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公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
は“個人の意識”
(動画あり)

「岐路に立つテレビ ピンチとチャンスにどう対峙するのか?」が開催

 公共放送としての役割を研究調査する放送研究機関「NHK放送文化研究所」は、4月16日、春のシンポジウムとして「岐路に立つテレビ ピンチとチャンスにどう対峙するのか?」を港区のメルパルクホールで開催した。
 近年、TV業界で取りざたされている「広告費の落ち込み」「地上デジタル放送の普及の遅れ」などの問題について、民放の代表者、総務省官僚ほか、慶応義塾大学教授の竹中平蔵氏や、作家の堺屋太一氏を招き、白熱した議論を交わした。


パネリストら。配布したパンフレットに記載されたQRコードを読み込み会場からの質問を集めるという、新しい技術をほかの民放に先駆けて取り入れるNHKらしい試みもあった
パネリストら。配布したパンフレットに記載されたQRコードを読み込み会場からの質問を集めるという、新しい技術をほかの民放に先駆けて取り入れるNHKらしい試みもあった
 ここ数年、TV向けの広告費が大幅に落ち込んでいる。民放の主な収入源である広告費の落ち込みは民放各局の財政を圧迫している。
 2008年度の各民放の大幅な減収について、竹中氏は「テレビ業界の構造的な問題」と断言。「コンテンツ制作能力の低下に国民が不満を持っているにも関わらず、いまだにTV局の社員の給料は民間平均と比べて高く、高コストの構造へ切り込み、コンテンツ制作能力を上げる努力が足りない」とし、結果としてTV業界のコンテンツ価値やメディアとしての訴求力の低下、ひいては広告費の落ち込みを招いているとした。

 TVの広告費減少というと、もう1つ大きな問題点がある。2011年に行われるアナログ波の停波だ。地上デジタル放送の移行を2年後に控えた現在、地上デジタルTVの普及率はようやく50%に届く程度で、政府が目標としていたパーセンテージには及んでいない。普及率が低いままデジタル化への移行を断行した場合、TVメディアの広告価値はさらに下落する恐れもある。

 総務省情報流通行政局長の山川鉄郎(てつお)氏は、普及率を上げるための補助金などの政策や、電波を受信しにくい山間部などへの対応などについて説明をした。光通信や衛星放送などを使い国民のほぼ100%にデジタル波を普及させる計画だ。
 しかしデジタル化に伴う工事の集中に、民間事業者が耐えられるかなどの課題点もある。会場からは「政策を出すのが遅いのでは?」という質問もあったが、「2008年からやればもう少しスムーズに普及していたという意見もあるが、国がお金を出す支援策そのものが経済活動の基本から外れる」と山川氏は反論し「国からは、最小限の手を打つのが原則」とした。

 また「アナログのシステム・機器が世界の市場から消えているため、アナログ放送を続けることは、運用の不安定さにつながる。放送が果たす公共性を考えれば、これから不安定さが増大するだろうアナログシステムは避けるべき」と、もはやデジタル化が世界的な波であることを強調した。
 堺屋氏は「視聴者もお金を出してデジタル機器を買うのに、視聴者側にどういう利益があるかTV業界では全く語られていない。『国が決めたのだからデジタル化しなさい』ではコンセンサスを得られない。国民を説得するためには積極的に国民にこういうメリットがあると伝える発想が必要」として、ここでもTV側の訴求力に問題があるのでは、という疑問を投げかけた。

「地上デジタル放送は優れた道具。使いこなして地域の文化を掘り起こす努力をしてほしい」(総務省・山川氏)
「地上デジタル放送は優れた道具。使いこなして地域の文化を掘り起こす努力をしてほしい」(総務省・山川氏)
 広告費低下も地上デジタル波の普及遅れも、テレビ業界の視聴者への訴求力低下による視聴者離れが要因としてうかがえる。そして視聴者を戻す鍵は、近年著しい低下が叫ばれている「コンテンツ制作力」にあるという認識も、パネリスト間で一致した。
 これについて、キー局が制作した放送をローカル局がそのまま流す中央集権的・企画大量生産的な放送形態に問題があるとして、視聴者に効果的な訴求をするためには、細かいニーズを汲み取った、コンテンツの多様少量生産に移行する必要があるという意見が出された。
 例えばローカル局が地方の文化発信や情報発信など、地域の活性化に貢献するコンテンツの制作を担うといった役割分担などが、具体的な手法として考えられる。
 具体的には北海道にあるテレビ朝日系列のローカル局・北海道テレビは「アジアに雪を降らせる」という雪国・北海道ならではの企画・番組を近隣アジアに放送したことで、北海道のイメージを海外に定着させ、観光客を呼び込むことに成功している。
 同局専務理事の樋泉(といずみ)実氏は「地方の文化を掘り起こすような情報発信がこれからは必要」と語る。このように、今後は細分化された国民の多様なニーズに、逐一対応できるようなコンテンツの作成がカギになるだろう。

 今回のシンポジウムでは、業界構造について様々な批判が飛び交ったものの、古い体質が依然として残るテレビ業界が、あえてこのような批判を受け入れた意義は大きいと思われる。未だにマスへ強力な影響力を持つTV局だからこそ、今後も積極的に議論を重ね、問題点の抽出と急速な改革に取り組んで欲しい。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



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