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公認会計士松澤大之
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地理空間情報を活用した『G空間』社会について講演

 使っている意識すらなく人がコンピュータを利用する「ユビキタス社会」を実現するためには、多くの技術が必要だ。その中でも、特に重要性が高い技術の1つに「地理空間情報」技術がある。
 2010年9月19日から21日にかけて、横浜市にあるパシフィコ横浜で開催された「G空間EXPO」では、地理空間情報技術(=G空間)を活用したサービスを紹介する展示や、同技術に関する講演が行われた。

 地理空間情報は、2007年に制定された「地理空間情報活用推進基本法」で、 1. 空間上の特定の地点又は区域の位置を示す情報(当該情報に係る時点に関する情報を含む)、 2. 1の情報に関連付けられた情報、と定義されている。
 身近なところでは「カーナビ」が、現在運用されている地理空間情報を利用したサービスとして考えられ、「位置ゲー」などと呼ばれる位置情報を用いたゲームも幅広く浸透を始めている。他にも、例えば「位置」と「個人」の情報を連動させた技術の場合、一人暮らしの老人の“見守り”や、街の中における消費行動の調査、時間・空間・個人を考慮したターゲット広告まで様々な可能性が存在する。
地理空間情報は身近なものとして浸透しつつある
地理空間情報は身近なものとして浸透しつつある
 展示会場では、業界・研究者向け以外にも、より年少者に向けてG空間社会をかみ砕いて説明した展示も行われた。
 経済産業省の「G空間プロジェクト」による会場全体を利用した「位置ゲーム*1」風の公開実験や、AR技術*2による映像などもあり、会場には親子連れの姿も見られた。
 展示と同時に行われた経済産業省主催の講演で、東京急行電鉄株式会社グループ事業本部第三部課長の金山明煥氏は「ITが普及し、検索行動が一般的になり、計画的購買層が増え、街中での回遊性や消費が減少した」という状況を課題として挙げ、「ITを活用してリアル空間での回遊性を上げる」手法の開発が必要だと強調。2009年12月から2010年の3月にかけて渋谷で実施した、ITを用いて回遊性を高める実証実験について説明した。

 この実験は、スマートフォンを起点にした位置情報を活用し、利用者による店舗情報の投稿やその地域のローカルニュースを、位置情報を元に店の近くなどで配信したり、AR技術で見えるようにするなどの方法で回遊性を高める一方、消費者の行動ログを店舗側に可視化して、顧客開発や業務改善につながる情報を提供するというものだ。 同氏は、今回の実証実験では一定の成果があったとし、「今後は、より没頭できるような有力コンテンツ開発のために、ゲームアプリ開発やゲーム開発事業者などの誘致が必要」と語った。
柴崎氏は技術と活用例のマトリクス(研究開発マップ)を作成し、全体像を洗い出しながら解説した
柴崎氏は技術と活用例のマトリクス(研究開発マップ)を作成し、全体像を洗い出しながら解説した
 一方、国土交通省が主催した講演の中で、東京大学・空間情報科学センター教授の柴崎亮介氏が、位置ゲームなどの普及を肯定しつつも「ゲームのためだけに、技術的なブレイクスルーは起こりづらい」とし、公共性の高い分野へ応用する重要性を説いた。
 同氏はまず「今後重要と思われる地理空間情報を利活用するサービス」に関する産官学へのアンケート結果を紹介し、「災害・環境分野」という公共性の高い分野に最も多くの回答が集まったと話した。
 「災害・環境分野」におけるサービスは、大規模災害が発生をいち早く察知し、その情報を近辺にいる個人・世帯・企業に情報を発信するというもの。
 例えば雨量、河川水位、斜面位置などを常時監視することで、災害が発生した際に早期の察知ができる。さらに個人の位置情報から、個別に適切な災害情報や、避難経路・避難場所を知らせることも可能だ。現在、携帯電話等に代表される個人単位で持つ端末は、世界的にも普及しているため、柴崎氏は「災害・環境分野におけるサービスは、海外においても注目されている(地理空間情報に関する)技術」であるとした。

 また、同じアンケートの「地理空間情報をより高度に利活用するために解決すべき課題」についての質問では、「情報共有の枠組み作り」と「個人情報取扱の明確化」に対する関心が強かった。
 個人の位置や行動などの情報は「個人情報」となるため、仮に個人情報保護法を厳格に適用していった場合、「地理空間情報の利用そのものが不可能」という議論が存在するからだ。そのため今後は、スムースに活用するための法整備を進める一方、「セキュリティ・個人情報保護と情報の利用を両立した技術も必要になる」とした。
大日氏は「バイオテロや新型感染症は時・場所を問わないため、常時監視できる自動化したシステムが必要だ」と訴えた
大日氏は「バイオテロや新型感染症は時・場所を問わないため、常時監視できる自動化したシステムが必要だ」と訴えた
 「災害・環境分野」における利活用として、国立感染研究所感染症情報センター主任研究員の大日康史氏から「感染症におけるGISの活用現状と課題」という内容で講演があった。
 バイオテロや新型感染症が発生した場合、早期探知をするために「薬局・学校・救急車搬送の状況を(個人情報を除いて)、同じ地図上に描写するシステムを構築する必要がある」と、大日氏は話す。
 さらに判明した感染症を特定し、気象データなどを融合することで曝露状況を推定。曝露状況と、個人の位置情報、自己申告による健康情報を連動させることで、国民一人一人ごとの感染リスクの管理や注意喚起まで行うことが可能になる。
 同氏は「公衆衛生目的であれば、個人情報は保護の対象にならないが、個人情報保護法を誤解し、健康情報登録の自己申告を行わない可能性もありうる。そのため健康観察を国のシステムとして位置づける必要がある」と話した。

 他にも地理空間情報は、気象情報などと連動させた「農業・水産支援サービス」や、位置測位の技術を活用した「海洋資源開発」といったサービスの提供も考えられている。現在「屋内では位置情報が間違えやすい」「10メートル以上のずれが生じる場合がある」など、技術的な障壁は多々存在するものの、可能性の非常に高い分野として今後の動きに期待したい。


GISポータルサイトはこちら(芝崎氏の研究開発マップをダウンロードできます)



※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。




注釈

*1:位置ゲーム
携帯電話などで行える地理空間情報を使ったゲームの総称。ゲームを進めたりするために、現実空間の特定の場所へ赴いたりする必要がある。そのため、近年は地域の活性化などと結びつけて話題に挙がることも多い。

*2:AR技術
拡張現実(Augmented Reality)技術の略。現実の空間に、CGや吹き出しなどといったデジタル情報を加える技術。例えばケータイのカメラを通して見ると、現実の空間に合わせてタグや広告が浮いているように見える、といったもの。


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