セミナーレポート

自治体で活用されるオープンソース

オープンソースカンファレンス2012を取材

2012/4/5

 オープンソースをユーザに向けて紹介・発信していく“文化祭”ともいうべき、「オープンソースカンファレンス(OSC)2012」が2012年3月16日~17日に明星大学日野キャンパスにて開催された。オープンソースとはソフトウェアのソースを公開して、誰でも改良して使いやすくすることができるソフトウェアである。また、それを活用した自治体の事例紹介も行われた。

様々なソフトウェア企業が出展した会場の様子
様々なソフトウェア企業が出展した会場の
様子

震災時の多賀城市の対応


 情報処理研究機構(IPA)国際標準推進センターの岡田良太郎氏は、自治体に活用されるオープンソースについて言及。「自治体の現場でも最適なITの基盤を整備するために大手SIerの提案書を丸のみするのではなく『自分たちで考えて選ぶ』という方向性が必要だ」と説明した。


 さらに同氏は震災時の宮城県多賀城市の市役所の事例を挙げた。災害現場では早急に被災者相談窓口を立ち上げ、状況をヒアリングしなければならない。そこで同氏は多賀城市役所が、オープンソースのCRM(顧客管理システム)のなかでも高い業務管理機能をもち、市場において圧倒的なシェアを誇る「SugarCRM」を用いて対応したことを紹介した。同市では被災した直後、住民記録となるデータベースを流しこんで基盤をつくり、迅速に対応を行っている。岡田氏は多賀城市役所の職員が使ううちに必要のない機能を減らし、カスタマイズしていったことに触れ、評価した。


会津若松市の取り組み


 福島県会津若松市役所市民課に勤める目黒純氏は同市役所の事例を解説。会津若松市では「OpenOffice.org」と呼ばれる、オープンソースで開発された統合オフィスソフトを導入している。同市ではこのOpenOffice.orgを840台に導入することで、情報資産の運用が効率化でき、およそ1500万円分の費用削減につながったとしている。


 また、公文書の保存の最適化も市役所が取り組まなければならない事柄だ。誰もが手軽に閲覧、編集できることを意識する必要がある。そこで同市では国際標準規格をもち、簡易的なテキストやファイルを使うなど扱いやすく、汎用性の高いODF(オープンドキュメント形式)を導入し、公文書の文書管理に活用している。使っていく過程で外字(常用漢字表にない漢字)フォントが扱えないといった問題もあったが、独自でフォントを作成するなど乗り越えられた。今では職員のオフィスの熟練度も上がるなど、職員が使いこなしていることを実感しているという。


 目黒氏はさらに、細かい操作ができ、PDFの編集や、外字にも対応したオープンソースのオフィスソフトであるLibreOffice(リブレオフィス)を2012年1月に市役所内の全PCに導入したことを発表。より積極的に市役所で活用していくことを明言した。

IPA国際標準推進センター・岡田良太郎氏   横浜市消防局企画課・藤田豊氏
IPA国際標準推進センター・岡田良太郎氏   横浜市消防局企画課・藤田豊氏

横浜市消防局の事例


 もちろん、被災地以外の自治体でもオープンソースは積極的に使われている。横浜市消防局企画課の藤田豊氏は、Moodleをつかったe-learningシステムを紹介。Moodleとは学校の授業などに使うe-learning 用のWEBページをつくるためのソフトだ。


 藤田氏は、「業務システム」には販売・在庫管理の事務処理に必要不可欠という要素が、「社内SNS」には情報が集まるといった要素があるのに対し、e-learningシステムは、とかく“やらされ感”がつきまとうという問題点があると指摘。そこで藤田氏は業務システムや社内SNSの長所を組み合わせることでe-learningシステムを「使いやすいソフトウェア」にしたことを紹介した。例えば消防局ならではの訓練に関する問題を職員同士でつくらせるなど自主性を重んじるようにし、結果もレーダーチャートで示すなどわかりやすくしてそれについて議論できるようにした。それによってメンバーのモチベーションの向上にも繋がったという。また、自治体を揶揄するときに使われる「縦割り」の構造を打破するためにもMoodleを活用。「広報の森(広報の仕事を理解するための検定)」「情報セキュリティ検定」など、別の課の仕事内容も理解できるようにe-learningを行っているという。


 藤田氏は“使われるソフトウェア”にするために「業務システムと分離させない、細かなルールを制定しない。組織構造を踏襲しないようにすることが必須だ」と強調した。


 オープンソースを使った様々なソリューションが自治体でここまで使用されていることはあまりよく知られていないのではないだろうか。自治体のオープンソースを用いた活用事例を一般に周知していくためにも、継続的な開催を期待したい。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:オープンソースカンファレンス2012
主催   
:オープンソースカンファレンス実行委員会
開催日  
:2012年3月16日~17日
開催場所 
:明星大学日野キャンパス(東京都日野市)

【関連カテゴリ】

IT政策その他