セミナーレポート

国立情報学研究所が研究内容を公開

国立情報学研究所オープンハウスを取材

2013/7/4

 国立情報学研究所(NII)が一般の市民や学生などに研究内容を公開する「国立情報学研究所オープンハウス」が2013年6月14日から15日にかけて開催された。会場では研究内容テーマを紹介したポスターを展示。参加者は老若男女を問わず、幅広い層が参加しており、関心の高さをうかがわせた。

研究テーマを紹介したポスター展示には
たくさんの見学者がつめかけていた
研究テーマを紹介したポスター展示にはたくさんの見学者がつめかけていた

NIIの研究


 NII所長の喜連川優氏は、冒頭の講演で、NIIが若手・女性研究員・海外からの研究者の登用について積極的であることを説明した。さらに研究所が資金を調達して、研究成果を出すことも重要だが、資金を調達しなくても研究成果を出すことも大切だと強調した。


 また、同氏はNIIで行われているコンピュータに関連の2つの大きな研究について説明した。1つは、ビッグデータ時代に対応するデータベースエンジン「最先端研究開発支援プログラム」の研究。従来型のものと比べて20倍の速度による処理を可能にしている。もう1つは「人工頭脳」に関する研究。自然言語や数式で表現された問題文を、コンピュータが実行可能な形式に変換し、プログラムで数学の問題を解くことで「東京大学の入試をコンピュータが解答できるか」という命題に挑戦している。


 その他、喜連川氏はNIIが構築・運用している学術情報通信ネットワーク「SINET」を紹介した。同ネットワークは全国700以上の大学、研究機関で200万人以上が利用。東日本大震災時でもサービスが途絶えなかった、強固なネットワーク網を構築している。今後は、超高速化やより高度な信頼性の実現を目指していく構えだ。

NII所長 喜連川優氏   北海道大学大学院教授
湊真一氏
NII所長 喜連川優氏   北海道大学大学院教授 湊真一氏

アルゴリズムの重要性


 一方、北海道大学大学院情報科学研究科教授の湊真一氏は、アルゴリズムに関する講演を行った。アルゴリズムとはコンピュータのプログラムに書かれた計算手順のこと。コンピュータで様々な計算を行っていく際、アルゴリズムの工夫によって、何十倍、何百倍も計算時間が変わってくる。湊氏は「ある計算に100年かかるとしたら、その人にとって解けないのと一緒」とし、計算処理にかかる時間が速いか遅いかは非常に重要なことと指摘した。


 実際、巨大なデータを扱う計算は多く存在する。コンビニのデータは年間100万件以上、ヒトゲノムは3億文字と、様々なところに膨大なデータは存在している。湊氏は「アルゴリズム技術の工夫次第で、少ない演算回数で問題を解くことが可能。これによって何百倍も時間を短縮することができ、低価格で消費電力が低いコンピュータでも処理ができるようになる」と説明した。


 こうした湊氏の高速アルゴリズムに関する研究は、現在、日本科学未来博物館で行われている研究プロジェクトの展示「フカシギの数え方」でも紹介されている。同展示では「1×1のマス目で同じ点を通らずに何通りの道筋があるか」「2×2、3×3と増えていくとどうなるのか」というテーマの元、組み合わせにより爆発的にその数が増えていく「組み合わせ爆発」の説明や、数え方のコツなどを解説している。


 特にこの「組み合わせ爆発」について、面白おかしく解説しているアニメーション動画「おねえさんの問題」が好評を博している。アルゴリズムの技術を使用しない限り、わずか8×8マスを計算するためにはスパコンが必要で、11×11を計算するためには290億年もかかってしまう、という内容。一方で湊氏ら研究グループは2013年4月に、この問題の25×25の計算に成功し、世界記録を保持していることから、いかにアルゴリズムの技術が重要かわかる。


 マスの通り道の問題は、単純に組み合わせ爆発の効率化という話だけではなく、実社会への応用も期待されている。例えば、電力網のスイッチ制御などにおいて、電力の損失を最小にする組み合わせを求めるときなどは、このアルゴリズムが有用になる。湊氏は「一見、単純な問題が、様々な実社会の問題につながっている」と話した。


大規模放送映像アーカイブをつかった解析


 その他、国立情報学研究所教授の佐藤真一氏は、大規模放送映像アーカイブを用いた研究について講演した。佐藤氏の研究チームでは2009年の8月から東京地区の地上波7チャンネルの番組を、ハードディスクにすべて蓄積しており、このデータを用いることで、様々な解析を行っている。


 佐藤氏は、人の顔の局所的な特徴を認識する高精度の顔照合技術を用いて、大規模放送映像アーカイブ内の映像から顔情報を抽出。これによって、放送メディア上でどんな人物が話題になっていているかが時系列でわかることを明らかにした。


 様々な研究が行われている国立情報学研究所。その研究の内容がわかる同イベントの意義は大きい。研究者と一般の人との意見交換の貴重な場となっていることもあり、毎年の開催を期待したい。

 (山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:国立情報学研究所オープンハウス
主催   
:国立情報学研究所(NII)
開催日  
:2013年6月14日~15日
開催場所 
:学術総合センター(東京都千代田区)

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