セミナーレポート

ソーシャルメディア時代のデジタルサイネージ

デジタルサイネージジャパン2012を取材

2012/7/5

 デジタルサイネージの祭典、「デジタルサイネージジャパン(DSJ)2012」が2012年6月13日から3日間、幕張メッセで行われた。会場内では多くの企業による最新デジタルサイネージの展示や、識者らによる講演などが行われた。

シャープのブースで展示されていたデジタルサイネージ
シャープのブースで展示されていたデジタルサイネージ

デジタルサイネージの最新技術と可能性


 展示会場では液晶パネルやプラズマテレビなどの先端技術を持つ多くの企業が最新技術をふんだんに盛り込んだデジタルサイネージを展示していた。例えばシャープのブースでは、タッチパネルを使った大型の液晶「i3 wall(アイトリプルウォール)」が持っている双方向性や省エネ効果をアピール。映像に応じてLEDバックライトの輝度を自動制御することで、消費電力を効果的に抑えることができる特徴を前面に打ち出していた。


 同会場内では、デジタルサイネージ業界関連の様々な立場の識者から、業界の今後と課題についての講演が多数あった。デジタルサイネージをつかった空間プロデュースを行うチームラボ株式会社・代表の猪子寿之氏の講演では展示会や美術館といった様々な空間にデジタルサイネージが使われている事例が紹介された。


 例えば、デジタルサイネージを利用してより観客を引き付ける工夫を凝らしたファッションショーや、ルーブル宮殿にある装飾美術館でのデジタルサイネージを用いたインスタレーションなどを例に挙げた。猪子氏は「デジタルサイネージに様々なインターフェースやネットワークを組み合わせることによって、展示空間が映像空間になったり、時には視聴者参加型の展示となったりする」と話し、その可能性を評価した。


デジタルサイネージが置かれている状況


 また、元電通のCMプランナーでコミュニケーション論についての著作も多い佐藤尚之氏が基調講演を行った。昨今の目覚しいソーシャルメディア普及で、消費者に対する情報のリーチ(伝達)が変化し、情報伝播の主導権が、送り手から生活者に移っている。


 そのため佐藤氏は「現在は『情報が多く』信頼できる友人・知人から発信されるソーシャルメディアの情報が重宝される」と指摘。デジタルサイネージから流れる情報にも「(ソーシャルメディアなどを経由して)友人にその情報を教えたくなるかどうか」が問われてくると続けた。


 さらに佐藤氏は「情報があふれかえっている現在において、デジタルサイネージが生活者にとって『情報を増やすだけ』のツールならば、最適な情報を最適なタイミングで流しても、その情報は受け取ってもらえない」と説明する。


 「たとえリーチが少なくても『友人に教えたくなる情報』であれば、ソーシャルメディアなどを通して、あっという間に拡散できる時代だ」と力説。見る人が少ない場所でもアイデアがあれば拡散に寄与できるとし「逆を言えば、おもしろければ普段行かない場所でもわざわざ見に来てくれるということ。デジタルサイネージもこれを踏まえて優れたアイデアを取りいれるべきだ」とした。

元電通CMプランナーの佐藤尚之氏   慶応義塾大学・中村伊知哉教授
元電通CMプランナーの佐藤尚之氏   慶応義塾大学・中村伊知哉教授

ソーシャルメディア時代に求められるために


 引き続き登壇した佐藤氏は、慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科の中村伊知哉教授と対談を行った。ソーシャルメディア時代にデジタルサイネージが求められる役割を探る中で、話はテレビ、ラジオなどの従来型マスメディアとソーシャルメディアの関係に及んだ。


 2011年11月に、日本テレビ系の映画再放送枠内で放送されたスタジオジブリ製作のアニメ『天空の城ラピュタ』のクライマックスシーンで、twitterにおける1秒あたりのつぶやきが世界記録をつくったことが話題となった。中村氏はこの話をきっかけに「日本人が従来のメディアで受けた情報をソーシャルメディアで発信し、共有・共感することができる一つの事例」と紹介。これを踏まえたうえで佐藤氏もSNSを利用して視聴者が“共感できるもの”をデジタルサイネージも提供していかなければならないと提言した。


 中村氏は最後に、SNSとの連携が盛んな現状を俯瞰して「デジタルサイネージも、サイネージならではのソーシャルサービスを考えていく必要がある」と締めくくった。


 街でよく見かけるようになったデジタルサイネージ。しかし、ソーシャルメディア時代になってからはますますその存在意義が問われるようになっている。同シンポジウムで立ち位置を見つめ直すことで、デジタルサイネージがユーザからより一層求められるようになってほしい。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:デジタルサイネージジャパン2012
主催   
:デジタルサイネージジャパン2012実行委員会
開催日  
:2012年6月13日~15日
開催場所 
:幕張メッセ(千葉県千葉市)

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