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公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
は“個人の意識”
(動画あり)

「シンポジウム「知の公共性をデザインする」が開催

 東京大学大学院情報学環と東京大学知の構造化センターは2009年1月29日、「知の公共性をデザインする 認知テクノロジーがひらく知の地平を問う」を東京大学本郷キャンパスの福武ホールで開催した。


シンポジウムの様子
シンポジウムの様子
   昨今ではITをベースにした分析プラットフォームと、メタデータ付与技術、デジタル・アーカイブの設計を活用して、知識・思想・芸術・メディア文化の研究に技術革新を起こす動きが注目されている。こうした認知テクノロジーが人間の意味世界や文化現象の解明、知識の刷新に対して、どのような役割を果たすのか、知のデジタルシフトはどのようになされるかについて、また、新しい公共知のあり方について、研究者、現場の専門家が意見を交換した。

 冒頭で、情報学環長の吉見俊哉氏が「WikipediaやYou Tubeなどの登場により、ネット社会、デジタル社会の中で私たちの情報環境は激変している。認知のベースになるもの自体が変化している中で、大学や知的な機関で一体何ができるのか、というのがこのシンポジウムのテーマである」と述べた。

 第1部の「認知テクノロジーとは何か?」では、初めに東京大学情報学環の石田英敬教授は「大きな枠で言うと、文字が人間の世界を整理し、20世紀以降はメディアが人間の描く文字というものを拡張してきた。そのような非常に大きな激動の20世紀を我々は生きてきた」とした。石田氏は「20世紀の半ばから文字がデジタルになる『知のデジタルシフト』が起こり、文字がテクノロジーの文字に書き換えられた。しかも経済では、デジタルな文字への書き換えが全面化している」と話した。
講演する美馬氏講演する美馬氏
 次に工学系研究科の美馬秀樹准教授が、構造や繋がりを単語視点で可視化する「MIMAサーチ」について説明した。美馬氏は教科書を例に挙げ、現状では科目ごとに縦割りとなっている教科書をMIMAサーチで関連づけることにより、「自動車」などの単語が各教科でどう掲載されているかがわかることを紹介。MIMAサーチが知識の関連を明確にし、学習や検索を効率的にするシステムであるという説明に対して、会場の参加者は熱心に耳を傾けていた。

 またNHK放送文化研究所の桜井均氏が、「アーカイブに支援されたテレビの『読み』の可能性」という題で講演。急速に進むNHKのアーカイブスのデジタル化とその使命について触れた。
 桜井氏は、「編集」装置を逆用したポンピドゥー・センターIRI開発の映像分析ソフト「Lignes de temps」を使ってドキュメンタリーを読み解き、アーカイブが単なる収集・保存するだけのものではなく、活用することによって新しいアーカイブの価値を生み出すことができることを実践した。

 第2部では「知識社会と知のネットワーク」という内容で、石田英敬研究室のリサーチ・アシスタントである谷島貫太氏が、東京大学大学院での事例を報告し、学生の理解をネットワークとして可視化するという、情報学環での取り組みを紹介した。また、日立システムアンドサービス執行役専務の眞木正喜氏が、企業知の可視化によって新たな価値創造に同社が取り組んでいる旨を説明した。
パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子
 第3部では「公共知の新しい環境を構想する」という題で、石田氏、美馬氏、桜井氏、眞木氏がパネルディスカッションを展開。大学、公共メディア、企業のそれぞれの立場から、公共知の新しい可能性についてディスカッションを行った。

 同シンポジウムでは、公共知や認知テクノロジーについて、大学、公共メディア、企業のそれぞれの視点で意見を交換することに意義があった。また、NHKのアーカイブや、MIMAサーチなど、テクノロジーを実践することによって参加者の理解を深めることに積極的だったことは評価できるのではないだろうか。


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※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



注釈

*:MIMAサーチ
美馬准教授を中心に開発された「知の構造」を可視化するシステム。入力されたすべての情報を最先端の自然言語処理技術により自動解析。語句を入れてサーチを開始すると、入力された情報を元にサーチ対象語句との関係性を点と線とでビジュアル的に表現する。



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