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公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
は“個人の意識”
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公開シンポジウム「医療情報の標準化と医療IT政策を考える」が開催

 厚生労働省内にある研究チーム、厚生労働科学研究班と東京大学政策ビジョン研究センターは千代田区にある九段会館で公開シンポジウム「医療情報の標準化と医療IT政策を考える」を開催した。医療の情報化が叫ばれる中、医療情報を活用するための「標準化」についてと、医療のIT化における政策についての2つが議題に上がった。


100人以上が入る会場は満席で、医療情報化への関心の強さが伺えた
100人以上が入る会場は満席で、医療情報化への
関心の強さが伺えた
 電子カルテに患者の症状などを記載する際、用語や記述の形式・構造などが標準化されていないと、相互運用性に問題が生じる可能性がある。たとえば一定の地域内の病院による医療連携で、診療所と地域の中核となる病院で電子カルテを共有する場合、診療所ではAの欄に患者名、中核病院ではBの欄に患者名というように、電子カルテの執筆構造が統一されていないと、自動的に情報をPC内に蓄積できないばかりか、誤診の原因にもなりかねない。
 厚生労働省医政局研究開発振興課医療機器・情報室長の冨澤一郎氏は「相互運用性の確保・EHR推進のために標準化は重要な課題である」とした一方、「厚生労働省の規格も決めたいと思っている」と標準化に向けて政府側も意欲的である姿勢を見せた。

IT政策について議論が白熱した
IT政策について議論が白熱した
 国際医療福祉大学大学院長の開原成允氏は、IT化が促進された際に、一番の利点の1つとされている診療情報のデータベース活用について述べた。

 診療情報のデータベースとは、患者が医療機関で診療を受けた際や、メタボリックシンドローム検診などの特定検診が行われた際に医師によって書き込まれる病状や、レセプトのオンライン化によって得られる診療報酬の請求内容などをネットワーク連携することで統合・体系化し、「一人物の継続的な健康情報」として集められた情報を指す。

 このデータベースは、個人的なレベルで考えると、薬剤を処方する際に服薬の履歴を確認することで重大な副作用を避けたり、緊急搬送された場合に基礎的な検査を最小限にできるなどの利点がある。社会的なレベルでも、医療の質的改善や疫学の研究、薬剤市販後の市場調査などにも役立つ“公的な資源”となる利点があるが、重大な個人情報であるために公的な運用に際しては詳細なルール設定が必要になってくる。
 開原氏は「データベース作成と同時に、利用ルールの確立が課題である」とし、データ利用のルールについて、特に国民全体とのコンセンサスを訴えた。

大江氏は、ほかに医療機関の情報連携や医療関連通知のIT対応を課題として挙げた
大江氏は、ほかに医療機関の情報連携や医療関連通知のIT対応を課題として挙げた
 ほかにも医療ITを推進するにあたり、IT化が現在進まない理由について、現場・政策など様々な角度からの提言がなされた。
 東京大学政策ビジョン研究センター長の森田朗氏は政策の課題に「財源不足、制度の不備、利用者の理解不足」という3つの問題点を挙げた。また東京大学大学院医学系研究科教授の大江和彦氏は、現場レベルにおけるIT導入への課題として、地域連携医療の担い手ながらIT化が進んでいない200床以下の病院への金銭面や技術面などの導入支援や、患者の生涯不変の個人番号の構築などを指摘。標準化という技術的な課題以外にも医療ITの全面的な導入には、解決すべき多くの問題点があることが浮き彫りになった。

 今回は、医療の情報活用における「標準化」という技術的な側面と、「IT推進政策」という社会的な側面の2方面からアプローチをしたシンポジウムになった。ITの普及には医療現場や政治、国民への幅広い理解を促進する必要があるため、今後もこのような提言が続けられることを望みたい。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



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