セミナーレポート

科学技術展にJAXA・川口淳一郎氏が講演

KEIO TECHNO MALLを取材

2011/12/26

 慶応大学は2011年12月9日、KEIO TECHNO MALL2011 (慶應科学技術展)を開催し、同大学理工学部の科学技術研究について様々な展示が行った。また、セミナー会場では理工学部の研究者らが行った様々な研究内容を発表する講演や、JAXA(宇宙科学研究所)シニアフェローの川口淳一郎氏による基調講演が行われた。

会場では様々な研究内容の展示が行われた
会場では様々な研究内容の展示が行われた

電力需要予測に関する研究


 理工学部システムデザイン工学科の滑川徹准教授は自身が行っている電力需要予測について講演した。


 滑川氏は電力供給について、電力需要予測とリアルタイムプライシングの研究成果を解説。例えば、短期的な電力需要予測では、火力、水力のプラントなど、各発電所の翌日の運転停止計画など前日までに把握できる内容から予測する「翌日電力予測」の精度を上げることで、より効率的な発電計画に結びつけることができる。結果として、ピーク需要を正確に予想することで無駄な発電を避け、省燃料化・低CO2化につなげることができる。滑川氏は正確な需要予測を行う上で、「需要のデータを統計的に解析するために、過去のデータをいかに計測できるかが鍵になる」と説明した。


テレリアリティの研究


 ほかにも様々な技術の研究最前線における成果発表がされた。「テレリアリティ」という、実際の触覚・感触などを電気信号などに変え空間を超えて伝達する新技術がある。この技術が実現すれば、熟練工の技など長時間の修業を必要とする名人のスキルが保存されたり、遠隔地からあたかも自分がその場にいるような感覚を得ることが可能になったりするという。


 「テレリアリティ」を研究している理工学部准教授の桂誠一郎氏は「人間がものを触るときにおきる、作用・反作用を再現することがこれまで難しい技術だった。今は触感の定量的で直観的な認識ができるようになった」と語る。


 この技術を発展・実現させることで、将来的には遠隔地での外科手術などに応用されることが期待される。

慶応大理工学部准教授・桂誠一郎氏   JAXAシニアフェロー・川口淳一郎氏
慶応大理工学部准教授・桂誠一郎氏   JAXAシニアフェロー・川口淳一郎氏

はやぶさを打ち上げた意義


 JAXAの川口淳一郎氏が行った基調講演では「はやぶさ計画」に取り組んだ経緯について説明した。「はやぶさ計画」は、アメリカや旧ソ連とは違うオリジナリティを発揮するため、世界で誰も考えていなかった小惑星ランデブー計画を立案したことがきっかけだったという。しかし1990年になり、NASAなどと共同で勉強会を始めると、「小惑星ランデブー計画」のアイデアは盗られてしまう。


 NASAは技術力も高く、日本よりも後発であっても、先に計画を実行できるため「小惑星ランデブー計画」を日本が予定通り実行しても二番煎じになる可能性が高かった。そこで日本側はNASAも手を引っ込めてしまうくらい難しい計画へと構想をシフトする。それが小惑星からのサンプルリターン計画(=はやぶさ計画)だった。予想通り、「はやぶさ計画」に着手してもNASAは、追従してこない。川口氏は「NASAはリスク管理をしており、堅実な成果を出そうとしていた。我々の取り組みについて『やらせておけばいい、どうせ失敗するにきまっている』と思ったはず」と当時を振り返る。


 しかしNASAの予想を裏切り、「はやぶさ計画」は成功裏に終わった。アメリカのメディアが「NASAはどうして臆病になってしまったのか」「アメリカのスピリットはどこに行ってしまった」と記事が書きたてたほどだ。川口氏は「『はやぶさ計画』がインパクトを与えたことの証拠」と胸を張った。


 また、はやぶさが小惑星イトカワを探査した意義として、単にNASAなどに先んじるということだけではなく、「地球や太陽系の起源を知ることにつながる」と川口氏は続ける。「例えば地震がどうやっておこるか調べるためには、その星を形成する材料がどうなっているか調べなければいけない」ため、メカニズムを理解するための第一歩として、小惑星から資料を持ち帰って調べることは意義が大きいとした。


 大学の研究の展示については様々なテーマを切り口にした研究が多数展示されており、非常に見応えがあった。また、川口氏の講演については、はやぶさの成果にとどまらず、「人間の可能性」について考えるためのヒントが随所にみられ、非常に興味深い内容だった。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:KEIO TECHNO MALL2011 (慶應科学技術展)
主催   
:慶應義塾先端科学技術研究センター(KLL)
 (慶応大学理工学部・大学院理工学研究科)
開催日  
:2011年12月9日
開催場所 
:東京国際フォーラム (東京都千代田区)

【関連カテゴリ】

IT政策その他