたパネルディスカッションでは、メディアファクトリーでプロデューサーを務める三原飛雄馬氏が「リアルタイムでの対応が難しい」と運営の困難さを表現した。
 例えばゲームのヒントとなる動画を製作して公開したとする。その動画について参加者は「背景に見える電気製品は○○製で○○でしか使われていないから場所はこのあたりだろう」「犯人が持っている道具は日本では買えないものだから日本人ではないかも」など様々な推測を巡らす。
実際に製作したメーカーだからこそ生じる運営上の難しさも話題に上がった
実際に製作したメーカーだからこそ生じる運営上の難しさも話題に上がった
 こうした推測は主催者側が用意したシナリオとは無関係な場合もあるが、それを「その推測をしてもシナリオとは関係ないので」とアナウンスしてしまうと、参加者は興ざめしてしまう。そのため代替現実ゲームの主催者は「パペットマスター」というチームを設置し、24時間いつでも参加者の行動からフィードバックを受け、適宜方向性を修正したり、参加者を楽しませながら正解へ導く必要がある。

 リュー氏は「パペットマスターに最も必要な能力は、参加者との関係性を築く能力」と語る。これは、インターネットの登場により、情報発信がコンテンツ制作者など「送信者」側からの一方通行ではなくなってきたことと関係が深い。
 インターネットというインフラの浸透により、事実上だれでも情報が発信できるようになると、送信者は受信者側からのフィードバックを受け、ときには受信者が送信者に代わるようにもなった。送信者は受信者側からのフィードバックに敏感になる必要があるのだ。

 「代替現実ゲーム」は、名前から単なるゲームとして捉われがちだが、これはインターネットの台頭により生み出された、新しい「情報送信者と受信者の関係」の1つと考えることもできる。日本でゲームとして浸透するかは未知数だが、これからのメディアあるいはコミュニケーション手段の1つとして、今後の動向に期待したい。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



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