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公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
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「IPA Forum 2010」が開催

 2010年10月28日にIPA Forum 2010が明治記念館(東京都港区)で開催された。IPA Forumは、IPA(情報処理推進機構)が取り組んでいる「情報セキュリティ」「ソフトウェア・エンジニアリング」「IT人材育成」「オープンソフトウェア」の各分野での活動や、国内外の最新の活用事例などを紹介するものだ。

 IT人材育成の分野では、「産学連携による継続的IT人材育成の仕組み構築」をテーマに、現在IPAが取り組んでいる産学連携人材育成活動について報告された。
大島氏は大学と企業にギャップがあると語る
大島氏は大学と企業にギャップがあると語る
 まず、IPA IT人材育成本部 産学連携推進センター長の大島信幸氏が同活動の趣旨を説明するとともに、「大学のカリキュラムと企業の期待にギャップが生まれている」と述べ、その調査結果を示した。
 企業が大学に期待するIT教育として、「システム・ソフトウェア設計」や「文章作成能力・文章力」、「チームワーク」などの実践的な項目があがったが、大学の実際のカリキュラムでは、「プログラミング技術」や「計算機科学」などテクノロジーの教育が中心となっている。大島氏は、「実践的な教育を行うには、教員・カリキュラム・教材の充実が必要。企業、大学と連携して教育カリキュラムを開発し、教員育成を支援することで、将来を担うIT人材を社会に輩出し、産業・社会の発展に結び付けたい」と語った。

 そして、産学連携の実践的カリキュラムを実施した事例として2つの大学の事例が紹介された。
九州大学の産学連携カリキュラムを説明する峯氏
九州大学の産学連携カリキュラムを説明する峯氏
 1つ目は、九州大学 工学部 電気情報工学科での「分散ロボットプロジェクト演習」だ。これは、6~8名を1つの班とし移動ロボットを利用した組み込みアプリケーションを約1カ月でチーム開発するというもの。大学では、学生間でのチームワークやコミュニケーションがうまくいっていない、学生が計画書や設計書を書かないという課題があり、この講座を通して学生にチームワークの必要性と計画・設計の重要性を理解することを目的に実施。カリキュラムの作成や講座の実施において、企業の協力を受けた。

 講座の始めは学生も硬く、慣れない設計で頭がいっぱいの様子だったが、時間がたつにつれてチームで開発するという意識が芽生え、積極性が出てきたという。最終的には、全チームがシステムを完成させ、デモを実施し、システム開発中に体験した問題の分析や対策などを自主的にデモで説明するまでに至った。授業終了後の学生のアンケートでも、「グループワーク力がついた」、「演習内容にやりがいがあった」など、ほとんどの学生が高評価をしており、非常に有意義な講座となった。
 この授業を担当した九州大学大学院システム情報科学研究院 准教授の峯 恒憲氏は、「学生はチーム活動を渇望していたがそれが実施できないでいた。今後はさらにカリキュラムを改善し、来年度からは大学自ら実施していきたい」と語った。
浜本氏は山口大学では産学連携をしながらも自立運営を目指すと語る
浜本氏は山口大学では産学連携をしながらも自立運営を目指すと語る
 2つ目は、山口大学 工学部 知能情報工学科での事例だ。山口大学では「ロジカルシンキング」、「プロジェクト・マネジメント」、「ISMS(Information Security Management System)」を大学の初期段階(1年生)で実践することで論理的思考力やコミュニケーション力、プロジェクト推進力、システム管理力を身につけ、今後の大学授業、ひいては社会に出て組織の中で仕事をするための能力として結び付けたいと考えており、企業からの教材提供や教授法の指導を受けながら、「ロジカルシンキング講座」を開講。最初にロジカルシンキングの要点について説明する座学を実施し、その後6名を1班として論理的問題解決および論理的コミュニケーションのグループ演習を行った。

 グループ演習では、グループ内のコミュニケーションが活発になり、講座実施後の学生アンケートでも90%以上の学生がやりがいを感じたと答えており、一定の成果をあげることができた。この事例を発表した山口大学工学部知能情報工学科 教授の浜本義彦氏は「今後は、教材を大学側ですべて準備し、教育も大学内で完結できるような仕組みを作り、講座運営を自立化していきたい」と述べた。
情報セキュリティ対策についてパネルディスカッションが行われた
情報セキュリティ対策についてパネルディスカッションが行われた
 情報セキュリティの分野では、「情報セキュリティ対策推進への新たなアプローチ」と題してパネルディスカッションが行われた。IPAの報告によると、企業の情報セキュリティにおいてウイルス被害は減っているが、管理ミスによる被害が増えており、また、対策上の問題点として「コストがかかりすぎる」「費用対効果が見えない」「どこまで行えばいいのか基準が示されていない」などがあげられる。
 こういった現状を踏まえ、情報セキュリティ大学院大学 教授の廣松毅氏は「係長セキュリティから社長セキュリティへ移行してほしい」と述べ、セキュリティはまだまだ現場レベルのものと考えられがちだが、「会社でリスクを認識し、それに対して取り組みを行うべき」(廣松氏)と指摘。それに対し、富士通総研 経済研究所 主任研究員の浜屋 敏氏は「トップダウンだと社員はルールが煩わしいと考えることが多い。社員が自分にとって重要だと考えてもらえるような情報セキュリティ対策を実施するとよい」と述べた。

 また、日本大学 大学院総合科学研究科 教授の吉開範章氏は、ウイルス対策の実証実験を行った結果を基に個人のセキュリティ対策を考察。「IT意識が高い人が対策を行う傾向があるので、セキュリティ対策の意識付けが重要」と語り、「意義ばかりを訴えてもなかなか実施してくれないので、社会的に正しい行動をとればポイントやインセンティブを付与し、社会的貢献度が図れるような仕組みも必要なのではないか」と言及した。

 このほか、2010年以降、より安全性の高い暗号アルゴリズムへ着実に移行を進めていかなければならない「暗号の世代交代」、未だ被害が絶えない「ガンブラー攻撃」をテーマにした講演などが行われた。また、「情報セキュリティ標語・ポスターコンクール」や独自性を持った優れた次世代のIT人材を表彰する「未踏IT人材発掘・育成事業スーパークリエータ認定証」などの授賞式も実施され、会場は活況を呈していた。今後もIT市場が活発になるような活動を期待したい。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。




注釈

*:ISMS(Information Security Management System)
組織・部門における情報セキュリティを管理するための仕組み。




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