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公認会計士松澤大之
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セミナーレポート
「情報化月間2009記念講演会」が開催

 2009年の情報化月間(10月1日~30日)を記念する特別行事「情報化月間2009記念講演会」が経済産業省、総務省などを中心にした主催で10月1日にANAインターコンチネンタルホテル東京(港区)で行われた。

 この情報化月間は、1970年代はじめに起きた「情報化社会への波」に対応するために、当時の通商産業省(現・経済産業省)が各省庁に協力を呼びかけて始めたもので、今年で38回目となっている。今回のテーマは「Global, Open, Green!」で、記念講演や式典など、多くのイベントが開催された。

コクヨの黒田章裕氏はオフィスの低炭素化の推進が、今後は欠かせないと話す
コクヨの黒田章裕氏はオフィスの低炭素化の推進が、今後は欠かせないと話す
 まず情報化月間2009記念講演会として、「低炭素社会におけるワークスタイル」という題で、コクヨ株式会社代表取締役社長の黒田章裕氏が講演を行った。

 同氏は講演で、 日本ではオフィスなどからのCO2排出量が1990年から16年間で39.5%も増えた点を指摘し、オフィスの「低炭素化」の推進を提案した。
 例えば、オフィスでの事務作業の場合、一定の時間内で作業を終わらせるよう意識づけるために、ITを活用して作業可能時間を設定するとともに、業務内容に合わせて作業場所を変えることで、作業効率を高め、消費電力を削減する「Eco」の効果がある点を説明。また、場所を変えて作業を行うことで、他部署のスタッフとの幅広いコミュニケーションが生まれ、新しい価値を創造できる、「Creative」に繋がる側面があることを付け加えた。
 黒田氏は「ものづくりに集中してお客様に商品やサービスを提供することを念頭においてきたため、環境というものに興味を持たずに仕事をしてきたのではないか」と指摘。オフィスで働いている人たちに、低炭素化を普段の環境の中で意識付けさせていきたいと話した。
講演する慶應義塾大学の國領二郎教授
情報を資源ととらえ、活用していく時代の到来を参加者に告げる
講演する慶應義塾大学の國領二郎教授
情報を資源ととらえ、活用していく時代の到来を参加者に告げる
 また、午後に経済産業省・財団法人日本情報処理開発協会の共催により行われた情報化月間特別行事「デジタルJapanの未来像」では、慶應義塾大学の國領二郎教授が「情報資源活用時代のIT戦略」という題で講演を行った。

 國領氏はICカードやRFID*1、監視カメラなど、すべての人がキャプチャした情報が、ネットを経由して、様々な場所に流通していく現状について触れ、「情報を資源ととらえ、活用していく時代」と定義付けた。その中で想定される環境について以前は情報が川上から川下に流れるということを想定していたが、現在では消費者が発信する膨大な量の情報が編集・価値化されてサービスの提供側やメーカーに伝わるといった、双方向のインフラとなっている点を強調。同氏はさらに、大量の情報処理に有効な、クラウドコンピューティングが現在世間的に注目されていることについても触れた。
講演するITジャーナリストの佐々木俊尚氏
日本のライフログの実現にはまだまだ課題が多いと話す
講演するITジャーナリストの佐々木俊尚氏
日本のライフログの実現にはまだまだ課題が多いと話す
 次に、ITジャーナリストの佐々木俊尚氏が、「ライフログ*2とウェブの未来」という題で講演を行った。
 同氏によれば、日々の生活での行動について、例えばどんなものを買ったのか、どのウェブサイトを見たのか、など行動履歴を記録してビジネスに役立てていこうというようなサービスが注目されていると所感を述べた。

 しかし、ライフログが将来のインターネットビジネスを左右する巨大なマーケットであるということが事実としてある一方で、プライバシーの侵害が消費者の不安を招いていると紹介。そこで、ITの世界全体の流れでライフログをどういう位置付けにするかが焦点となっている。

 そして今後、ライフログの社会的な道筋が開かれる例として、医療のIT化を挙げた。EMR(Electronic Medical Record)が単にカルテを紙からPCに移し替えたものであるのに対し、EHR(Electronic Health Record)は各病院で存在する電子カルテをネットワーク化して、様々な病院で見られるようにしようというものだ。さらに佐々木氏は、その情報を個人の単位までWEBでつなげ、電子カルテを個人の端末で見られるようにするPHR(Personal Health Record)というサービスが登場していることを説明した。

 一方、アメリカではグーグルとマイクロソフトが相次いで、PHRのサービス提供事業に参入している。当然これらもライフログであり、「自分の生活データを記録する」といったものだ。

 日本でも当然、ライフログデータをビジネスに活用しようという機運が高まっている。様々な企業にまたがっているライフログデータを共有した方がいいのではないかという意見だ。例えば、ある特定の消費者がアマゾンでビジネス書を買っているということがわかれば、YouTubeでそのビジネス書に関連した動画が見たいのではないかと予測するなど、そのユーザにサービスを提供する企業が、一社だけでは成しえなかったユーザニーズをあらかじめくみ取り対応することができる。

 しかし、それには日本の個人情報保護法の規定では「第三者提供の禁止」が立ちふさがる。すなわち個人の情報を他の会社に提供するには第三者の合意が必要であり、データの交換をするたびに本人に確認しなければならない。

 個人情報保護の連邦法を持たない米国では、ライフログビジネスを推し進めようとしており、日本が米国に先を越され、主導権を握れなくなる可能性が高い。今後、こうした問題がライフログの展開とともに浮上してくることは確実だが、これらの問題をクリアすれば、ライフログビジネスが巨大な市場になるのは間違いないと同氏は意見を述べた。

 今回の様々な講演で、ITを活用することで、低炭素化・省電力化に結びつくといった企業の提案、またライフログの共有などについて参加者に周知したことを確認できた。一方で、日本のライフログに対する個人情報保護法の問題なども浮き彫りになった。情報化月間がこういった問題点も意識する場として、今後も役割を果たしていくことを期待したい。


「情報化月間2008記念講演会」が開催



※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。




注釈

*1:RFID(Radio Frequency Identification)
ID情報を埋め込んだタグから、電磁界や電波などを用いた近距離の無線通信によって情報をやりとりするもの。

*2:ライフログ
PCや携帯電話といったコンピュータから取得できる、ある特定の人物が行ったありとあらゆる行動の記録。またはその記録から嗜好や行動パターン、人間関係を分析し、マーケティングや健康管理などに活用する技術を指す。


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