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セミナーレポート
温暖化がもたらす気候の大変動について研究者らが講演

 文部科学省管轄のもと気候研究者・海洋研究者らで構成される「21世紀気候変動予測革新プログラム」を推進する海洋研究開発機構などの5団体は、東京都千代田区の一橋記念講堂で8月27日、「平成21年度公開シンポジウム 気候大変動の時代に生きる」を開催した。

 2002年に文部科学省からの委託で開発された「地球シミュレーター」は、地球規模での環境の変化と未来を高精度で予測することができる。完成以来、科学技術の発展に寄与してきたこのシミュレーターが2009年3月に更新され、性能がさらに高められた。温暖化の問題などから地球規模で環境への関心が強まっていることも相まって、「地球シミュレーター」が生み出すデータの価値に注目が集まっている。今回のシンポジウムでは、これらの結果を用いて研究を進めている気候関係学識者が集い、各々の成果を発表した。

「気候の変動にはCO2増加だけではなく自然変動など多数の要因が絡む」と木本氏
「気候の変動にはCO2増加だけではなく自然変動など多数の要因が絡む」と木本氏
 東京大学気候システム研究センター副センター長の木本昌秀氏は、新聞などのメディアで、21世紀に入って数年間、平均気温が下がり続けているデータを引用して「寒冷化に向かっている」という論調が広まっていることに疑問を投げかけた。
 「地球シミュレーター」を含む複数の気候予測シミュレーターに、過去の気候条件をインプットして現在までの気温変化を予測する性能実験を行ったところ、実際の気温変化と大差ない結果が出た。このため、将来にわたる温暖化の傾向を示している複数のシミュレーターの結果についても「ある程度信頼できる」と反論。
 実際にこれらのシミュレーターの予測を詳細に見ていくと、前年比で気温が下がっている年もあるが、どの予測でも全体としては温度が上がる結果を出している。
 同氏は「気候は現状10年単位で変動しており、過去にも10年のうちで気温が下がることはあるが、100年単位で見ると温度は上昇している」とし、今後も全体としては温暖化が続くだろうという見解を示した。

 また、実際に温暖化が進むと気候がどのように変化するのか、超高解像度を誇る予測実験結果を用いた発表も行われた。
 通常、雨は湿気を含んだ空気が空に上がり、上空の低温で持ちきれなくなった水分が降ってくることにより起こる。
 地球科学技術総合推進機構研究員の金田幸恵氏は、温暖化が進んだ場合の天候変化を解説。「温暖化が進み大気の温度が上昇すると、大気に含むことができる水蒸気量が増えるため、雨自体は発生しづらくなる。ところが雨の規模は大気が持っている水蒸気量に比例するため、一度限界を超えると大雨になりやすい」と、豪雨強度*1の変化を指摘した。

 「温暖化で台風はどうなる?」と題し、近未来における台風について講演した名古屋大学准教授の坪木和久氏も、豪雨の発生と同じような理由から「台風も(豪雨と同じように)発生数は減少するものの、これまでにない強い『超台風』が発生する」と予測。
 シミュレーターが予測した最大の台風は、地上中心気圧866hpa(ヘクトパスカル)、最大地上風速は秒速80~90m/s*2にもなり、過去に大きな災害をもたらした伊勢湾台風(同929hpa、同45m/s)やハリケーン「カトリーナ」(同920hpa、同62m/s)を大きく上回る。
 また1回の超台風が降らせる雨量は1000mm超となり、日本の年間降水量(約1700mm)の60%近くにも及ぶ。このことから、同氏は将来起こりうる超台風がもたらす水害といった災害の危険性に警鐘を鳴らした。

プログラムを統括している文部科学省参与の松野太郎氏は「温暖化を止めるにはCO2排出を80%削減する必要がある」と語った
プログラムを統括している文部科学省参与の松野太郎氏は「温暖化を止めるにはCO2排出を80%削減する必要がある」と語った
 シンポジウムの最後には講演者全員が壇上に上がり、会場からの質問に答える形で討論を行った。その中で、国立環境研究所温暖化リスク評価研究室長の江守正多氏は「環境に関する情報を公開することで、国民全体へ政府の環境政策に対する選択肢を提供できる」とし、同プログラムで予測・分析されている情報公開の意義を説いた。

 将来、気候がどう変化していくのかを把握できれば、あらかじめ対策を施しておくことも可能だ。気候変動の影響は全ての人類が乗り越えなければならない課題であるため、国のみならず世界全体でこのような取り組みを進め、防災体制を整えていくことを期待したい。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。




注釈

*1:豪雨強度
年間を通じて降水量が多い日、上位4日の降水量の合計。

*2:最大地上風速は秒速80~90m/s
竜巻の強度分類で、風速による被害を想定すると7段階中4番目のF3規模相当になる。(F0~F6まで。最高のF6分類は観測史上まだ存在しない)F3規模では「木は根こそぎ引き抜かれ、木造家屋は倒壊。電車は転倒し、車は宙に浮き上がる」という被害が予測される。


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