日弁連法務研究財団が“eサポート裁判の可能性”を議論:イベント・セミナーレポート:HH News & Reports:ハミングヘッズ

ITをもっと身近に。新しい形のネットメディア

- Home > コラム > イベント・セミナーレポート > 日弁連法務研究財団がeサポート裁判の可能性を議論
 コラムトップページ
 インタビュー記事 ▼
 イベント・セミナーレポート ▼
公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
は“個人の意識”
(動画あり)

日弁連法務研究財団が“eサポート裁判の可能性”を議論

 ITを使って裁判制度を国民に使いやすいものにする―。2009年1月31日、「eサポート裁判の可能性」と題された日弁連法務研究財団・オンライン訴訟研究会の公開研究会が東京都港区のニューピア竹芝サウスタワーで行われた。来場していた現役の判事も質疑に加わるなど、会場は熱気に包まれた。

早野氏の講演に聞き入る参加者
早野氏の講演に聞き入る参加者
 冒頭に壇上へ経った弁護士の早野貴文氏は、eサポート裁判の意義について、裁判のIT化はあくまでバックグラウンドであり、本来の目的は特別な知識や技術を持たない市民が手軽に裁判を利用できるようにすることだと主張した。早野氏はeサポート裁判の実現にあたって、裁判業務自体の見直しなどにも言及した。
 続いて、eサポート研究会が製作したeサポート裁判のイメージビデオが上映される。離島で療養中の女性が、法律相談から訴訟まで、すべてオンラインシステムを使って行うというものだ。
裁判のオンライン化の技術面を語る笠原氏裁判のオンライン化の技術面を語る笠原氏
 イメージビデオの上映後、講演に立った桐蔭横浜大学法学部教授の笠原毅彦氏は「サイバーコート(電子裁判)の実現は、もはや技術の問題はない。人的、制度的な問題だけだ」と切り出し、イメージビデオで使用されているサイバーコートの技術面の解説を行った。発言した内容を自動で文字化する音声認識システム、答弁書などのデータを裁判所のサーバに送信するオンライン申立てなどが紹介された。オンライン申立てについては、すでに札幌地裁でも実験がなされた。また、笠原氏はアメリカの南ニューヨーク地区破産裁判所では、裁判所サーバによる一括管理がなされていることも紹介した。ここでは裁判所サイトのフォームから直接、原告名や被告人名などを入力するシステムとなっており、当事者がメールで送信するよりも負担がかからず確実な仕組みになっている。

 続いて講演した北海道大学大学院法学研究科教授の町村泰貴氏は「司法制度改革とは、当事者が使いやすく、なおかつ正確な裁判にすること」と述べた。町村氏は、裁判のオンライン化にあたってアクセシビリティや正確性、公開性などの利点を挙げた。公開性では、関係者はすべて傍聴することができるが、一般向けには裁判官の顔だけにして、当事者は音声のみにするなど、公開の範囲を区別することも可能であるとした。一方でオンライン裁判の課題として電子署名や電子認証の普及を課題に挙げ、弁護士会で認証局を立ち上げる必要があるとした。
質問に答えるパネリストたち
質問に答えるパネリストたち
 その後、早野、笠原、町村の3氏にイメージビデオの脚本を担当した上田竹志氏を加えてディスカッションが行われた。笠原氏はオンライン裁判で本人のなりすましが出るおそれがある、という意見を挙げた上で「現在の裁判でも、裁判官が名前、年齢、住所を聞くだけ。オンラインで敏感になる必要があるか疑問」とした。現役の判事は「モニターを通じた証言では、心証が取りにくいと思う。やはり直接対話をしたほうがいい」と意見を述べた。また、セキュリティ確保について町村氏は「オンラインバンキングで巨額のお金を動かしているが、本人認証はIDとパスワードだけ」と、民事裁判に必要なセキュリティのレベルを見極める必要があるとした。

 民事裁判をオンライン化することができれば、司法と国民の距離が大幅に近づくことになる。オンライン化については、大学教授や民間企業だけでなく、司法現場で仕事をしている裁判官や弁護士なども今まで以上に積極的に関わっていく必要を感じたセミナーとなった。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



お問い合わせ

  コラムトップページへ▲