セミナーレポート

進化するロボット技術の最先端!

第69回ロボット工学セミナーが開催

2012/6/11

 人間のリアクションに応じて説明をアレンジする美術館案内ロボット。自動的に障害物をよけることができる車いす…。着実に進化しているロボット技術の最新動向が2012年5月22日に行われたロボット工学セミナーで紹介された。

大原美術館で行われたガイドロボットの実験
大原美術館で行われたガイドロボットの実験

人間の会話分析から作られた
「ガイドロボット」


 埼玉大学大学院の久野義徳教授が紹介したのは、美術館ガイドロボット。単に絵画の説明をするだけでなく、相手のうなずきなどのリアクションを判断し、話を進めることができる。開発に当たっては実際のガイドさんを映像で撮り続け、絵画の説明中に取られる行動や、鑑賞者を振り向くタイミングなどを分析したという。


 「話の切れ目や、難しい事を言う時、『これ』などの指示語を使う時など、ガイドの人がどんな場面で訪問者を振り向くのか。これを調べるために社会学の分野で行われている行動分析を使った」と久野氏は語った。


 このロボットは複数の人に対しても対応が可能だ。ロボットが周囲を見回して、目を合わせてくる鑑賞者や、うなずきの多い鑑賞者を自動判定して、質問を投げかける時には、そのような積極的な鑑賞者と判断した人に向かって行うことができるなど、限りなく人に近い動きをすることができる。


介護に役立つ「ロボット車いす」


 同じく久野氏が開発した「ロボット車いす」は、横に立っている介助者を認識して動き、障害物があれば、ぶつからないように避けることができる。


 車いすに設置された360度カメラで介助者を登録、距離測定センサー(レンジセンサー)を利用して、常に介助者の横を目的地にして動くよう設定されている。また、狭い通路や歩行者とのすれ違いなど、介助者と並んで動けるスペースがない時は、自動で介助者の後ろを目標にする「追跡」モードに切り替わる。


 複数の車いすを介助者が誘導することも可能だ。養護施設では、1人のヘルパーが数人のお年寄りを同時に介助することもあり、1度に誘導することで介助スタッフの負担も軽減することができる。


 夢のようなロボットだが、課題もあるという。例えば「画像認識」。コンピュータが遠くにある大きなものと、近くにある小さなものの判別を、画像データで行うのは難しいという。「人間ならば簡単な行動でも、コンピュータ制御で同じことをするにはかなり難しい」と久野氏も語った。「ロボット車いす」で介助者や障害物との距離測定には画像ではなく、距離センサーを利用している。


 人の多い街中では、画像から介助者を特定することも、かなり難しいという。また、ロボット車いすに使われているレンジセンサーだけでも1台30万円するなど、コスト面にも課題がある。

会場からの質問に答える埼玉大学の久野教授   大学や企業の研究者らが集まった
会場からの質問に答える埼玉大学の久野教授   大学や企業の研究者らが集まった

パターン認識、ハイスピードカメラ…ロボットを支える技術


 ロボット分野で研究が進められている技術の紹介もなされた。


 ロボットが、映った画像で「人」か「モノ」かを判断するには、「パターン認識」と言われる技術も欠かせない。パターン認識とは、「手書きの数字『5』をコンピュータが見た時、0から9までの数字のうちどれかを判断するもの」(東京農工大・堀田政二氏)だ。


 コンピュータ側では手書きの数字「5」のパターンを持ち、撮影された画像をふるいにかけて一番似ているものをはじき出す。


 このパターン認識を人の顔にも当てはめれば、ロボットが画像だけで特定の個人を識別することも可能になる。堀田氏は「流行りのビッグデータではないが、顔や文字など、分類したい情報のパターンをたくさん集めていっぺんに分類した方が、コンピュータの認識精度は上がると考える」と述べた。


 他にも、1秒間に1000コマ撮影が可能なハイスピードカメラを使用した実験、マーケティングにも応用が見込まれる人物追跡の手法の紹介もされた。


 カメラやセンサー、そしてコンピュータなど、情報処理のツールや技術が格段に増えた今、『火の鳥』に出てきた「ロビタ」のようなロボットができる日もそう遠くはないだろう。

(中西 啓)

【セミナーデータ】

イベント名
:第69回ロボット工学セミナー
主催   
:一般社団法人 日本ロボット学会
開催日  
:2012年5月22日
開催場所 
:東京大学本郷キャンパス(東京都文京区)

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