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セミナーレポート
デジタルアーカイブ化への取り組みについて講演

 近年、紙の書籍や資料、公文書などをデジタル化し、記録・保存する「デジタルアーカイブ」化が進んでいる。Googleが、日本の書籍をデジタル化しようという取り組みは物議を醸し出しているが、日本国政府も「IT戦略会議」上でデジタルアーカイブ化を進める趣旨の発言をしている。
 資料保存などの技術を保持している企業で構成された「情報保存研究会」は、2010年10月29日に東京都墨田区の江戸東京博物館で、第4回資料保存シンポジウムを開催した。デジタルアーカイブ化を進めている公的機関や、大学教授らがデジタル化の現状とこれからの計画について報告を行った。

国立公文書館電子情報係 八日市谷哲生氏
国立公文書館電子情報係 八日市谷哲生氏
 政府や自治体などが業務上で作成・発行する書類『公文書』を保存している、国立公文書館電子情報係の八日市谷(ようかいちや)哲生氏は、公文書館が進めている資料をデジタル化する取り組みについて講演した。
 2004年に「公文書管理法」が施行されて以来、公文書館では所蔵している資料や公文書のデジタル化を進めている。公文書の大半は紙の資料なので、目録をテキスト化してデータベース化、スキャンしてデジタル化した資料とテキストの目録を結び付ける、というデジタルアーカイブ化を行っている。
 八日市谷氏は、公文書館による取り組みとして、デジタル化によるコンテンツ利便性を高める取り組みを紹介。例えば「歴史年表を作り年代をクリックすると年代に関係する公文書が出てくる」「日本国憲法といった特定の資料を検索すると、あわせて当時の議論に関する資料も紹介する」など、デジタル化によって実現しやすいコンテンツ制作を進めている。
 ほか、同氏は様々な資料をデジタル化するメリットについても説明した。「公文書館が保存する公文書は、国保有のもので、基本的に1点しか存在しない。しかし、デジタル化すれば『いつでも、どこでも、誰でも、無料で』多様な目的、ニーズに応えることができる」と話す。
 また「通常ならば汚損・破損を恐れて滅多に公開が難しい資料も、デジタル化すれば誰でも見られるようになる」として、利用・保存の両面でメリットがあることを説明した。
 同氏は、デジタルアーカイブの今後について「現在すでに初めからデジタルで作成された公文書も存在している。これからデジタル化を進めていくなかで、アナログのデータをデジタルに統合していくことで『デジタル』という、ひとつの出口で提供されるようになるだろう」と展望を語った。

 常磐大学コミュニティ振興学部教授の坂井知志氏は、デジタルアーキビスト*1の立場から、主に学校や授業の場などにおける著作物の扱いと法律について解説した。
 「とある団体が持つ写真の利用規約を読むと、普通の小学校や中学校などで行われるいわゆる『正規』の授業では使用を許可していたが、(同教授が活動を行っている)老人ホームやホスピスで行われる講演・授業などは学校教育の範囲外になるため、使用する場合は申請して許可を得る必要があり、ハードルが高くなっている」と話す。坂井教授は、このように資料を教材として転用する難しさについて説明する一方で、教育関係者が教育のための権利制限を無制限に拡大解釈する傾向にも、苦言を呈した。
 著作権法は許諾が原則であり、著作物の利用についてどのように利用されたいかを決めるのは創作者だ。たとえば創作者が拒めばデジタル化はできない。しかし学習教材の共有化・分業化、加工(視覚障害者が読めるような点字にする)・変形(発達障害者のために文字を大きくする)などを容易にするための、デジタルアーカイブ化への要求もある。
 そのような背景から著作権法における、デジタルアーカイブ利用に関するガイドラインの要求も上がってきているが、現在提案されているガイドラインの場合、過去のものについて全て許諾が必要になり、ほぼ公開が不可能になるという。そのため同氏は「ガイドラインという形ではなく、著作権に関する映倫のような組織を作る必要がある」と話し、法的な側からではなく、業界による自主的な規制を行うべきと主張。
 またそのような自主規制が教育委員会に認められ、効力を持っていくためには、「今後アーカイブ関係の学会や、日本教育情報学会*2などが連携していく必要がある」と説明した。
国立国会図書館 企画課電子情報企画室課長補佐
上綱秀治氏
国立国会図書館 企画課電子情報企画室課長補佐 上綱秀治氏
 国立国会図書館 企画課電子情報企画室 課長補佐の上綱秀治氏は、同図書館のデジタル化事業について説明。国立国会図書館がデジタル化を推進している背景には、2009年3月に施行された「媒体変換基本計画」がある。これにより従来はマイクロフィルムとして保存していた資料をデジタルデータへと転換を進めている。
 また同氏は「デジタル化に伴う著作権法の改正で、国会図書館は権利者の許諾なくデジタル化することが可能になったことや、改正に際して、出版者、著作権者などとの合意が得られたという背景も、デジタル化の促進に一役買っている」と話した。
 国会図書館におけるデジタル化方式は、公文書館と同じ、テキストによるデータベースを作り、スキャニングによりデジタルデータ化する方法を取っている。そのため「本文もテキスト化し全文検索を行うのが目標」とし、国会図書館の今後の取り組みとして「全文テキスト化のために実証実験も進めていきたい」と説明した。

 ほかにも、資料保存実用講座として、デジタルアーカイブ化の技術を持つ企業が、商品の紹介を兼ねデジタル化の技術を紹介。前述の上綱氏が「民間の方の技術によって支えられている」と話し民間への協力も求めているように、国会図書館や、公文書などの文書の保存・利用といった「公的な」目的を、実のところ「民間」の技術が支えている面が強い。
 国民の財産としての資料・図書・公文書などの利用に際して、多くの人間の利便性が図れるような、デジタルアーカイブ化の促進を期待したい。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。




注釈

*1:デジタルアーキビスト
デジタルアーカイブ化するための技術、及びデジタル化した資料を公開・活用できる法的知識を持つ人材のこと。

*2:日本教育情報学会
著作権やPCの利用に関して研究・講演する、全国の学校関係者で作られた組織。




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