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台風・地震予測への「地球シミュレータ」活用について講演

 「世界最速のスーパーコンピュータ」として、開発・運用が開始された「地球シミュレータ」。製作された2002年には、2位のIBM社製「ASCI White」に5倍近い差をつけて世界一の演算速度を誇るスーパーコンピュータとして認知され、2004年まで世界一に君臨していた。
 2009年にシステムを更新。現在では、世界で16番目の速度ではあるが、通常のPCと比較して2000倍近い演算速度を持ち、気候変動や温暖化予測、地震、地球内部の変動など、通常では計算できないような地球規模の課題解決に向けて、現在、様々な分野に可能性を広げている。

会場に展示されていた、地球シミュレータの1/50の模型
会場に展示されていた、地球シミュレータの1/50の模型
 「地球シミュレータ」を保持する独立行政法人海洋研究開発機構は、2010年10月5日、「第8回地球シミュレータ シンポジウム―安全・安心な社会の実現に向けて―」を開催。「地球シミュレータ」を活用している大学関係者や同機構の研究員が、シミュレータの活用や、地震・台風などの自然災害に対する予知などについて、講演を行った。
 名古屋大学地球水循環研究センターの坪木和久准教授は、最初の講演で「スーパーコンピュータはどこまで台風を再現できるか」という題で、台風という気象の予測の難しさについて説明した。
 台風の直径は1000キロにも及ぶ一方、台風を形成している積乱雲の一つ一つは10キロ程度しかない。そのため「大規模な計算と、小規模の詳細な計算を同時にこなさなくてはならないことが、台風のシミュレーションを難しくしている」と言う。
 今後は「雲から台風スケールの現象をシミュレートできる雲解像モデル(CReSS=Cloud Resolving Storm Simulator)の開発を進めていきたい」と語った。
榎本氏は「3日後および1週間後の、天気予報の精度は顕著に上がっている」と話す
榎本氏は「3日後および1週間後の、天気予報の精度は顕著に上がっている」と話す
 海洋研究開発機構地球シミュレータセンターの榎本剛氏からは、世界的に連鎖する異常気象と、それらを予測するために必要となる、基礎データの収集・観測手段について講演があった。

 2010年夏の異常高温により、熱中症での救急車の出動数は5万回を超えて、171名の方が亡くなっている。「ここ5年の平均で見ると、台風や地震などよりも被害者数は多い」(榎本氏)と、異常気象がもたらす影響は軽視できない。
 また「大気に国境はなく、気象は伝播する」と、榎本氏は続ける。
 例えば、夏季になると、チベット上空には、チベット高気圧と呼ばれる巨大な高気圧帯が発生し、対流圏上層で北半球を西から東へ向かって吹く「ジェット気流」という強風により、日本上空、さらには太平洋を渡ったアメリカ大陸まで押し出される。同じような原理で、日本で発生した異常気象も、アメリカ大陸や世界各地にまで伝播するのだ。

 このように、世界中に拡散する可能性のある異常気象を感知するため、世界規模でデータを収集、予報に繋げるための取り組みが進んでいる。現在では、世界中の海上に浮かべた無数のブイ、船舶や航空機さらには各国の衛星まで、様々な場所・高度から集められたデータを収集しているという。
 さらに地球シミュレータと実測を用いて、観測地点の設定次第でどの程度の誤差が出るかを計算し、より誤差が少なくなる観測地点を推測している。この結果を観測者にフィードバックすることで、観測地点の数、精度ともに上げる取り組みが進んでいる実態も説明した。

 榎本氏は「天気予報は当たらないと言われがちだが、過去のデータと比較して、精度は抜群に上がってきている」と語り「さらなる精度向上に向けた取り組みも進めていきたい」とした。
堀氏は「日本には震源が集中している」と話し、地震予測の必要性を解説した
堀氏は「日本には震源が集中している」と話し、地震予測の必要性を解説した
 海洋研究開発機構地球ダイナミクス研究領域の堀高峰氏からは、現在研究を進めている「地震の予知」について説明があった。

 「海溝型」と呼ばれる地震は、プレートの断面のずれによって起こる。
 プレート同士の動きにズレがあるが、プレート断面に一部固着している箇所が存在することにより、プレートに圧力がかかり続ける。こうして100年単位でプレートに蓄積された圧力が、固着面の力を上回ると、固着が一気に剥がれ、圧力が秒単位で一気に解放される。これが「海溝型」地震の主な原因である。
 このため「プレートの固着された箇所を観察することで、地震はある程度予知が可能である」と堀氏は話す。しかし「東海沖から四国沖(南海)まで続いているプレートの断面には、これらの固着している箇所が約15万箇所も存在する」(堀氏)ため、予測は容易ではないとも言う。

 堀氏はさらに剥がれ方を決める境界面の摩擦の法則や、固着面同士の相互作用などの研究を進め、シミュレーションでの動きと、観察で得た実際のプレートの動きを一致させることできれば、「その後の推移を予測シミュレートできるようにすることも可能になるだろう」と、地震予測シミュレーションの将来について説明した。

 最後に、鉄道総合研究所の熊谷則道理事が、鉄道における地震対策とシミュレーションについて講演。同研究所では、車両を使った過酷な条件での実験を何度も行うことは困難なため、シミュレータを活用している。ほかにも乗客の流動をシミュレートしたホーム設備の設計や、新型の新幹線の騒音低減のメカニズムなどを紹介した。

 地震も台風も日本において頻繁に起こる「自然災害」だが、災害自体をなくすことはできない。そのため「地球シミュレータ」を利用した、予知・予防の精度向上が今後も期待される。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



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