セミナーレポート

IPv6事業者の対応状況は?

事業者の対応状況について専門家や識者が集い講演

2011/12/15

 2011年11月30日から12月2日にかけて、東京秋葉原にある富士ソフトアキバプラザで社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)主催による「Internet Week 2011」が開催された。同シンポジウムは、ITに関する専門的なセミナーを短期集中して開催する大会で、実際にネットワークの構築を行っているベンダーや、セキュリティを扱っている研究機関などの識者が多く登壇し、かなり専門性の高い構成となっている。

 JPNICは、国内におけるIPアドレスの割り当てなどを行っている団体。そのため、これまでのIPアドレス「IPv4」が今年4月枯渇し、残るは事業者在庫のみという現状を反映し、次世代アドレス「IPv6」に関するセミナーが多く開催された。

多数の専門性が高い講演に、どのセミナーも満席状態だった
多数の専門性が高い講演に、どのセミナーも満席状態だった

スマホも進むIPv6移行だが…


 2011年4月にレジストリにおけるIPv4のアドレスは枯渇した。現在は、各事業者が持っている在庫で対応をしている。このまま利用を続けると2012年頃にはこの事業者在庫も完全に枯渇し、いよいよIPv4アドレスが配布できなくなる。


 この事態に事業者側は次世代IPアドレス「IPv6」への移行・対応を進めている。「Internet Week 2011」内で開催された講演「ここまで来ているIPv6インターネット」では、20以上の事業者が登壇し、現在の対応状況について解説を行った。ISP事業者の説明の大半は「ユーザには移行したことを意識させないように、IPv4を可能な限り使えるようにしながら、手間や追加料金をかけないようなIPv6への移行を心掛けている」という趣旨の話だった。


 例えばNTTドコモは、近年第3.9世代(第4世代とも言われる)の移動通信規格「LTE」を使ったサービス「Xi」(クロッシィ)を展開している中で、IPv6を提供。スマートフォンの動向に合わせてさらなる対応も検討しており、次世代機器への買い替えに合わせた自然なIPv6への移行を進めている。


 講演のコーディネーターを務めたJPNIC理事の前村昌紀氏は「IPv6への対応についてユーザ側は、当たり前のものとして受け止めている」と話す。業界外のユーザからすると「使うために費用を払っているわけだから、継続して使えるように対応するのは当たり前」ということだ。


 しかし実際にIPv6へ移行するためには、アプリケーションレベルの書き直しから施設の投資まで幅広い対応が必要で、どの事業者でも簡単に進められるわけではない。「技術的には高度なことなのに地味ゆえに普通・当たり前に見えてしまうことが、事業者にとって悩ましいことになっている」(前村氏)と現状を説明した。

「ここまで来ているIPv6インターネット」でコーディネーターを務めた前村氏   「IPv6の勘どころ」でIPv6のセキュリティについて講演する北口氏
「ここまで来ているIPv6インターネット」で
コーディネーターを務めた前村氏
  「IPv6の勘どころ」でIPv6のセキュリティについて講演する北口氏

IPv4とIPv6の併用とセキュリティ


 また「IPv6の勘どころ」と題された講演では、IPv6導入にあたり、IPv4とは異なるセキュリティリスクについての解説があった。IPv6への移行が進んでも、いきなりIPv4のサービスがなくなるというわけではなく、むしろ当面は双方の並行した利用が中心になっていく。そのため現状は「IPv4が持っていたこれまでの問題点」「IPv6の導入による新たな問題点」「2つを併用する技術(デュアルスタック)における問題点」をそれぞれ検証・解決していく必要がある。


 金沢大学総合メディア基盤センターの北口善明氏は、これらの問題における具体例として「デュアルスタック時におけるIPv4とIPv6を変換する際の挙動の問題」や「IPv6普及によって大量のアドレスが発生することによるDoS攻撃の激化および、攻撃者追跡の複雑化」を挙げ、課題点を整理しながらケースごとの対応策を説明した。


 またネットワークではIPv4のみ利用している状況の企業・個人であっても、OSや機器などがIPv6対応になっており「ただ機能を使っていないだけ」という場合もある。この場合もIPv6へのセキュリティ対策は必要になってくるため、北口氏は「現在は、IPv6利用の有無に関わらず対策が必要だ」と訴えた。


 ほかにも「IPv6がそもそもどういうものか? 枯渇問題とは何か?」という基礎的な解説をする講演から、IPv4アドレス枯渇対策がアプリケーション開発に及ぼす影響を考慮しながらアプリケーション開発におけるIPv4とIPv6の違いを説明する実践的な講演まで、幅広い角度から講演が行われた。


 IPv6への移行は、インターネット社会を継続していく上では避けて通れない。しかし世間的には「地味」であり、その移行における課題点は意識されていないのが現状だ。他人事にせず、課題点を洗い出しておき、余裕を持った移行を進めていきたい。

(井上宇紀)

【セミナーデータ】

イベント名
:Internet Week 2011
主催   
:社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)
開催日  
:2011年11月30日~12月2日
開催場所 
:富士ソフトアキバプラザ(東京都千代田区)

【関連カテゴリ】

IT政策