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情報化社会のインフラとなる“空間情報”の最新研究

 東京大学空間情報科学研究センターの研究部門である「空間情報社会研究イニシアティブ」は、持続安定的な空間情報社会の実現を目的とした研究を行っている。「空間情報(=地理空間情報)」とは、地図と地図上の位置や領域に、各地点に関連する自然・社会・経済・文化的な属性データを重ね合わせた情報のこと。
 今回のシンポジウムは、ITS Japan「次世代デジタル道路情報委員会」と共同主催で、ITS・道路分野をはじめとする産官学の講演者が登壇。空間情報の流通に関する現状と、実社会でのサービスイノベーションを視野に入れた取り組みが紹介された。

「地理空間情報流通実験コンソーシアム」の実験システムを解説する、東京大学空間情報科学研究センター 関本義秀氏
「地理空間情報流通実験コンソーシアム」の実験システムを解説する、東京大学空間情報科学研究センター 関本義秀氏
 2007年に施行された「地理空間情報活用推進基本法」を経て、カーナビ・行政・観光・物流などの様々な分野で、空間情報を活用したサービスは広がりつつある。しかし、国土交通省や地方自治体が保有する社会基盤情報(土室試験結果、交通量データ、道路ネットワークデータ、空中写真など)の情報公開は進みつつあるものの、民間企業がリアルタイムで入手しにくい状態が続いている。また管理団体によって情報量や更新サイクルが個別バラバラであり、収集に時間がかかってしまうという問題もある。
 東京大学空間情報科学研究センターの関本義秀氏は、これらの現状をふまえた上で同センターが取り組む「地理空間情報流通実験コンソーシアム」の活動について説明した。
 これは、国や都道府県が所有する社会基盤情報があつまるプラットフォームを提供し、民間事業者などに活用してもらう仕組みである。使用可能な情報としては、地盤情報や公共施設情報、道路工事図面、道路更新情報などこれまで未公開とされていた情報も含まれる。ユーザー参加者は、現時点では無償でこれらのデータを利用可能であり、建設コンサルタント、ソフトウエアベンダー、通信業社など114団体が公募により集まっている。
250名定員の会場は、事前のWEB予約で満席と注目の高さがうかがえた
250名定員の会場は、事前のWEB予約で満席と注目の高さがうかがえた
 関本氏は参加企業のアンケート回答から、コンソーシアムの現状について解説。「参加目的としては“データを利用したい”というのはもちろん、“地理空間情報の流通に関する動向の情報収集のため”という回答も多く、この分野への期待の大きさがうかがえる」と話した。しかし同アンケートで“地方自治体からの積極的な情報提供を期待できるのだろうか”といった不安の声も上がっており、「今後は行政サイドのインセンティブを整備することが重要である」と課題を示した。

 さらに関本氏は、「今後はデータのバラエティを増やすべく、情報管理者側と円滑に提携できる仕組みを考えている。さらに将来的には有償化を視野に入れビジネスモデルの検討が必要である」と今後の展望を語った。

 ITS Japan 次世代デジタル道路情報委員会の浜田隆彦氏からは、空間情報を駆使し、安全・環境に資する交通システムを目指す「走行支援サービス」の実現に向けての取り組みが紹介された。
 「走行支援サービス」とは、渋滞、工事、臨時交通規制をはじめ、路面状況によって変化する安全速度、複雑化する車線情報、周囲を走行する車両の情報など、詳細な道路情報を提供しようとするものである。しかしその実現にあたっては従来のカーナビ等で求められていた事項に加えて、道路情報の網羅性、正確性、鮮度を満たした高精度の地図データベースが必要となる。
ITS Japan 次世代デジタル道路情報委員会 浜田隆彦氏(写真中央)
ITS Japan 次世代デジタル道路情報委員会 浜田隆彦氏(写真中央)
 地図データベースの要件を満たすため、次世代デジタル道路情報委員会では、「道路の共通位置参照方式」を利用した道路情報流通の仕組みを提言。「道路の共通位置参照方式」は道路上に「路線ID」を付与し、位置を特定する方式で、従来はバラバラであったIDを共通にすることで、誰でもその地点を特定でき、異なる道路ネットワーク間での情報交換が容易になる。浜田氏は「このように道路情報が上流(国などの道路管理者)から下流(一般ユーザ)まで一気に流れる仕組みが必要である」と訴えた。

 さらに浜田氏は「走行支援サービスが確立すれば、例えば高齢者であっても安全に車の運転ができるようになり、これからの高齢化社会に向けて大きな意味をもつ。さらにこれらのビジネスモデルが日本で確立されれば、日本から世界へ広がるサービスになっていく可能性もある」と語った。

 そのほか、国土交通省の遠藤和重氏からは、海外動向として、車両と車両の間での通信で情報(周辺車両の動体位置、速度、進行方向など)が得られるITS*として「Local Dynamic Map」が紹介された。また、気象庁の板井秀泰氏からは“きめ細かい気象情報(警報)”として、「ピンポイントの地域情報が即時性を持って発信され、よりパーソナルな防災情報になることで、受け取り側の危機意識を高めたい」といった取り組みが語られた。空間情報の制度整備と発展により、社会の様々な様相が変化する、大きな可能性を感じたシンポジウムであった。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。




注釈

*:ITS (Intelligent Transportation Systems)
高度道路交通システム。コンピュータや情報通信、センサーなどの先進技術を用いて、交通事故や渋滞などの道路交通問題の解決を目的として構築する新しい交通システム。


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