セミナーレポート

シェールガスは日本にどう影響する?

一橋大学とRIETIの政策フォーラムを取材

2013/6/24

 2013年5月に米国が日本へのシェールガス輸出にGOサインを出した。米国で始まったシェールガス産出は、供給の多角化、ガス価格の変動など、世界中のエネルギー政策に影響を及ぼしはじめている。

 日本では2011年3月の震災以来、電力供給のために必要な石油を始めとした資源政策のあり方が問われている。一橋大学と経済産業研究所(RIETI)が主催したセミナー「資源エネルギー政策の焦点と課題」では、これからの資源利用について様々な意見が出された。

IEA前事務局長の田中氏
IEA前事務局長の田中氏

シェールガスと日本のパイプライン


 第1次オイルショック時、欧米を中心として石油消費国の原油需給を調整するために発足したIEA(国際エネルギー機関)。現在は資源の安全保障(エネルギー・セキュリティ)の確立やエネルギー政策立案といった役割を担っているという。


 今回、最初に登壇したIEA前事務局長の田中伸男氏は、ミャンマー・中国間を結ぶ石油パイプライン計画など、新興国の動向を踏まえて「世界のエネルギー需要のうち、4分の3が化石燃料を利用している。この資源を世界中が取りあう中で、日本がどう生き延びるかが重要」と述べた。


 こうした中で米国からのシェールガス供給は、これまでのガスや石油の価格に変化が出てくるきっかけになる。IEAでは2035年までには現在世界最大の天然ガス産出国であるロシアを追い越す、という予測を出している。供給拠点の選択肢が増えたことで、資源のない日本も「買い手市場」でエネルギーをまかなえる可能性が高まってきたということだ。


 ただ、日本の天然ガスパイプライン網は、北海道から九州・沖縄までブツ切れの状態である。海外からの輸入するにしても、LNG船が国内の港を転々としなければならない不便さが残る。「電力と違い、国内には200以上のガス関連業者が存在する」(一橋大学大学院教授・山内弘隆氏)ことも、パイプライン整備のネックになる可能性があるという。自然災害等のエネルギー供給リスクヘッジも含めて、国内のパイプライン整備は今後の課題となっている。


見直される「石炭」


 化石燃料については石炭の活用についても紹介された。東京工業大学教授の岡崎健氏は、日本の石炭火力発電効率は世界トップクラスであることを強調。インドやインドネシアなどの新興国で新設される発電所で日本の技術導入を行った場合、CO2を4.5億トン削減することが可能とした。


 岡崎氏は、石炭から取り出した水素を用いて燃料電池を駆動させる水素エネルギーシステムも提案した。オーストラリアで採掘される石炭のうち、商品にならない「褐炭」を利用して水素を製造、日本に向けて送る。ガスと同じようなサプライチェーンが可能であるとした。石炭から水素を製造する過程でCO2が発生するが、これはオーストラリア側で回収・貯蔵をしてもらうという。


 「オーストラリアでCO2という廃棄物を保管することになりますが、もともとお金にならなかった褐炭を利用することでウィンウィンの関係になれる」と岡崎氏は述べた。

電力の商品特性を述べる大橋氏   白熱したパネルディスカッション
電力の商品特性を述べる大橋氏   白熱したパネルディスカッション

電力システム改革


 ITを含め、重要インフラとなっている電力。そのシステム改革のための法改正が資源エネルギー庁を中心に進められている。第1段階は電力の安定供給の確保を目的としたもの、第2段階は小売り参入の全面自由化、第3段階は送配電部門の法的分離だ。現在は第1段階の部分が国会に提出されている。


 ただ、電力システム改革は一筋縄ではいかない。東京大学大学院教授の大橋弘氏は、「通常の商品と違い、需要が不確実な上に、在庫がない。新規の電源を作るには時間がかかる」と、電力の特徴を述べた。電力市場の競争を生み出そうにも、稼働率の低い発電所投資は難しい。また、電気料金の上限規制を行うと、民間での発電投資が鈍り、市場が悪循環する可能性もはらむ。


 大橋氏は「ITを利用した発電のモニタリングなどの工夫が必要になる」と指摘した。


今後の資源活用


 後半に行われたパネルディスカッション。シェールガスについての議論では東京ガスの副社長執行役員の村木茂氏が「より低廉で安定したガスの供給が必要。カタールからのガスは、日本では欧州向けよりも高く買わされている」と、震災後に火力発電へのシフトを見透かされた「ジャパンプレミアム」を是正していくべきとした。


 一橋大学大学院教授の橘川武郎氏も「ガス、石油などサプライ(供給)が増えてきた。(需要側が)得をしないはずがない」と述べ、日本はあらゆる手段を使ってエネルギーの調達コストダウンを狙っていくべきと訴えた。


 東日本大震災はエネルギーに対して真摯に取り組むターニングポイントとなっている。「震災時に被災地へ燃料を送れなかったのは悔しかった。毛細血管全てに(燃料を)配達できるようにしたい」(JX日鉱日石エネルギーの内田幸雄氏)という声も聞こえた。シェールガスが「社会の潤滑油」になるかどうか。日本は新たなエネルギー利用の局面に入ってきている。

 (中西 啓)

【セミナーデータ】

イベント名
:資源エネルギー政策の焦点と課題
主催   
:一橋大学 経済産業研究所(RIETI)
開催日  
:2013年6月4日
開催場所 
:一橋講堂(東京都千代田区)

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