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公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
は“個人の意識”
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セミナーレポート
無線通信サービスの最新動向と経済効果を官民が報告

 地上波TVのデジタル化を筆頭として、新世代の無線技術を用いた情報通信サービスは、本格普及に向けて今まさに開発や実験、事業展開が活発化し始めている。こうした業界の動きは、不況下にある日本経済にどのような影響を及ぼすのか――。

 2009年5月12~13日にパシフィコ横浜で開催された展示会・セミナーイベント「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2009」では、無線通信技術の研究開発を行う企業・大学・政府機関が国内外から一堂に集結。セミナープログラムの1つとして「広がりを見せる~ワイヤレスサービスの開発動向」が催され、総務省および放送関連の各企業・業界団体から、新世代無線通信サービス普及への取り組みが積極的に披露された。

 セミナーの冒頭では、各地のケーブルテレビ(以下CATV)事業者を中心に2008年6月から順次運用が始まっている、モバイルWiMAX(ワイマックス)*1をベースにした地域密着型の無線ブロードバンドサービス「地域WiMAX」について、地域WiMAX推進協議会幹事・ケーブルテレビ無線利活用促進協議会理事の金辺重彦氏が講演を行った。

CATV事業者が地域WiMAXで実現可能な地域密着型サービスの展望を説明する金辺重彦氏
CATV事業者が地域WiMAXで実現可能な地域密着型サービスの展望を説明する金辺重彦氏
 CATV事業者がモバイルWiMAXを利用する意義について金辺氏は、「地元の路地裏まで取材対象にしたローカルニュースを提供するなど、地域密着型サービスを最も得意とするCATV事業者なら、時・場所・人を選ばず利用できるモバイルWiMAXのユビキタスな特性を、地域内のデジタルデバイド*2解消や公共の福祉サービス増進に活用できる」ことにあると訴える。

 その具体案として金辺氏は、回線工事が困難な高齢者宅に対し操作が簡単なタッチパネルPCを通じて安否確認や遠隔医療などを行う、GPS搭載WiMAX端末と無線監視カメラを組み合わせて学校や保護者に子供の映像・位置情報を通知する…といった、地域における医療や介護、防犯サービスのユビキタス化構想を提示した。

 モバイル通信の分野からは、2011年7月24日のアナログTV放送停波により生じる空き周波数を活用した、次世代の携帯端末向けコンテンツ配信サービス「ISDB-Tmm」の事業化を進める、株式会社マルチメディア放送社長の石川昌行氏が登壇した。

「ユーザに意識させない携帯端末向けコンテンツ配信」ISDB-Tmmの世界を説く石川昌行氏
「ユーザに意識させない携帯端末向けコンテンツ配信」ISDB-Tmmの世界を説く石川昌行氏
 同氏はISDB-Tmmに実装予定の技術について、映像や音声だけに留まらない多彩なコンテンツをバックグラウンドで自動的に携帯端末へ蓄積する「ファイルキャスティング」と、ユーザの嗜好や行動パターンに応じてコンテンツを選別する「レコメンド技術」を組み合わせる方針を説明。「ユーザがまったく意識せずに“いつでも”“どこでも”“自分が欲しいコンテンツを”手のひらの中で楽しむことができる」という、ISDB-Tmmが目指す新たなコンテンツ配信サービスの世界を説いた。

 放送・通信事業の監督官庁である総務省からは、情報流通行政局 地上放送課課長補佐の後藤祐介氏が、地上デジタルTV放送について海外動向を含めた最新の推進状況を報告。地上波を直接受信する世帯が全体の1割程度にも関わらず、クーポンプログラム*3に対する申し込みが予算の上限(約13.4億ドル、約3400万枚分)を上回ったことなどを理由に、デジタル放送移行期限を2009年2月17日から6月12日まで延期した米国のケースを例示した。

 後藤氏は「米国のように地上波を直接受信する世帯が少ない国でも、移行直前になってデジタル放送を受信できない人が生まれ、デジタル化延期を余儀なくされた。米国とは対照的に人口の9割が地上波を直接受信している日本では、移行時に米国以上の混乱が予想されるため、移行まで残り2年を切った今、事前の入念な準備が必要とされている」と述べ、高齢者・障害者を主な対象とした周知広報や機器購入支援、送受信施設改修支援など、デジタル放送への完全移行に向けた活動に対し理解を求めている。

 そして情報通信国際戦略局 情報通信政策課長の谷脇康彦氏は、「ICTと経済再生」と題し、情報通信産業がもたらす経済成長効果と、総務省が取り組んでいる経済危機対策について言及した。

情報通信産業による高い経済効果が景気に左右されないことをデータで示す谷脇康彦氏
情報通信産業による高い経済効果が景気に左右されないことをデータで示す谷脇康彦氏
 「情報通信白書」(平成19年度版および平成20年度版)によれば、日本における情報通信産業の市場規模は約95兆円、全体の1割近くを占めている。しかも経済成長に対する情報通信産業の貢献度は、景気の良し悪しに関わらず常に上昇。都道府県別のデータにおいても全都道府県でプラスの効果を示し、県内総生産の成長に情報通信産業が5割以上寄与している都道府県は35を数えるという。

 しかしながら日本の設備投資における情報関連投資の比率が米国に対し低く、とくに景気低迷期には米国と異なり顕著に下がっている。谷脇氏はこれらのデータを分析し、「日本の情報関連投資比率を米国並みに引き上げれば、日本の経済成長率を約1%底上げすることが可能」と指摘。「景気が悪い時こそ情報通信産業の出番」と強調した。

 最後に同氏は、地上デジタルTV放送への完全移行と、それに伴うISDB-Tmmなど新事業の創出、地域WiMAXなどによるユビキタスタウンの実現といった、無線通信サービスの発展に向けた様々な取り組みを紹介。「情報通信産業は、経済成長を支える大きなエンジン。そういった産業に対して、私たちも今回の経済危機対策のような形で、どんどん風を送っていきたい」と語り、同氏の講演、そしてこの「広がりを見せる~ワイヤレスサービスの開発動向」セミナーを終えた。


「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2009」のホームページはこちら

谷脇康彦氏「ICT産業の国際競争力を強化する必要性とは」インタビュー記事はこちら

「『デジタルサイネージジャパン2009』が開催」セミナーレポートはこちら

「『平成20年度第2回関東テレコム講演会』が開催」セミナーレポートはこちら



※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



注釈

*1:モバイルWiMAX(ワイマックス)
「WiMAX(Worldwide interoperability for Microwave Access)」と呼ばれる次世代の無線LAN規格「IEEE 802.16-2004」をベースとした、移動通信向け無線通信規格「IEEE 802.16e」のこと。データ転送速度は最高値約75Mbps、実効速度10~20Mbpsで、120km/hでの移動中も通信することが可能。通信範囲は半径約1~3kmを想定している。全国展開の通信事業者では、UQコミュニケーションズが2009年2月26日から、モバイルWiMAXサービスの運用を開始した。

*2:デジタルデバイド
情報通信技術に関する知識・経験の有無、居住区域や居住者の世代ごとに生じる回線工事の物理的・精神的難易度、貧富の差などにより、得られる情報の質や量に格差が生じること。また、情報通信技術の発達により、待遇や貧富に格差が生じることも指す。

*3:クーポンプログラム
デジタル放送をアナログ受信機で見るチューナー購入のためのクーポン(1枚40ドル、有効期間90日)を1世帯あたり2枚まで支給するプログラム。所得水準に関係なく、地上波のみ受信する世帯が支給の対象となる。



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