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公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
は“個人の意識”
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セミナーレポート
「イノベーション・ジャパン2009」が開催

 国内大学の最先端技術シーズと産業界のマッチングイベントである「イノベーション・ジャパン2009-大学見本市」が9月16日から18日にかけて行われた。

 同イベントでは大学発の最先端技術シーズを始め、全国の大学の研究成果を、環境、材料、ナノテクノロジーなど352のカテゴリー別に展示。さらに実用化を目指す新技術を研究者自らがプレゼンテーションする説明会などが行われ、参加者の理解を助ける場も設けられた。そういった様々な試みもあり、来場者は3日間で延べ約4万1000人に達した。
 また、同時に産学連携の現状と今後について、産官学の有識者が講演する「イノベーション・ジャパン2009フォーラム」も開催された。

新日本石油の渡文明会長が講演
企業のイノベーション実現に向けた流れに
産学官連携は欠かせないと話す
新日本石油の渡文明会長が講演
企業のイノベーション実現に向けた流れに
産学官連携は欠かせないと話す
 同フォーラムの1日目には、日本経済団体連合会副会長である新日本石油の渡文明会長が講演を行った。
 渡氏は近年の国際競争激化を背景に、アジアの各国が自由貿易協定による関税撤廃などで貿易の自由化を加速させていることを指摘。日本以外の国が次々と自由貿易協定を進めていくと「日本が世界から取り残されてしまうのではないか」と懸念した。

 また、「温暖化問題など様々な地球環境の課題に対応していかなければ、日本の国際競争力が低下する。イノベーションなしでは日本再生の可能性は低い」として、その促進に向けリーダーに求められる役割を2つ挙げた。
 1つは「低炭素社会への移行」というような、社会のニーズや流れを把握し事業につなげる「入口」と、事業として利益を上げる「出口」を押さえること。2つ目に、場、人材、資金といった事業に必要な材料を確保することにあるとしている。

 さらに渡氏は、イノベーション実現に向けた流れの中には「大学が行う基礎研究と企業が行う事業化研究の間にある応用研究の段階では『死の谷』、製品の事業化からイノベーションの実現の間にある普及・定着の過程に『ダーウィンの海』という2つのリスクがある」と述べた。

 死の谷(Valley of Death)とは、多くの企業が研究開発の成果を「実用化は確実」と見込むことができず、手をこまねいている間に研究開発を中断せざるを得なくなり、結果的に実用化への研究がごくわずかとなる現象のことを指す。
 ダーウィンの海(The Darwinian Sea)とは、最先端技術で開発された製品が概して市場競争を生き残れない現象のことで、企業の研究開発とイノベーションのギャップをダーウィンの進化論になぞったものだ。

基礎研究から普及・イノベーションの実現までのリスク
渡氏の講演資料をもとに作成
基礎研究から普及・イノベーションの実現までのリスク
渡氏の講演資料をもとに作成
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 同氏は「死の谷」の克服方法として、「産学大型組織連携」が有効であるとした。「産学大型組織連携」とは、これまでの「大学教授と企業の研究員」というような属人的な結びつきを、組織同士での連携に改めるというもの。その効果について「組織同士で協力すれば、基礎研究の段階からビジネス展開を見越したシーズを掘り起こし、多くの研究を事業化に送り出すことができる」と語った。

 また「ダーウィンの海」の解決については、社会システムの変革も含むイノベーションの完成を目指した、「産学官オールジャパン連携」の必要性を訴えた。
 渡氏は「事業化したものを普及・定着させる上では様々な制度や基準・規制、社会システムが関連するため、『ダーウィンの海』は産と学だけでは乗り越えらない。官も含めた『産学官オールジャパン連携』が必要だ」と主張。産学官の大型連携によって、普及を阻害する法規制の見直しや国際的合意に基づく標準化などを進め、社会システムを変革することが重要であるとした。

講演する早稲田大学の白井克彦総長
イノベーション創出のため、産学連携を含む
大学研究への支援・充実を訴えた
講演する早稲田大学の白井克彦総長
イノベーション創出のため、産学連携を含む
大学研究への支援・充実を訴えた
 2日目午前中には、「未来社会の基盤―大学のイノベーション―」と題して、早稲田大学総長で日本私立大学連盟会長を務める白井克彦氏が、大学が生み出すイノベーションと企業の連携について講演した。

 現在日本では、長期の景気低迷に加えて、少子高齢化やグローバル社会への対応など多くの問題・課題点を抱えている。
 白井氏は「長年にわたり日本の好景気を支えてきた製造業は、労働力が安価な中進国が台頭してきており、日本の製造業が得意とする『高付加価値』だけで競争することが年々難しくなってきている」と現状を指摘。しかし「日本が金融経済で世界と勝負をするのは難しい。愚直に良いものを創り出すような実体経済で勝負するべきではないか」として、製造業の復権も訴えた。

 国際社会と勝負する製造業の競争力を高めるためには、「高付加価値ならばどこかの先進国が買うだろう」というこれまでの発想を改め、適正な市場に向け適正な付加価値を持つ製品を造るという発想に転換しなければならない。
 そのためにも「大学が持つ知的財産を開放し国内産業と基盤技術を共有することで、多様な国際社会に対応できるよう競争力を強化しなければならない」と白井氏は主張した。

パネルディスカッションではNEDO特別講座の実例が有識者から発表され、メーカーの製造技術力強化など今後の課題について語られた
パネルディスカッションではNEDO特別講座の実例が有識者から発表され、メーカーの製造技術力強化など今後の課題について語られた
 午後からはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が、「拡がり深化する『NEDOの産学連携』」という題で講演やパネルディスカッションを開催した。産官学の有識者が大学・企業双方の視点から同講座が生み出してきたイノベーションについて、それぞれの立場から見解を述べた。
 NEDO総務企画部長の鍛冶克彦氏は「NEDOではすぐれた成果を生み出した技術に対して『NEDO特別講座』を設置し、社会人や大学の研究人材の交流、育成活動を行うことで、技術を広く深く発展・普及させている」と、同プロジェクトの意義を説いた。

 また実際に産学連携が進んでいる例として、東京工業大学イノベーション推進研究体の特任教授であり、帝人非常勤顧問の川口武行氏は「NEDO産学連携ナノファイバープロジェクト」を挙げた。同プロジェクトでは、研究開始時点でシーズとニーズのすり合わせを実施することで、初期段階からニーズを反映させた基盤技術の研究開発が行われたことを成果として強調した。

 今回で6回目となるイノベーション・ジャパンでは、全国の大学の研究成果を一挙に集めることで、企業に積極的にアピールして技術のマッチングをしたいという、大学側の熱気を会場から感じることができた。また講演では、企業側から実際の産学官連携の実例や成果を示されたことが参加者の興味を引いた。産学官連携の取り組みを披露する場として、今後のさらなる充実を期待したい。


イノベーション・ジャパン2011の様子

イノベーション・ジャパン2013の様子



※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



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