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公認会計士松澤大之
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セミナーレポート
「デジタルサイネージジャパン2009」が開催

 「デジタルサイネージ」の普及啓発、ビジネスの活性化を目的とした展示会とセミナーである「デジタルサイネージジャパン2009」が6月10日から6月12日にかけて幕張メッセで行われた。同時にネットワークインフラ技術や製品の展示会である「Interop Tokyo2009」や放送機器の展示会である「IMC TOKYO2009」が行われ、3日間で約13万人が来場した。

 デジタルサイネージとは、デジタル技術を用い、タイムリーに映像や情報をディスプレイに表示する次世代型インフォメーションシステムであり、設置場所により広告の対象者に確実に見てもらうことが可能だ。表示コンテンツの切り替えの容易さなどで、広告としての費用対効果が高くなるとして現在注目されている。

講演をする宇治則孝NTT副社長。デジタルサイネージ
に可能性を感じていると話す
講演をする宇治則孝NTT副社長。デジタルサイネージに
可能性を感じていると話す
 1日目の講演ではNTT代表取締役副社長の宇治則孝氏が、「サービス創造グループを目指すNTTのデジタルサイネージの取組み」という題で講演を行った。

 宇治氏は「デジタルサイネージは世界中に普及し、エレベータの中や商店の看板をはじめ、今や至るところで見られるようになった」と冒頭で述べた。
 同氏は「ネットの広告市場は増えているにも関わらず、広告市場がトータルで7兆円規模から全く成長していないことは大きな課題だ」と指摘。デジタルサイネージが広告市場における新しい需要を生み出すことに、大きな期待を寄せていると話した。

 続けてデジタルサイネージのこれからについて解説。「バーチャル(仮想)世界で得た様々な情報を、逐次リアル(現実)世界の広告に反映できれば、消費者ごとに対応したアプローチが可能になるだろう」とした。
 具体例として、宇治氏はNTTにおけるデジタルサイネージの取り組みを紹介。センサー技術と携帯電話が持つ発信履歴などを利用することで、サイネージの前にいる人物を、購買履歴・趣向なども併せて感知・検索できる技術を発表した。
 この技術により発展させれば、顧客の持つ携帯電話とのデータ通信により、サイネージの画像をより最適なものに切り替え、常にユーザの関心度に合わせた広告内容を発信することで、商品購入へ導くことができる。

 今後は、より精度の高い技術を開発し、広告主、ロケオーナー、システムメーカーにとって、収益性の高い魅力的な事業モデルを展開することで広告市場の規模拡大を図り、Win‐Winの関係を築いていきたいとした。

2日目のパネルディスカッションの様子。
左から中村氏、谷脇氏、村上氏。
デジタルサイネージへの期待を各人とも述べていた
2日目のパネルディスカッションの様子。
左から中村氏、 谷脇氏、村上氏。
デジタルサイネージへの期待を各人とも述べていた
 2日目は「デジタルサイネージと新しい都市空間市場の創出」を題材にパネルディスカッションが行われた。デジタルサイネージ産業が抱える課題の解決と新市場の創設などを目的とした産学から有志が集まった「デジタルサイネージコンソーシアム」の理事長、中村伊知哉氏をモデレータとして、経済産業省商務情報政策局の村上敬亮氏、総務省情報通信国際戦略局の谷脇康彦氏をパネリストに迎えた。

 中村氏は、「日本のデジタルサイネージ市場は現在ハード・ソフトを併せて650億円だが、2015年までに1兆円の市場にしていくことをコンソーシアムでは目標にしている」と理事長の立場からデジタルサイネージのこれからについて抱負を語った。同氏の言う「市場」とはディスプレイのメーカー、ネットワーク・通信業界、コンテンツや広告業界の3つ。

 中村氏は「高精度・超薄型のディスプレイの開発をさかんに行い、光通信やADSLなどの高度な通信網を全国的に普及させ、世界中から注目されるユニークなコンテンツを創造する、といったデジタルサイネージに必要な市場が3つとも揃っているのは、世界中でも日本ぐらいだ」として、日本がいかにデジタルサイネージを育てる土壌に適しているかを強調。
 実際に日本が世界に先駆けている例として、電子マネーを利用することで、サイネージで発信された広告にある商品を手元の携帯端末で決済するシステムを紹介し、日本が持つ可能性の高さを示した。

 同氏は「ハード面での技術開発はすでに行われているものの、最終的にサイネージが発展するかどうかは3つの市場のうちでも特にソフトを担うコンテンツ業界にかかっている。世界から見ても強い力を持つ日本のコンテンツ業界が、サイネージ向けのコンテンツの開発にどうやったら注力するようになるかが大きな課題」とし、デジタルコンソーシアムとしても全力で取り組んでいきたいと抱負を語った。

 経産省の村上氏は「デジタルサイネージを用いて、特定の地域のみに向けた情報をリアルなオブジェクトと関連付けてマッシュアップする仕掛けをつくりたい」とした。
 同氏は六本木にある「国立新美術館」と「東京ミッドタウン」「六本木ヒルズ」といった美術館のある三か所をネットワークで結ぶことを提案。六本木の駅から歩道に上がると、六本木エリアにいるときのみ限定でワンセグに美術館情報が流れるといった、デジタルサイネージとモバイルの連動を例に挙げた。

 村上氏は「『人』を動かさないと『お金』に結びつかない。情報だけではなく、人の行動にICTが届けばその流れが見えてくる。原理はものすごく簡単で難しいことをしているわけではないが、情報をどういう形で提供すれば人の行動に連動するかを考慮して、街の空間をIT化していきたい」とした。

満員となった講演会場の様子。デジタルサイネージに対す
る関心の高さがうかがえる
満員となった講演会場の様子。デジタルサイネージに対す
る関心の高さがうかがえる
 一方、総務省の谷脇氏は今年6月初めに総務省が出した、「スマート・ユビキタスネット社会実現戦略」に基づいて説明した。

 谷脇氏は「日本は携帯大国。加入人数は1億人を超え、普及率も9割近くになる。そういったなかで、モバイルビジネスが付加価値を高めていく手段の1つとして、デジタルサイネージとの連携も答えとして言える」と述べた。
 6月初めに総務省は「スマート・ユビキタスネット社会実現戦略」について触れた「ICTビジョン懇談会報告書」という報告書を出している。従来のユビキタスネットと比べてよりユーザの訴求にあったICTを「スマート・ユビキタスネット」と呼び、それを利用する社会のことを「スマート・ユビキタスネット社会」という。
 同報告書では「ユビキタスタウン構想」を打ち出しており、デジタルサイネージを含むユビキタス技術を適用した「安心・安全なまちづくり」を提案している。谷脇氏は、「デジタルサイネージを使えば、緊急時にサイネージで避難経路を案内することも、可能になる」と説明した。

 また、同氏はデジタルサイネージ向けのコンテンツの制作から配信するためのネットワーク、表示するためのディスプレイに至るまで、一括的に整備促進をしていくような特区を作る方針を打ち出すことを示唆。
 「デジタルコンテンツは当然ながら配信経路を問わない。デジタルサイネージの業界にも、放送のネットワークを通じて街頭のディスプレイへ配信させたり、通信のネットワークを通じて携帯電話に表示されるというような、コンテンツのワンソース・マルチユースが大切になってくる」と話した。

 しかし、同時に日本の情報関連、ICT関連の法律をもう少し、「通信」「放送」という“くくり”を弱くして、新しいビジネスを起こしやすくすることが必要であるとし、来年には法案を国会に提出するよう準備を進めている段階であることも示した。

 最後に谷脇氏はグローバル戦略について触れた。総務省がデジタルサイネージに力を入れているのは、こういった技術をどんどん海外に運び、その国で応用してもらう目的があるためだ。「アジアやアフリカなどに、こういった日本の技術を展開していくことを支援していかなければならない」と語った。

 今回のイベントは「デジタルサイネージ」を対象とした国内唯一の展示会とセミナーとして、各企業が各々の技術を紹介し、また産官学のそれぞれの見解を述べたことが評価できる。中村氏が「我々のすべきことはデジタルサイネージを普及させることで、ユーザの不安を取り除くことだ」とも語ったように、まだまだデジタルサイネージが認知されていない部分が世間的には大きい。こういったイベントが少しでもその“不安”を取り除き、普及につながることを期待したい。


デジタルサイネージコンソーシアムのホームページはこちら

ICTビジョン懇談会報告書についてはこちら

谷脇康彦氏「ICT産業の国際競争力を強化する必要性とは」インタビュー記事はこちら

「無線通信サービスの最新動向と経済効果を官民が報告」セミナーレポートはこちら

「『平成20年度第2回関東テレコム講演会』が開催」セミナーレポートはこちら


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



注釈

*:ユビキタスタウン構想
「ユビキタス特区」事業等より、地域コミュニティにユビキタス関連技術を集中的に投入し、地域の特性を活かした安心・安全な街づくりを目指すという構想。


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