セミナーレポート

起業家が集いグランプリを競うAEA2013

元陸上の為末氏、LINE代表の森川氏などが登壇

2013/6/17

 アジア12の国と地域からノミネートされた企業がビジネスプランを競い合う。国際ビジネスコンテスト「アジア・アントレプレナーシップ・アワード(AEA)2013」が2013年5月29日~31日にかけて開催された。日本・中国・台湾・マレーシア・インドネシアなどの起業家たちが、ビジネスプランをプレゼンテーションで競う。優勝者には賞金だけでなく、日本市場へ事業進出するためのサポートも行われるといったものだ。

有楽町で開催された
基調講演の様子
有楽町で開催された基調講演の様子

為末大氏が振り返る成功の分かれ目


 29日には有楽町朝日ホールで基調講演が行われた。元プロ陸上競技選手で一般社団法人アスリートソサイエティの代表取締役を務める為末大氏は、自身の競技生活の分岐点を振り返った。


 為末氏は中学3年生のとき400メートル走でジュニアの世界大会に出場、自分よりも速い日本人選手が世界で勝てないのを目の当たりにして愕然となった。しかしそこで行われたハードルを見たとき、「この種目なら世界で戦えるのでは」と気がつき、その後16年間ハードルに打ち込むことになったという。


 このことから為末氏は「スポーツの世界では『何かを選んで決断し、それに集中する』というのが極めて大切な要素」とし「勝てるものを選ぶ」ことは実は大事な選択で、早い段階で見切りをつけるのは重要な能力であるとした。


 また、為末氏はオーストラリアで行われたシドニーオリンピック予選の際、最後のハードルで転倒した苦い経験から、自身の国際舞台での経験の少なさを痛感。その後、偶然接触のあったエージェントに、右も左もわからないまま指示され、ヨーロッパの賞金レースに出場。そこで結果を残すことで経験を積み、カナダの世界陸上で銅メダルを獲得することができたという体験を伝えた。為末氏は「チャンスは一瞬で、それをつかむことができるかが成功へのポイント」と発言。電話をかけてきたエージェントも同氏がだめなら他の選手に電話をかけていたはずだったという。「日ごろから自分にとって何が、どう足りないかを明確に理解しておくことが、やってきたチャンスに飛びつけるかどうかに影響する」と力説した。

アスリートソサイエティ代表取締役 
為末大氏   LINE代表取締役社長 森川亮氏
アスリートソサイエティ代表取締役 
為末大氏
  LINE代表取締役社長 森川亮氏

LINEの展開


 一方、LINE代表取締役社長の森川亮氏は同社のサービス「LINE」について説明を行った。LINEは「世界No1のサービスをつくる」というコンセプトのもとに生まれた無料通話、無料メールができるスマートフォン用のアプリだ。


 森川氏はLINEの誕生について言及した。「コミュニケーションを主体としたサービスに、多くのニーズが眠っている」ことを同社が感じていた矢先、東日本大震災が発生。そうしたニーズを強く認識したことも後押しして、アプリ「LINE」の製作に着手する。結果、わずか1ヶ月半という製作期間で同サービスをリリースする運びとなった。


 LINEは電話帳と関連させてコミュニケーションを行うという、今まで存在しなかったサービス。あえてPCやTwitterなど他のSNSと連動させず、スマートフォン単独のサービスにすることで「リアルな関係同士がリアルタイムで、リアルな話をかわす」ことにこだわったという。また女性や一般のユーザを市場の中心に見据え、感情を表現したかわいらしいイラスト「スタンプ」を本文と組み合わせたことに、ユーザも素早く反応。サービス開始から約23ヶ月で国内4500万ユーザ、世界で1億5000万ユーザを獲得する結果となった。


 森川氏によると、同社はあえて事業計画を設定しないとのこと。IT業界は変化が激しく、計画通りにいかないのは日常的で、計画を修正する時間は無駄という認識に基づいたものだ。さらにデザインと開発を同時進行し、いち早く試作品を製作現場に投入して仕上げていくなど、現場のスピード感を重視している。海外展開についても現地のサービスが成長してから言語対応やTVCMを展開。現地パートナーと協業してサービスを広めていくなど、「現地法人をつくらない」という独自の姿勢をとっている。


 森川氏は開発現場の環境について「経営者が一言発言するとみんなが従う環境ではなく、現場のスタッフが発言する環境をどれだけつくれるかに注意を払っている」と発言した。また「サービスのリリース後の羅針盤はユーザ」と解説。メディアやユーザの声を全ての部署が全てチェックできる体制をとり、ユーザの意見をくみ取ってすぐに製品に反映できるよう、デザイナーの作業を重要視している。その結果としてPDCAサイクルを高速に回すのが目標だという。森川氏は「LINEがスマートフォンのゲートウェイ(玄関)となるように成長させていきたい」と意気込みを語った。


審査の結果


 会場では講演後、エントリーした各国のベンチャー企業がグループにわかれ、10分間の模擬プレゼンを行い、実務経験者によるアドバイスを受けた。さらに30日・31日には千葉県柏市にある東葛テクノプラザにおいてプレゼンが行われ、審査の結果、日本のCONNEXX SYSTEMS社が「蓄電池システムの製造」によってグランプリを獲得している。


 アジアのベンチャー企業が集結し、グランプリを競う同イベントは、ベンチャー企業家たちにとって貴重な機会となっている。第一線で活躍する実業家の講演がプログラムに組まれているのも特筆すべきことだ。同イベントがアジアのベンチャー企業をより飛躍させるきっかけになればと感じた。

 (山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:アジア・アントレプレナーシップ・アワード2013
主催   
:一般社団法人フューチャーデザインセンター
開催日  
:2013年5月29日~31日
開催場所 
:29日 有楽町朝日ホール(東京都千代田区)
  30~31日 柏の葉キャンパス(千葉県柏市)

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