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公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
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セミナーレポート
電子自治体の推進について講演

 都道府県や市町村など自治体業務の電子化推進を目的にした「地方自治情報化推進フェア2009」が9月28日~29日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開かれた。
 27回目を迎えた同フェアは、地方自治情報センター(LASDEC)が主催。講演会・トピックスセミナーでは有識者が電子自治体推進について提言し、自治体関係者が具体的な事例を紹介した。情報システムの展示会には情報関連企業51社、LASDECに加え韓国政府が出展、4277人が来場した。

 28日の講演会には470人が詰めかけ、行政のIT化における課題を有識者2氏が語った。

 東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授の須藤修氏は、同氏が座長を務める国の「次世代電子行政サービス基盤等検討プロジェクトチーム」での検討内容を基に講演。
 行政の電子化が目指す方向性について「今までは役所で窓口がバラバラだった手続きをワンストップサービス*1にしたい。データを連携して、例えば区役所の窓口から国や他の自治体の手続きもできるようにしたい」と力を込めた。

 具体的には、役所窓口やウェブなどからの各種申請を一括して受け付けるフロントオフィスを設置。そこから各省庁、自治体などとデータをやり取りするバックオフィス「行政情報の共同利用支援センター(仮称)」に情報を送り、市町村などへ必要な処理を求める方法を提唱した。
野原氏は住民のニーズを踏まえた行政の電子化が必要と訴えた
野原氏は住民のニーズを踏まえた行政の電子化が必要と訴えた
 国の「IT戦略の今後の在り方に関する専門調査会」委員でイプシ・マーケティング研究所社長の野原佐和子氏は、インターネットが幅広く生活に浸透しているにもかかわらず国の電子申請システムの利用状況が30%台にとどまっている点を、国や民間の各種調査結果を引用しながら指摘。
 その上で「電子行政サービスの利用が進まないのは、人々のニーズに対応せず、サービスに魅力が感じられないから。人々がどのようにインターネットを使っているかを的確に把握し、今後の方向性を見据えたサービスを提供すべき」との考えを示した。

 このほか、税務署がデジタル化した所得税などの情報を、紙出しして自治体へ伝達しているという事例などに触れ「IT投資の総額は大きいのに、有効に活用されていない。連携や共有が可能なシステムの整備が必要」と強調。
 さらに「技術力」と「事業開発力」など複数の能力・見識を持つ人材育成の必要性にも言及しながら「政権交代により、『便利で安全なICT社会』に向け、さらに本質的な対応が進められることを期待したい」と訴えた。

 自治体関係者250人が聴講した29日のトピックスセミナーでは、松山市と東京都から事例が紹介された。

 松山市市民課の矢野友哉氏は、2000年11月に市役所へ総合窓口センター*2を設置し、ワンストップサービスを実現するまでの経過を報告した。

 同市では1999年12月、同センター設置の準備に着手した。同年5月に就任した中村時広市長がワンストップサービスの窓口を整備したいという考えを持ち、職員からも同様の提案があったのがきっかけだった。
 検討にあたっては、異動・戸籍関係から保険・年金関係の手続きまでを一元化するために、業務を所管する複数の課をまたいだプロジェクトチームを設置。個々の業務について総合窓口で取り扱えるかどうかを「可能」「可能だが事後処理が必要」「不可能」の3段階に分類した。職員研修やマニュアルづくりにも力を入れたという。
総合窓口センターの設置で市民の満足度が向上したと語る矢野氏
総合窓口センターの設置で市民の満足度が向上したと語る矢野氏
 矢野氏は、システム整備などハード面だけではなく「私たちは来庁者を『お客様』と呼び、お客様の立場に立った窓口づくり、すべての人にやさしく、分かりやすい窓口づくりを心掛けた」と、ソフト面の充実にも努力したことを披露。

 設置後の効果については「手続きが基本1ヶ所になったことで市民に満足してもらえるようになり、短時間での対応も可能になった」とアピール。「総合窓口では扱う業務数が多く職員への負担は増すが、市民の満足度は大きくなる。機会があればぜひワンストップサービスの導入を検討してほしい」と参加した自治体関係者へ呼び掛けた。

 東京都情報システム課の須田徹氏は、IT化が進んだ業務を災害時などに円滑に復旧できるよう人員確保の方法やシステムのバックアップ、必要な資機材の確保策を規定する事業継続計画を策定した事例を発表した。
 各部局独自のシステムに影響を与える共通基盤システムの復旧を最優先させるため、システム事業者も含めた人的体制を整えたことを紹介。同計画のマニュアルに訓練や見直しなどPDCAサイクルの実践を盛り込んだことにも言及した。

 行政の電子化・ワンストップサービス化は、住民サービス向上と業務効率化の両面から早期の進展が求められる。推進にあたってはやみくもにシステム整備を行うのではなく、野原氏が指摘するように住民の目線に立った検討が必要だろう。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。




注釈

*1:ワンストップサービス
ここでは、1ヶ所の役所の窓口に行くだけで、複数の部門にまたがる行政の手続きを済ませられるようなサービスのこと。

*2:松山市役所の総合窓口センター
住民異動・戸籍関係の手続きをはじめ、年金・保険、児童手当、税証明など複数の部門にわたる186業務を取り扱う。「証明発行」「届出受付」「外国人」「母子・健康」の4コーナーに分け、1つの窓口で関連する手続きを1度に済ませられるようになっている。2000年11月に設置されて以来、先進事例として他の自治体から注目を集めている。


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