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公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
は“個人の意識”
(動画あり)

セミナーレポート
内部統制の意義について新日本有限責任監査法人が講演

 新日本有限責任監査法人は2009年5月28日、「事例に基づく会社法対応の内部統制構築の考え方と実務的対応」セミナーを開催した。

 会社法で求められている「株式会社の業務の適正を保つ体制」=業務全般の内部統制をどう構築するかに主眼を置いたこのセミナーは、2006年秋の初回以来すでに約30回を超える開催回数を数え、いずれも満席になったという。内部統制に対する迷いや悩みを多くの企業が今なお抱えている現状を反映するかのように、今回も大手企業の管理部門担当者を中心に聴講者が大勢詰めかけた。

約30回の開催回数を数えるこのセミナーは今回も満席となった
約30回の開催回数を数えるこのセミナーは今回も満席となった
 第1部と第2部の講師を務めた同法人CSR推進部長の大久保和孝氏はまず、なぜ今、企業にとって内部統制が必要なのかということについて、自身の具体的な経験も踏まえて説明。もはや内部統制システムを構築することは、法規制があるから行うというものではなく、企業の存続のためには不可欠な取り組みであり、取締役全員が当事者意識をもって取り組むべきであることを指摘した。

 同氏はまた「内部統制システムを整備することは、ともすれば細かなルールや規則などの形式的用件を整備することに関心が行く傾向がある」と言及している。テクニカルな対応ばかり行うのではなく、もう一度内部統制の本質に立ち返ることで、何のために取り組むべきなのかという原点を見つめ直すことの重要性を力説した。

 さらに大久保氏は、大和銀行株主代表訴訟の判決文などの事例を引用しながら、会社法が求めている内部統制構築のポイントは不正を皆無にすることではなく、不正が起きにくい仕組み・プロセスを構築することにあることを説明。単純に法令遵守の徹底を図ろうとするなどの目的と手段の混同に対して注意を喚起した。

「激変する社会環境に対応できる人材の育成こそ内部統制の意義」と説く大久保和孝氏
「激変する社会環境に対応できる人材の育成こそ内部統制の意義」と説く大久保和孝氏
 なお、構築されるべき内部統制の仕組みは「身の丈にあった取り組みが不可欠」であることを指摘。内部統制の整備はそのレベルが評価されるのではなく、一度決めたことをきちんと守っているかどうかが重要であり、ステップバイステップで取り組むことで確実に実行できるようアドバイスを加えている。

 さらに、近年経済社会の環境と人々の価値観が急激に変化していることに触れ、そうした急変に対し柔軟かつ敏感に対応できる人材が、今まさに経営トップから現場まで全ての役職員において必要とされていることを強調した。内部統制を機能させ実効性を高めていくためには、このようなセンシティブな人材を1人でも多く育成することが鍵であり、日本的な組織風土や慣習においては特に「自社における意思決定メカニズムに即した形で、内部統制システムを整備することが必要だ」としている。

 具体的には、「社会と第一義的に接点をもつ現場が、社会に対してセンシティブになり、そこから提案されたものを組織のリーダーが受け止め、具体的な対応を図ることで現場へフィードバックしていく仕組み・プロセスを作ることであり、それを結果として文書化するに過ぎない」と説明。そして、そのための人材を育成することで初めて、内部統制の有効性や実効性を高めることができることを説いた。

内部統制のPDCAサイクル構築について具体的手法と意義を語る戒田信賢氏
内部統制のPDCAサイクル構築について具体的手法と意義を語る戒田信賢氏
 セミナーの第3部では、同法人アドバイザリーサービス部の戒田信賢(かいだのぶやす)氏が登壇し、内部統制を構築するうえでの実務とそのポイントを紹介した。

 戒田氏は経営計画の明確化、リスクの洗い出し及び評価、リスク対応計画の策定・実行、経営計画の進捗管理からなる内部統制のPDCAサイクル構築とその具体的手法を解説。経営目標の達成という観点から、その意義を「制度要件や社会的要請などで外部から強制されるのではなく、内部から自発的にリスクマネジメントを行うことで、組織構成員の行動を方向づけ、推進することにある」と位置付けた。

内部統制による経営管理プロセス
内部統制による経営管理プロセス
(クリックすると拡大します)
 内部統制では完璧な法令遵守が求められ、しかもそれを実現するために隙のない厳格な管理体制の構築が義務付けられているというイメージが根強い。そのため多くの企業は内部統制への対応に莫大な労力と時間、費用を割いている。

 そうした誤解から解放され、個々の会社がそれぞれ適切な規模の内部統制を構築すること。また結果ではなくプロセスを重視することで、激変する社会環境にも柔軟かつ敏感に対応できる企業と人材の育成に内部統制を役立てられることを、具体的手法を解説しながら満席の聴講者へ訴える形でこのセミナーは終了した。


新日本有限責任監査法人のホームページはこちら

大久保和孝氏「激変する時代を生き抜くための企業活動とは」インタビュー記事はこちら

「新日本有限責任監査法人『理念経営の実践とCSR 2009』セミナーを開催」セミナーレポートはこちら



※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



注釈

*:大和銀行株主代表訴訟の判決文
大和銀行ニューヨーク支店における巨額損失事件に端を発した株主代表訴訟について、2000年9月に大阪地方裁判所で下った判決文。その中で、「リスク管理体制の大綱については、取締役会で決定する」「取締役は、代表取締役及び業務担当取締役がリスク管理体制を構築すべき義務を履行しているか否かを監視する義務を負う」と、内部統制の構築とその監督責任が経営者にあることを明文化したことが、日本における内部統制の始まりと言われている。


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