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情報ネットワーク法研究会でアラブ首長国連邦の研究者が講演

 情報ネットワーク法学会は3月24日、千代田区にある北海道大学東京オフィスにて、「第4回情報ネットワーク法研究会」を行った。講師にアラブ首長国連邦(U.A.E.)の内務省刑事法顧問のモハメド・エラミン・エルブシュラ・マゴウプ氏(以下、エルブシュラ氏)を迎え、主にイスラム圏を中心としたサイバー犯罪の現状、対策について、活発な議論が交わされた。


研究を発表するエルブシュラ氏
研究を発表するエルブシュラ氏
 アジアやアフリカ、ヨーロッパなど、100件以上もの犯罪例を分析しているエルブシュラ氏は「今日のサイバー犯罪の犯人は、高度な情報技術を駆使しており、それが犯罪の発見・摘発を遅らせている」と話した。

 同氏は調査の方法として、1.サイバー犯罪の統計的なデータを収集し、傾向を分析する。2.これまでの研究、文献を参考にする。3.その種類より犯罪者の手口を理解して対策を検討する、の主に3点を挙げている。また、サイバー犯罪の種類と世界各国における法による規制を示した上で、グローバルな視点での対策の必要性を示唆した。

 同氏によると、犯罪者は犯罪活動を金融機関、国家の安全保障から個人情報の領域といった範囲にまで広げている。ところが警察官、裁判官は、犯罪者の情報技術に対する知識や高度な技術的手法に対して後れを取っている。

 多くの捜査官、警察官は、従来の犯罪と同様の刑事手続きや証拠開示の方法を、サイバー犯罪に対しても適用しているため、結果的に捜査を長引かせてしまっているのである。  「電子的な犯罪に対応するように法律を全面的に改正しない限り、近い将来に司法システムが時代にそぐわないものになってしまうだろう」と同氏は指摘した。

 またエルブシュラ氏は「このように急増するサイバー犯罪に対して、多くの国々で対策が遅れているのは、各国の立法者が、制定されている伝統的な刑事法をいまだに『適用可能』と考えているからだ」としている。

 実際、伝統的な刑事法を重要視している国で、サイバー犯罪に対しての予防・戦略などが失敗していることを考慮すれば、このような伝統的な刑事法を重視する考えが間違っていることは明らかだ。

 次に同氏はイスラム圏での犯罪への対応について言及した。 サイバー犯罪は、現在、イスラム法に規定はないが、裁判官が客観的に判断して自身の裁量で処罰する、Taazirという犯罪に位置付けられている。

 イスラム法は立法過程が複雑なため柔軟な対応ができず、イスラム圏におけるサイバー犯罪の対策の遅れになっている、とエルブシュラ氏は警鐘を鳴らす。将来的にはサイバー犯罪が重罪に位置付けられる時が来るかもしれないが、それにはサイバー犯罪の本質をイスラムの教え、稟議、信仰といったものにまで浸透させる必要があるとした。

研究発表を聞く参加者
研究発表を聞く参加者
 同氏は途上国や先進国の法制度を比較することでサイバー犯罪対策の格差についても調査を進めている。途上国の場合、対策と刑事司法システムは、先進国よりも深刻な問題を抱えている。対策に必要な予算が制限される上に、高度な技術や知識においても遅れをとっているからだ。また先進国は、違法アクセスに焦点をおいた刑事立法が積極的に行われており、対策への進展につながっている。しかし特に途上国では、サイバー犯罪への技術・認識への低さから、違法アクセスに焦点を絞った立法が行われていないという問題も浮き彫りになった。

 さらに、中東での顕著な問題として被害が子供、女性といった社会的な弱者に集中する、というような地域ごとに抱えている問題や、途上国と先進国との格差を埋めるための国際的な共同体制構築の必要性、といったグローバルな視点から見た場合に浮き上がってくる様々な問題・課題についても指摘した。

 エルブシュラ氏は「近い将来においてあらゆる犯罪がサイバー犯罪につながる」と話す。これはIT技術が将来的に、世界中に浸透するという予測に基づくものだ。 また、世界にIT技術が広まった際には「国際法における調和」が問題として浮上してくるだろうと話した。

 今回の研究発表では、日本にいながらにして、普段なかなか触れることのできないイスラム圏および世界各国でのサイバー犯罪の考え方に触れることができた点が大きい。様々な文化や背景を理解して対応していく必要性を感じた講演であった。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



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