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公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
は“個人の意識”
(動画あり)

RIETIワークショップ「インセンティブ構造としての企業法」が開催

 経済産業研究所(RIETI)が主催するワークショップ「インセンティブ構造*1としての企業法~新しい日本のコーポレートガバナンスを考える~」が2月5日に開催された。


各分野の専門家により議論が交わされた
各分野の専門家により議論が交わされた
 RIETIとは中長期的な視野に立ち、ダイナミックかつ斬新な政策議論に取り組む政府系シンクタンク。今回は上記テーマで2007年4月から議論が重ねられてきたその成果をふまえ、大学教授や研究員、弁護士など会社法、金融商品取引法、倒産法、労働法、租税法といった各分野の専門家約30名が集まり、傍聴者を交えて研究発表および、ディスカッションが繰り広げられた。
成蹊大学法科大学院 宍戸善一教授成蹊大学法科大学院 宍戸善一教授
 「インセンティブ構造としての企業法」として、経営者・従業員間、および株主・債権者間といった利害関係者間に視点を定め、企業統治が円滑にされるための“最適な動機付け(権利・義務・報酬・規制など)の仕組み”としての企業法のあり方について議論された。
 まず総論として成蹊大学法科大学院の宍戸善一教授が「企業活動とは経営者・従業員・株主・債権者という4当事者間のインセンティブ構造で組み立てられるものである」と仮説を立て「4当事者間、また制度間においてそれらを促進・抑制し合うといった『補完性』という視点からの企業法が必要ではないか」と述べた。
左:早稲田大学商学学術院 宮島英昭教授
右:神戸大学大学院法学研究科 加藤貴仁准教授
左:早稲田大学商学学術院 宮島英昭教授
右:神戸大学大学院法学研究科 加藤貴仁准教授
 神戸大学大学院法学研究科の加藤貴仁准教授は、「株式持合*2 と利益供与禁止規定」と題し意見を発表。株式持合や総会屋といった“手段として株を保有する株主”と、株価上昇など会社法が想定する方法で利益を得る“純投資を目的とする株主(以下、純投資株主)”の違いを明確にした上で、純投資株主以外の株主権行使を制限することの意義を分析。
 利益供与規定は1981年の商法改正において総会屋の資金源を根絶することを目的に作られたが、総会屋自体の定義が困難なためその適用範囲は広く、会社運用の健全性を確保するためのものと理解されている。つまり先に挙げた株式持合にも適用できるのでは、と述べた。
 これに対し早稲田大学商学学術院の宮島英昭教授は「利益供与禁止規定で株式持合を規制するとは斬新」とコメント。「多様化する企業構造に対し、いかに単一のルールを作るかが課題だ」とした。

 省庁からは企業組織関連法制の改正に深く関わった経済産業省の中原裕彦氏が発表。法改正において重要視したのは「いかに組織が迅速かつ柔軟に経営資源の有効活用を行えるか、組織形態や資金調達手法というものを、伝統的な形態に縛られるのではなく、いかにバリエーションを設けられるかを目指した」と述べた。
 また、昨今社会問題になっている雇用問題に深く関わる議論として、アンダーソン・毛利・友常法律事務所の十市崇弁護士が解雇権濫用法理*3について「正規の従業員の保護を目的としている解雇権濫用法理は、経営者が正規社員を雇用するインセンティブを低下させるとともに、非正規雇用を拡大させる原因となっている」と述べた。これを受け中原氏も「経営資源だけでなく人的資源がどのような流動性をもちえるのか、法改正の立場からも今後議論の余地がある」と述べた。

 企業活動にダイレクトな影響を与える法に関し、このようなディスカッションがオープンな形で開かれることに重要な意義を感じさせるセミナーとなった。


経済産業研究所(RIETI)のホームページはこちら

「RIETI政策シンポジウム『世界経済危機下のイノベーション』が開催」セミナーレポートはこちら

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※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



注釈

*1:インセンティブ構造
例えば、経営者と従業員といった関係性の場合、労働と報酬という利害関係が成り立つように、それぞれの立場が生む要求や行動、またはそれを引き出すために有効な刺激などが機能して成り立つシステム。

*2:株式持合
複数の株式会社が、お互いに相手方の発行済株式を保有する状態。日本の株式保有構造のもっとも顕著な特徴であるといえる。

*3:解雇権濫用法理
労働契約法16条。解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする法理。



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