社会セキュリティの国際標準化動向について報告:イベント・セミナーレポート:HH News & Reports:ハミングヘッズ

ITをもっと身近に。新しい形のネットメディア <毎週月・木更新!>

- Home > コラム > イベント・セミナーレポート > 社会セキュリティの国際標準化動向について報告
 コラムトップページ
 インタビュー記事 ▼
 イベント・セミナーレポート ▼
公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
は“個人の意識”
(動画あり)

セミナーレポート
社会セキュリティの国際標準化動向について報告

 テロ、災害、パンデミックなどの緊急事態に遭遇した際、業務レベルを素早く通常の状態に戻すため、事業継続管理(BCM)を導入する企業・地方自治体などが増えている。しかし、BCMを策定する際には、業界団体などとの連携を意識しないと実効性が弱まってしまうため、各国で緊急事態に対応するためのガイドラインが策定されている。

 こうした動きを踏まえ、緊急事態への対応を国際規格にしようとする作業がISO(国際標準化機構)の専門委員会TC223(社会セキュリティ専門委員会)で進められている。そのうち、委員会原案(Committee Draft)が出されてほぼ確定した国際標準規格ISO22301(緊急事態準備と事業継続マネジメント―要求事項)について9月25日、日本規格協会が開いた「ISOにおける社会セキュリティ規格開発動向説明会」で、専門家委員会に参加している日本メンバーから解説がなされた。
早稲田大学の中島氏は各国によって異なるセキュリティ認識を紹介
早稲田大学の中島氏は各国によって異なるセキュリティ認識を紹介
 BCMの国際規格を検討するきっかけとなったのは、2001年の米国同時多発テロだ。この事件を背景に、米国がセキュリティについての標準化を提案。2003年に対テロリズムという方向でISOセキュリティ高級諮問グループ( ISO/Advisory Group on Security)が立ち上げられ、2005年からTC223でISO22301が検討されることとなった。

 この標準は「社会セキュリティ」と名付けられているが、早稲田大学教授の中島一郎氏は「社会セキュリティについての理解は時代と国によってイメージが大きく違う」とした。中島氏によると、日本で社会セキュリティと聞いて想起するのは1995年の阪神淡路大震災などの自然災害が中心であるが、欧米では「9.11」の同時多発テロなど、人災のイメージが強い。このため、日本が自然災害を強調してもなかなか受け入れられなかったが、2005年のハリケーン・カトリーナの甚大な被害によって、欧米諸国でも自然災害に対する意識が高まったという。
 中島氏は「社会セキュリティに対する理解は時代とともに変化していく。その中で、ある程度のマイルストーン(道標)が必要となり、国際標準の策定の流れとなった」と、国際標準化の取り組みがなされるまでの過程を解説した。
「社会セキュリティは新興国に必要なのでは」と語る長岡技術科学大学大学院の渡辺氏
「社会セキュリティは新興国に必要なのでは」と語る長岡技術科学大学大学院の渡辺氏
 ISO22301については、先進国のみならず、中国・インドネシア・タイなども社会セキュリティマネジメント規格の早期成立と共に、第三者によるISO認証となることを積極的に望んでいる。
 この理由を長岡技術科学大学大学院の渡辺研司氏は「製造業など外国の資本が入っている国々は、事業継続性に不安を持っている。自然災害も起こるので、早く第三者認証を取り入れて国の底上げをしないと、(BCMが準備できていないと見なされて)外資が去っていってしまうのではという不安を抱えているためだ」とした。
 諸外国の動向を踏まえ、渡辺氏は今後日本が標準化活動で取り組むべき課題として「私見だが、この規格は先進国の大企業で使うというよりも、大企業が部品やサービスを調達している新興国サイドが使うものと考えている。日本がイニシアチブを取るためにも、新興国のニーズを取り入れ、日本の標準化活動においてアジアに対してもっと積極的に働きかけるべき」と訴えた。
リスクコンサルタントや製造業の法務担当者など、約100名が参加した
リスクコンサルタントや製造業の法務担当者など、約100名が参加した
 説明会の最後に質疑応答が行われ、「日本はなぜ第三者による認証について拒否しているのか」という質問が出された。これについて渡辺氏は「何をどう守るか、というのは組織ごとに、経営判断として行われる。ISOでガイドラインを示すことは出来ても、第三者が客観的に認証できるか難しいため」と理由を挙げた。
 また、ISO標準の中には、社会セキュリティ以外にも様々な分野でのマネジメント標準が存在する状態についても言及がなされた。東京海上日動リスクコンサルティングの岡部紳一氏は「マネジメント規格自体がバラバラでは困るので、ISO22301を含め、これらを統合しようという大きな動きが出ている」とマネジメントシステム全体の動向を述べた。

 テロや災害などの緊急事態は、たとえ遠くで発生したとしても、現在は世界中の流通や金融などに影響を与えかねない。社会セキュリティ規格が有用なものとなるように、日本がイニシアチブを取って規格の策定をしていくことが望まれる。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。




注釈

*:事業継続管理(BCM)
自然災害や事故、不祥事などの緊急事態が発生した時に事業を継続するための計画策定や、計画導入・運用・見直しなど、包括的なマネジメントのこと。


お問い合わせ

  コラムトップページへ▲