セミナーレポート

震災からの復興を「俯瞰」して考える

被災地・福島の大学教授も被災者の立場から講演

2012/5/10

 東日本大震災からの復興という課題に直面している日本。東京大学生産技術研究所は2012年4月16日、オープンレクチャー「復興を俯瞰して考える」を開催。「復興に何が必要か」「次の災害に対してどんな準備が必要か」など総合的に講演。被災地・福島の大学教授も登壇し、被災者の立場からの講演も行われた。

東日本大震災からの復興について意見交換が行われた
東日本大震災からの復興について意見交換が行われた

被災者に必要な心構え


 東日本大震災のような大きな震災が起きた場合、復興には多大なエネルギーを要する。関西学院大学教授の室崎益輝氏は、大災害後に復興をしていくための「エネルギー」を生み出すために必要な条件として、復興への強い意志はもちろん、コミュニティ間の連携、被災の原因を正しくとらえてその改善をはかること、再建に投じられる資源の正しい使い方を挙げた。


 室崎氏は「震災で被害を受けた現在の東北地方においてはこうした条件が不足しているため、これらを補っていく必要がある」と周囲への協力を呼びかけた。


 また室崎氏は「今回のような大規模災害は、人間の力で無理に抑え込むことはできない」と、大災害に対する心得を提言した。そのため、自然と人間の関係を正しく理解し、1人でも多くの命を救うという「減災」の考え方が大切であると話す。


 そうした「減災」を意識した復興を進めていくためには「段階を踏むことが非常に大切」と説明。まずは自治体、コミュニティ、さらには地域経済の再建を最優先にし、それに集中することを奨励した。そのうえで、20年後に「減災を意識した街」がどのようになっているかを常に視野にいれ、そこに行きつくまでのプロセスを想定しながら、復興していくことを重要視した。


避難所の実情


 一方、“被災地からの声”として福島大学名誉教授の鈴木浩氏が講演した。同氏は避難所での被災者の生活に言及。「避難所の被災者同士は、心に抱えた悲劇について話すことがない。外部から来たボランティアが話を聞くことで、初めて外に吐き出すことができる」と説明。ボランティアの人出が現地では足りていないため、より多く来訪を期待した。


 同氏は専門の建築学の視点から、それまで自治体が取り決めていたプレハブ様式の仮設住宅利用から、被災者にとってより利便性の高い木造応急仮設住宅への切り替えを働きかけるなど、精力的に「復興」に携わっている。


 鈴木氏はまずは「3年間でできること」を自治体や住民が腰を据えて取り組んでいくことで、地道に一歩ずつ復興させていく姿勢が大事だと説明。「被災地・被災者に寄り添って生きる」ことを改めて意識していく大切さを説いた。

関西学院大学教授・室崎益輝氏   福島大学名誉教授・鈴木浩氏
関西学院大学教授・室崎益輝氏   福島大学名誉教授・鈴木浩氏

被災地以外が備えること


 地震は決して東北地方だけのものではない。近年は首都圏での大地震が予想されるなど、緊張感も高まっており、大都市圏で発生した場合を想定した、震災への備えが必要不可欠だ。明治大学政治経済学部の中林一樹教授は、東京都が主導で実施した「都市復興図上訓練」や、職員の「震災復興マニュアル」の実践的訓練を行なわれていることを紹介。さらに東京都の区市で復興マニュアル・復興条例づくりが活発なことを例に挙げて、全国の都道府県・市町村でも同様に行うことを奨励している。


 国土交通省大臣官房審議官の川上征雄氏も「東京都が被災した場合、国土全体に大きな影響の恐れがあるのは明白」と首都圏での対策の必要性について言及。「東京圏でも大震災が起これば、ライフラインの途絶・停止、大量の帰宅困難者発生する」として、東京都と同時に被災しにくい地域で、機能の分散や様々な資産のバックアップができる拠点の検討が急務だと指摘している。


 バックアップに使う場所の条件として川上氏は「東京圏とのアクセスが容易かつ確実であり、国の行政中枢機能の業務を非常事態下においても遂行できる能力がある代替要員が確保できることなどが求められる」としている。


 復興を俯瞰して考える――その名の通り東日本大震災をテーマに多角的に見て考察を行うシンポジウムであった。こうした講演で情報発信や建設的な議論を行うことが、被災地の復興につながっていくと言えるのではないだろうか。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:ICUS第22回オープンレクチャー「復興を俯瞰して考える」
主催   
:東京大学生産技術研究所都市基盤安全工学国際研究センター(ICUS)
開催日  
:2012年4月16日
開催場所 
:東京大学駒場リサーチキャンパス(東京都目黒区)

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