セミナーレポート

JAMINAセミナー2012が開催

「どこでもMY病院」構想は果てなく

2012/5/10

 日本医療情報ネットワーク協会(JAMINA)が主催する「JAMINAセミナー2012」が、2012年4月17日に開催された。国が進めるプロジェクト「どこでもMY病院」の進捗状況や、昨年から今年にかけてのJAMINAの取り組みなどが報告された。

ベンダー関係者などが多数参加した
ベンダー関係者などが多数参加した

予防のための「IT」化


 2010年度から省庁横断で政府が進めている「どこでもMY病院」構想。個人それぞれが病院での診察結果、薬の服用歴など、個人の医療情報を一目でわかるような環境にする、というものだ。


 加えて、病院同士や診療所・薬局などが患者の医療情報を共有するプロジェクト「シームレスな地域連携医療」も「どこでもMY病院」と並行して進められている。この2つのプロジェクトは、2014年度の実現に向けて動いている。ITを使って「最終的には『気付かずともみんなが使っている』状態になるのが理想」(総務省の吉田恭子氏)としている。


 内閣官房の有倉陽司参事官は、糖尿病を例に挙げた。「治療をしていない人や治療を中断している人、糖尿病予備軍は約2000万人いる」として、重症患者になって高額の医療費負担になるのを抑制するためにも、ITを使うことによる予防医療が重要であると訴えた。


 「どこでもMY病院」プロジェクトのうち、EHR(電子健康記録)の実証実験は、2011年度に香川県高松市周辺、広島県尾道市周辺、島根県出雲市周辺の3地域で行われた。尾道市の事例では、瀬戸内海に広がる大小の離島が、中核病院となる尾道中央病院と連携できるメリットが際立ったという。


課題も見えてきた医療情報の連携


 「どこでもMY病院」や「シームレスな地域連携医療」は、2010年から2011年にかけて実証実験が各地で行われたが、課題も見えてきた。カルテや健康診断、投薬歴を含めた情報は、当然ながら「個人情報の塊」だ。経済産業省の井上美樹代氏は、「個人が『活用する』、病院や診療所で『共有する』それぞれの場面で情報を管理する必要がある」とした。


 井上氏は患者の同意が必要であると断った上で、「『シームレスな地域連携医療』で、病院や診療所が医療情報を新たに参加して情報を共有したい場合、参加する医療機関が個別に同意を得ることは特に必要ない」と、情報の取り扱いを述べた。ただ、自治体の条例によっては電子的な連携ができないところもあり、こうしたところで実証実験する場合は逐一自治体の審議会に確認したという。


 また、小児がんなど数十年のデータ保管が必要な医療については、長期保管に適したデータ形式の検討が必要であったり、医師側のIT知識不足が明らかになったりと、課題が数多く見つかったという。


 他にも、「シームレスな地域連携医療」はインターネット上でのやり取りを前提としている。このために発生する問題も指摘された。JAMINAの辰巳治之氏は「現在のネットワーク構築では、ほとんどが東京経由のもの。東京で通信トラブルが発生すると、同じ北海道エリアでの通信もできなくなってしまう」と強調した。辰巳氏は、地域IX(ISPをつなぐ拠点)の必要性を訴えた。

CRMを利用した被災者情報システムの入力画面   医療とITの市場展望を語る総務省の稲田氏
CRMを利用した被災者情報システムの
入力画面
  医療とITの市場展望を語る総務省の
稲田氏

ITトレンドと医療


 ネットワークの問題や、病院同士のデータフォーマットが定まらないなど、様々な課題が報告されたが、一方でシステムの壁を越えたIT利用も紹介された。JAMINA副理事長の水島洋氏は、2011年の東日本大震災当時に構築した被災地支援システムを紹介した。


 厚生労働省が派遣した約300人の健康支援先遣隊が使ったのは、企業の営業支援ツールで使われるシステム、CRM(顧客情報管理)を利用して開発されたもの。先遣隊が現地で入力した情報をベースに、健康支援チームが派遣され、被災者の健康管理に役立てたという。


 水島氏は「個人の情報や行動を時系列で集めるのは、顧客情報を時系列で管理するCRMとほぼ同じシステム。これを利用して、先遣隊の医療チームに入力をしてもらった」と活用方法を語った。


 総務省審議官の稲田修一氏は、「ITのトレンドは、『M2M』と『ビッグデータ』」と強調。医療ネットワークが浸透するためには、単に便利にするだけでなく、付加価値をつけていく現在のトレンドも積極的に取り込むべき、と述べた。


 正直なところ、「どこでもMY病院」や「シームレスな地域連携医療」が、果たして行政の掲げる予定通り2014年度中に実現するかどうかは不透明だ。単なる病院とベンダーの問題ではなく、国内を横断する仕組みを構築するのは、ビジネスも絡んでくるため進みにくいところではある。しかし、「人が便利になるための道具」という認識でシステムを考えてみれば、おのずと道は開けてくるだろう。

(中西 啓)

注釈

*:M2M
M2Mとは、Machine to Machineの略。主にセンサー付きの機器が取得した情報をネットワーク経由で自動的に集めること。電気の使用量を取得する「スマートメーター」などがある。

【セミナーデータ】

イベント名
:JAMINAセミナー2012
主催   
:日本医療情報ネットワーク協会(JAMINA)
開催日  
:2012年4月17日
開催場所 
:文京シビックセンター(東京都文京区)

【関連カテゴリ】

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