セミナーレポート

復興に向けた再生可能エネルギーの活用

第1回スマートイノベーション戦略会議を取材

2012/3/26

 震災から1年。津波被害による計画停電や相次ぐ節電により、新しいエネルギー源として太陽光発電や風力、地熱発電など、再生可能エネルギーの可能性が度々検討されている。そうした機運が高まる中、2012年3月7日、8日に「第1回スマートイノベーション戦略会議」が開催された。政府の関係者や各県の知事などが集まり、方針や具体的な施策について、「東日本大震災からの復興」という視点も加味されながら講演が行われた。

政府の関係者や県知事などが講演した
政府の関係者や県知事などが講演した

再生可能エネルギーを活用した政府の取り組み


 経済産業省資源エネルギー・新エネルギー部長の新原浩朗氏は日本の再生可能エネルギーの状況について説明した。日本は、エネルギー源のうち、再生可能エネルギーが占める割合は全体の9.7%に留まっており、ドイツの半分程度しか普及してない。そのため日本では「まだこの割合を上げられる」というのが一般的な見方だ。


 2012年7月1日には、再生可能エネルギー特別措置法の固定価格買い取り制度が施行される。これは太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーを電気事業者に一定の料金で買い取ることを義務付け、消費者もそれを国や自治体に対して納める「賦課金」という形で負担していくというもの。新原氏は「この法律が施行されれば再生可能エネルギーの割合をかなり上げられるのでは」と話している。


 次に、新原氏は再生可能エネルギーの各個の課題について言及した。太陽光発電については、ドイツやスペインでは大規模な太陽光発電のセンターがあり、天候で左右される太陽光発電の稼働率を水力、火力で補うことができている現状を説明。一方で、日本はそこまでの体制に至っていないことについて触れて「太陽光発電の他の電力で補っていく体制はもちろん、太陽光発電自体の蓄電池の性能をどのように高めていくかが日本での太陽光発電普及のカギを握る」と指摘した。


 続いて、同氏は風力発電についても解説を行った。欧州ではスペイン、ドイツを中心に風力発電の割合が多い。また米国でもテキサス州の風力発電所は標準的なもので60万~80万KW(キロワット)の発電電力量をもつ。対して、日本では最大で7万KWクラスのものしか存在していない。そのため今後は規模の拡大が目標となるほか、発電した電気を運ぶための送電線を充実させていく必要がある。「まずは風力発電の重点地区を定め、国が例外的に支援をしていくことが必要であり、そのプログラムを今年の夏までにまとめていく」と新原氏は話した。


 最後に、地熱について触れた。地熱は太陽光、風力と比べて天候に左右されないため、継続してエネルギーを得られるという意味では再生可能エネルギーの中でも唯一安定したエネルギーだ。日本は米国、インドネシアに次いで、世界第3位の資源保有国となっている。しかし79%が国定自然公園の中にある上に、「垂直に掘らなければならない」という法的規制も存在するなど、他国の後塵を拝している。これについては「今後はいかに規制を緩和するかが課題」と語っている。

経済産業省・新原浩朗氏   宮城県知事・村井嘉浩氏
経済産業省・新原浩朗氏   宮城県知事・村井嘉浩氏

復興を見据えた宮城県の取り組み


 このように再生可能エネルギーを利用し“スマートコミュニティ”を形成することで、エネルギー効率や人々の生活基盤を改善していく“スマートイノベーション”。東北地方でももちろん、この再生可能エネルギー震災から「復興」に活かしていく。今回のシンポジウムでは実際に宮城県知事の村井嘉浩氏が宮城県の復興計画について説明した。


 一般的に公共政策を行う場合、国が計画をつくり、それを実行するのが通常のパターンだが、復興計画に関しては、宮城県がまず様々な計画をつくり、それを国に提案していく形をとっている。そこで宮城県が打ち出しているのが、「災害に強い安心してくらせる街づくり」。そのうえであくまで復旧に留まらない「抜本的な再構築」をうたい、“県主導”で復興を進めている段階だ。


 村井氏はその第一歩として「再生可能エネルギーを活用した『スマートシティ』を形成することを視野に入れて準備していく」と公言。沿岸部で被害を受けた市町村はほぼすべて、県営施設を中心に、太陽光の発電設備を導入していく。また、復興のために優遇税制の特区として国から認められていることを武器に、関連産業の集積を目指す構えだ。


他県の取り組み


 もちろん他県でも、再生可能エネルギー活用の施策が着々と進んでいる。新潟県知事の泉田裕彦氏は、100度以下の熱源から、アンモニアなど低沸点の媒体を加熱させてその蒸気でタービンを回し発電する「バイナリー地熱発電」に同県が全国ではじめて着手したこと紹介。普及のために積極的に動いていることを明らかにした。


 また同県発祥の企業・昭和シェル石油と協業して、大規模な太陽光発電事業を新潟県でスタートしている。年間100万KW/hを目標にしていたが、目標よりも40日前倒しで達成することができた。泉田氏は「こうした事例を一つでも多くつくることで再生可能エネルギーの有効活用に取り組む」を話している。


 再生可能エネルギーをより効率的に活用するためには、技術力の向上が必要不可欠だ。21世紀にふさわしい高度な循環型社会を形成するためにも、再生可能エネルギーに関する技術革新が日進月歩で飛躍していくことを切に願う。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:第1回スマートイノベーション戦略会議
主催   
:日本経済新聞社
開催日  
:2012年3月7日~8日
開催場所 
:東京ビッグサイト(東京都江東区)

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