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「グリーンICTの現状と展望」シンポジウムが開催

 電子情報通信学会 東京支部は2009年4月2日、機械振興会館にて「グリーンICTの現状と展望」シンポジウムを開催した。


 同学会は、1911(明治44)年5月に当時の逓信省電気試験所内で設立された「第2部研究会」をルーツとし、情報通信やエレクトロニクスなどの研究・知識交換・情報発信を行う団体。現在は電子・情報・通信の研究技術者を中心に約3万6000人もの会員を持つ、日本有数の大規模学会に成長している。

 今回のシンポジウムでは、近年のインターネット上を流れる情報量の急激な拡大により、経済産業省の試算では2006年に対し、2025年には国内が5.2倍、全世界では9.4倍まで消費電力が増加すると言われている情報通信技術(ICT)に着目。ハードウェアそのものの省エネルギー化を行う、または資源や物流・移動などの代替手段となることで、むしろ環境負荷低減に貢献していく「グリーンICT」の現状や研究開発の動向、さらには評価手法の国際標準化に向けたITU-Tの取り組みについて、講演が行われた。

グリーンICTへの期待を語る月尾嘉男氏
グリーンICTへの期待を語る月尾嘉男氏
 東京大学名誉教授の月尾嘉男氏はビデオによる特別講演「環境問題に挑戦するICT」の中で、「地球46億年の歴史において誕生からわずか600万年の人類が、自然から鉱物資源や化石燃料、森林・湿原・生物・淡水資源など、ありとあらゆる資源を収奪してきた結果、それらの資源が枯渇しつつあるとともに、18世紀半ば以降から炭酸ガスが増大し大気温度は急速に上昇。異常気象による災害も激増している」と警告した。

 そのうえで、情報と環境先進地域としての地位をいち早く確立した北欧4カ国を成功例として紹介。「生活水準と経済活動をこれまで通り発展させながら、資源消費を抑え環境問題を解決に導くのに、グリーンICTが大きな役割を果たす」と期待を込めた。

 富士通研究所基盤技術研究所の矢野映氏は月尾氏に続き、地方自治体への電子決済システム導入によるCO2排出量削減や、大手コンビニエンスストアの物流トラック運行管理システムによるエコ&安全ドライブ推進の事例を紹介。「ICT産業が排出するCO2は全体のうち2%のボリュームだが、他分野が排出する残り98%のCO2を、ICTによって削減することができる」と、グリーンICTのポテンシャルを強調している。

ネットワーク省電力化の必要性を説く尾家祐二氏
ネットワーク省電力化の必要性を説く尾家祐二氏
 その一方で、九州工業大学大学院・情報工学研究院の尾家祐二氏は「YouTubeなどビデオストリーミングの一般化に伴い、インターネットにおけるトラフィック量、そしてネットワーク機器の電力消費量は年々増加している」と指摘する。

 また尾家氏は、動画通信サービスの普及を指摘し、米オバマ大統領就任式の際には1日で700万件以上のアクセスが発生し、大量の動画のトラフィック量がインターネット上に流れたことにも着目している。

 2つのパスを持つネットワーク上において、トラフィック量が少ない時には転送経路を分散して両パスとも省電力状態を維持。トラフィック量が急増した場合でも一方のパスに転送経路を集約し、もう片方を省電力状態とする…という、トラフィック技術の研究モデルを紹介し、きめ細かな省電力制御を可能としたネットワークの必要性を説いた。

 最後に、ITU-Tにおいて2008年7月に設立された「ICTと気候変動フォーカスグループ」の副議長を務めた、NTT情報流通基盤総合研究所の染村庸氏が、同グループ設立の経緯と、これまでの活動内容を報告した。

 染村氏はまず、「これまで、ICT機器そのものがもたらす環境負荷を直接的に低減する“Green of ICT”においても、ICTを代替手段として活用し環境負荷を間接的に低減する“Green by ICT”においても、これらを定量的に算出する国際標準が存在しなかった」と説明。同フォーカスグループ設立の主目的が、ICTの利活用によるCO2排出削減量を定量的に算出する手法の国際標準化にあることを語った。

Green of ICT”及び“Green by ICT”評価手法の国際標準化に向けた活動を報告する染村庸氏
Green of ICT”及び“Green by ICT”評価手法の国際標準化に向けた活動を報告する染村庸氏
 さらに、電力や紙の消費、人・物の移動などをICTの活用によって代替した場合に得られる、エネルギー消費削減効果量の算出式を例示。そして「ICTと気候変動は関心が高いゆえに利益が複雑に絡む可能性があるため、論理性・透明性・公平性などを考慮し、各国間での比較可能性を十分に備えた国際標準を今後も提言していかなければならない」と、同フォーカスグループにおける活動を締めくくった。


 ICT機器そのものの省電力化を図る“Green of ICT”と、既存のエネルギーや移動手段など環境負荷の発生要因をICTに置き換える“Green by ICT”。地球温暖化による気候変動と被害が顕著となり、しかも放置すればさらなる悪化は確実と言われている今、“Green of ICT”と“Green by ICT”のいずれにも、個々の企業だけではなく世界中が連携して取り組む必要に迫られていることを、聴講者に強く訴えかけたという面で非常に意義深いシンポジウムとなった。


電子情報通信学会のホームページはこちら



※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



注釈

*:ITU-T
放送・通信などの国際標準を策定する国際電気通信連合(International Telecommunication Union)のうち、電気通信部門(Telecommunication Standardization Sector)の国際標準を策定している機関。国連組織のひとつ。



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