セミナーレポート

電子証明の活用事例と国際標準化への動き

JIPDEC主催の電子情報利活用セミナーを取材

2012/2/16

 JIPDEC(一般社団法人日本情報経済社会推進協会)は2012年2月2日、第17回電子情報利活用セミナーを開催した。電子証明についての利活用や、国際標準化への動きについて講演を行った。

電子証明書の利活用について説明が行われた
電子証明書の利活用について説明が行われた

京都大学の活用事例


 京都大学情報環境機構IT企画室の永井靖浩氏は、同大学における電子証明の活用事例を紹介した。同大学では煩雑化した情報を一元的に管理するためにICカード「キャンパスカード」を導入した。キャンパスカードの導入により、例えば教職員と学生のID認証判別が容易になる。


 さらに個別認証が容易になったところで要求されるセキュリティレベルごとに様々な認証方式を採用した。教職員業務のうち、財務会計や人事・給与のように高いセキュリティレベルを要求されるものはキャンパスカードと電子証明書による認証で厳重に。学生の履修登録はIDとパスワードのみなど、セキュリティを保ちつつ利便性を損ねないような工夫が凝らされている。


 永井氏はキャンパスカードの導入に先がけて、2009年11月から2010年2月の期間に、1000人規模で教職員向けの説明会を繰り返し行って利用者の意識向上に努めてきた。「こうした念入りな下準備が、大規模な導入には必要となってくる」と永井氏は強調した。


 同大学では教職員の重要会議を中心にiPadを用いるなどペーパーレス化が進んでいる。そのために、電子証明書を活用するニーズが増えている。永井氏は「今後は重要文書に対して誰が作成し、作成された電子文書にして改ざんが行われていないかといった『完全性』を確認するために、『電子署名』を簡単に利用できるソリューションが望まれる」と説明している。


JCAN証明書の展開


 JIPDEC電子情報利活用推進部の青木尚氏は、JIPDECが取り組む電子証明書「JCAN証明書」を紹介した。電子証明書は、標準化・共通化がまだ不十分であるため、ビジネスにおいて、社内・社外で共通して使えるようなものはまだ存在しない。こうした背景から、JIPDECは認証局が発行する電子証明書に関するプロファイルや運用規定を標準化することで、利用環境の改善と電子証明書のコスト削減が進むと想定。その実現のために社員証や会員証などと同様に扱うことができ、不特定多数とのビジネスシーンで使うことができるJCAN仕様パブリック証明書(JCAN証明書)を開発した。


 JCAN証明書とは、個人や組織の実在をインターネット上で証明するもので、「フィッシングメール」「電子証拠の改ざん」などの強力な対策になるパブリック証明書と呼ばれる証明書である。青木氏によると、既に金融機関が「フィッシング対策」でパブリック証明書を利用しており、今後自治体やビジネスでの利用が見込まれるとしている。


 このJCAN証明書では、人事部など利用者を代表する組織(Local Registration Authority)が既存の人事データーベースに基づいて証明書の発行を行うことで、信頼性を保ちながら運用面・コスト面で扱いやすさ買いやすいさの実現を目指している。


 すでに国内では京都大学やセイコープレシジョンなどでこのJCAN証明書を使ったアプリケーションの検討を始めている。

京都大学情報環境機構IT企画室・永井靖治氏   ルネサスエレクトロニクス品質保証部・伊賀洋一氏
京都大学情報環境機構IT企画室・永井靖治氏   ルネサスエレクトロニクス品質保証部・伊賀洋一氏

国際標準化に向けた動き


 半導体を生産しているルネサスエレクトロニクス品質保証部の伊賀洋一氏は、自身が委員長を務める模倣品対策における国際標準化に向けた団体・国内審議委員会(ISOTC247)の立場から講演した。


 半導体業界では、製品IDを使ってトレーサビリティを行い、部品の模倣品対策を行っているが、最近、製品IDに加え物流上の会社の認証を電子証明書で行うことで「トレーサビリティ」の向上を図るガイドラインのISO化をJIPDECの協力を得ながら取り組んでいた。


 ところが、1月の一般教書演説で米国が国際取引において今後、会社の認証として電子証明書を用いることを義務化していくことを明言。「このルールを守らなければ、米国が海外の企業から製品を購入しない。模倣品被害があったらその企業の負担になる」といった趣旨の法律施行について発表し、ISOの取組をガイドラインではなく、強制認証で行う方向にカジを切ろうとしていることがわかってきた。


 こうした状況に至り、ISO活動と連動した産官学の国内枠組み作りの重要性が一層増してきた。その中で、電子証明書に関わるJIPDECの役割も一層増している。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:第17回電子情報利活用セミナー
 日本の電子証明書を新たなステージに進めるJCANプロジェクト
主催   
:JIPDEC(日本情報経済社会推進協会)
開催日  
:2012年2月2日
開催場所 
:六本木ファーストビル(東京都港区)

【関連カテゴリ】

情報セキュリティIT政策