クラウド化する、学術ネットワーク環境について講演:コラム:ハミングヘッズ

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公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
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セミナーレポート
クラウド化する、学術ネットワーク環境について講演

 2010年11月10日、国立情報学研究所が主催する「学術情報基盤オープンフォーラム2010」が開催された。主催の国立情報学研究所は、「情報学 」における日本唯一の研究機関であり、ネットワーク、ソフトウェア、コンテンツなど情報関連分野の新しい理論・方法論から応用展開まで、総合的な研究開発を行っている。

会場となった学術総合センター 一橋記念講堂には、
大学関係者や企業から200名以上が詰めかけた
会場となった学術総合センター 一橋記念講堂には、大学関係者や企業から200名以上が詰めかけた
 「学術情報基盤オープンフォーラム2010」では、各大学や国立情報学研究所による情報基盤に関する取り組み状況などの他に、民間企業から講演者を招きクラウド化による情報基盤を取り巻く現状等についても言及された。

 大学という環境は、毎年入学・卒業があり入れ替わりが激しい。その中で、個人情報保護への対応と、研究・学習における自由なネットワーク活用という、セキュリティと利便性を両立したネットワーク環境の構築が求められる。

 国立情報学研究所では、2010年5月に約130の大学関係機関にアンケート調査を実施。その中から、特にメールについて、各大学が様々な課題を抱えているという結果が見えた。
 東京農工大学 総合情報メディアセンターの辻澤隆彦氏は、同大学のクラウドメールシステムの検討経緯を報告。従来、WEBメールを使用していた際の課題として、スパムを含むセキュリティ機能の脆弱性を挙げた。辻澤氏は「スパムメールが、受信メール件数全体の40%を超えていた」と話し、機密情報の集合体である基幹システムの保護、個人情報保護への対応を視野に入れたシステムを検討した経緯を説明。現在はクラウドメールシステムへの移行を控え、コスト面とセキュリティ面のバランスのとれた運営を目指している。
「edubase Cloud」について講演する、国立情報学研究所
アーキテクチャ科学研究系  吉岡信和氏
「edubase Cloud」について講演する、国立情報学研究所 アーキテクチャ科学研究系  吉岡信和氏
 国立情報学研究所が構築するIT教育向けのクラウド「edubase Cloud」について、国立情報学研究所 アーキテクチャ科学研究系 吉岡信和氏が登壇し、その概要を紹介した。

 平成18年度より文部科学省先導で推進されている「先導的ITスペシャリスト育成事業」。この中で平成21年度補正予算にて「学習用クラウドコンピューティング環境基盤の整備」が決定され、国立情報学研究所が「edubase Cloud」を構築している。

 吉岡氏は、同システムの特徴として1)15セットに分割された「ミニクラウド」で構成されており、研究室ごとなど実験環境の専有性が確保できる(他研究室との共有も可)。2)すべてオープンソースで構築されておりカスタマイズ可能である。3)実験環境をそのまま保存し、アーカイブとして活用することができる、等を説明。IT教育現場の課題である「問題解決についてチームで議論できる環境が不足している」「先進的なIT技術を駆使できる実践環境が整っていない」といった状況への対応を図るという。
 同氏は「従来のデータレベルでの共有ではなく、実験環境の共有を可能にする、学術クラウドを目指す」とその展望を語った。
国立情報学研究所 情報社会相関研究系 曽根原登氏
国立情報学研究所情報社会相関研究系 曽根原登氏
 金沢大学総合メディア基盤センターの笠原禎也氏と、国立情報学研究所情報社会相関研究系の曽根原登氏は、全国の大学と国立情報学研究所が連携して構築・運用を行っている「学術認証フェデレーション(愛称:GakuNin)」について触れた。
 「学術認証フェデレーション」とは、学術データを利用する大学や、学術データを提供する機関・出版社等から構成された連合体で、参加している大学・機関間で認証システムの連携が実現。つまり、金沢大学の学生なら、同大学の認証IDひとつで、電子ジャーナルや他大学のデータベース、eラーニングシステムの利用が可能になるなど、情報サービスの質が飛躍的に向上するという仕組みだ。
 国立情報学研究所の曽根原氏は「狙いは、世界をリードする『知の循環』」と語り、ネットワーク型の資源共有・共同研究基盤の有用性を説いた。
「クラウドとセキュリティの現状」について語る、ラックの川口洋氏
「クラウドとセキュリティの現状」について語る、ラックの川口洋氏
 そのほか「クラウドとセキュリティの現状について」というテーマで、ラックの川口洋氏が登壇。世間で懸念する声も多い、クラウド化によるセキュリティの脆弱化に触れた。近年、流行した「ガンブラー攻撃」については「『WEBサイトの改ざん』ばかりが取り沙汰されるが、ガンブラーの本当の被害は、IDが盗用されることにある」と指摘。従来のシステムはIPアドレスによるアクセス制御がされていたが、(パブリック)クラウドは誰でもアクセス可能であり、アカウント情報の盗用が大きな脅威である、と注意を促した。

 今回のフォーラムでは、大学・学術機関間のクラウド化による学習・研究の効率化および発展、クラウド技術自体のメリット・デメリットまで言及され、充実した講演内容であった。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。




注釈

*:情報学
計算幾何学・情報工学はもとより、人文・社会科学・生命科学の領域などあらゆる分野における情報の取り扱いや、それに関する研究などを扱う学問分野




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